第52話 建国Ⅳ
私はゆっくりと
それは、
「ぐぬぬぬ――。硬質化を使ってもこんなにダメージを負うとは――」
「私としてはもうちょっとダメージを負わせる予定だったのにな」
「しかしまだ終わってはいない! 拙者のユニークスキルの力を見せる時だ!」
刀を鞘に納めて後ろを振り返ると、
「ぐあああああああ……な、何故拙者の硬質化が無効化されているのだっ!」
「私のスキル、絶対切断が発動しているだよ。カルベリアツリーのダンジョンのナーガ・ラージャはそれで真っ二つになっていたから、
「おのれ。何て強さの小娘だ」
「そりゃランベリオンさんより強いからね」
「――?」
謎の間があった。この大きな狼、絶対自分が結構深い傷を負っているの忘れているよね。あれ? 私見落としていた? 痛覚無効とかあった? いや――無い。痛みより驚きの方が勝っているのか。
「ら――ランベリオン・カーネルの事か小娘よ」
「そうだけど。あとそれ痛くないの? もう襲ってこないって誓ってくれるなら治してあげるよ?」
「……分かった。武士として負けを認めるからこの傷をどうにかしてくれ。やせ我慢も限界だ――」
そう言うと、
「この状態のほうが
「ええ」
私が斬っておいて言うのもなんだけど、凄い火傷と切り傷だった。あまりにもズダボロで血まみれだから、前の世界だと何十回も刺された被害者が、何故かまだ生きているっていうような出血量。
「よし、これで終わり! あと、ベルゾーグさんの仲間を傷つけてごめん」
「まあ、弱肉強食だからな。大人しく認めるとしよう。拙者の仲間をどうする気だったのだ」
「た――食べようと――」
「やっぱり再戦しようか」
うわあ。めちゃくちゃ怒ってる。いやそりゃそうですよね――。
「ぬ?」
鬼の形相をしていたベルゾーグさんが首を後ろに向けて、空を見ていた。ベルゾーグさんがブライドして見えなかったから、顔を少しずらして見てみると、ランベリオンさんとそれに乗っているナリユキさんがこっちに向かって手を振っていた。
「ミクちゃん! 大丈夫か!」
ナリユキさんが私に向かってそう叫んでくれている。
「大丈夫ですよ!」
「ランベリオン? それに上に乗っている人間は一体――ん?
ほう。
ランベリオンさんが着陸した。先にナリユキさんが降りたあとに凄く綺麗な人が降りてきた。金髪の長い髪に白くてすべすべな肌。胸元が大きく開いた純白のパーティードレスのような服に身を包んだ耳の長い女性。
まさしく
「あら? ベルゾーグさんじゃありませんか。そこのお嬢さんとお取込み中でしたか?」
「森の管理者がランベリオンと人間と一緒とは珍しい。どういうことだ?」
「先に質問したのは私です。来る途中に天使の梯子が出来たと思えば、物凄い光と共に、地鳴りが凄かったですし。ベルゾーグさんの新スキルですか?」
「違う。拙者のではない。この小娘が拙者に放ったのだ」
「まあ!」
と、言って物凄く明るい顔をした
女性の人のおっぱいは何故こんなにいい匂いがするんだろう。よし。今度ナリユキさんに同じことをして私からいい匂いするかの実験をしよう。そうこれはあくまで実験。決して私が貞操観念がバグっていて夜を誘っているとかそういう訳でない。
「物凄く強い方なんですね!」
そう言われて私はおっぱいから解放された。
「え――あ、はい」
なんかコミュ症みたいになっちゃったんですけど! 私の馬鹿!
「で、ベルゾーグさんがやられた訳ですね? 珍しいこともあるものですね」
「まあミク殿は強いからな。しかし、やっと出せたようだな。新スキルを」
「ええ、ばっちりですよ! ベルゾーグさんのスキルがめちゃちゃ厄介なので先手を打ちました」
「流石だな! ガハハハハハ!」
「うるせえ黙ってろ」
そう言ってナリユキさんがランベリオンさんの頭をぶつと、頭にたんこぶを作りながら涙目になっていた。いつも通りと言えばいつも通りだけど――。
「ふ――不憫だ」
ベルゾーグさんは目を丸くしてそう呟いていた。うん。気持ちめちゃくちゃ分かる。
「とりあえず、能力が使えそうな狼ちゃんもついてきな」
「狼ちゃん? 拙者は人間に恐れられるのが当たり前だったから、そんな呼ばれ方新鮮だな」
ナリユキさんがそう言うと、ベルゾーグさんは手を顎につけて笑みを浮かべていた。少々のいじりは利くっぽい。また、強力な仲間が増える予感?
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