第51話 建国Ⅲ

 ここにいる魔物達はノア君が従えていたような魔物ばかりだった。だからあまり手ごたえがない。これほど簡単に倒せるとは思っていなかった。


「やっぱり戦闘経験があまり無いとキツイですね」


「でもこの武器凄いですよ! 近、中距離負ける気がしません」


 少し手こずってはいるものの武器の感覚に慣れてきていた。ただ、少し気になるのは電黒狼ボルト・ウルフが多くなってきたことね。カルベリアツリーのダンジョンの経験上このパターンは非常にマズイ。


 突如、地鳴りが辺りに響き渡った。ズン――。ズン――。と重たい音が女性達を騒がせている。女性達っていうのもなんか嫌だよね。今思うと――。従者サーヴァント達にしよう! これはナリユキさんに後で共有しておかなきゃ。


 で、その従者サーヴァント達はただならぬ事態に警戒をしていた。剣を構えている戦闘警戒。しかし森の中から感じ取れる巨大なパワーからすると、従者サーヴァント達が戦闘態勢に入るのは間違えている。


「皆! ここから逃げて!」


「ただならぬパワーを森の奥から感じます。ミク様も一緒に!」


「私は大丈夫ですよ。少しくらいなら時間がありますので、食料を持って行って、ベリトさんたちのところに戻って下さい」


「は――はい! 皆者撤退だ!」


 一人の従者サーヴァントがそう言うと、本当に、電黒狼ボルト・ウルフや、怪鳥、小型鳥、猪戦士オーク牛獣人ミノタウロスのような魔物などを持って走って行った。流石私の強化バフ。自分の体重の2倍~3倍くらいありそうな魔物でも軽々と持ち上げる。いや――。まあ中には引きずり回している人もいるんだけど――。


「誰だ。拙者の同胞を殺したのは」


 森の奥から出てきたのは、何とも巨大な赤い目をした黒い狼型の魔物だった。体長は頭から尻尾の先まで20mくらいはありそう。頭には青い雷を帯びた強靭な角を生やしている。――何かゲームで見たことがあるようなデザインだけど、まあ大体そんな感じだよね。どれどれ?




■名前:ベルゾーグ

■性別:♂

■種族:電黒狼ボルト・ウルフ族 雷黒狼サンダー・ウルフ種 雷黒狼王ベオウルフ

■称号:雷黒狼サンダー・ウルフの王

■勲章:なし

■MP:19,000,000

■強さ又は危険度:S


■パッシブスキル

状態異常無効Ⅴ:状態異常に関するあらゆる現象が無効となる。

雷耐性Ⅴ:雷属性の攻撃を95%カットする。

鑑定士Ⅴ:対象者のプロフィールやスキルを全て視ることができる。

人型化ヒューマノイド:人型化になることができる。

物理攻撃無効Ⅴ:物理攻撃と認識できる攻撃全てを無効にして、ダメージを0として扱う。

硬質化Ⅴ:自身の身体を硬質化させることができる。

麻痺牙Ⅴ:牙に触れた相手は数十秒の麻痺状態になる。

耳栓:人体に及ぼす大きな音が聞こえた際、90%カットする。

異常嗅覚Ⅴ:人族の10,000倍鼻が利く。

念話Ⅴ:対象者を思い浮かべることで、思い浮かべた対象者と頭の中で話し合うことができる。


■アクティブスキル:雷光波ライジング・ウェーブ:雷を波状に放出することができる。

雷雨サンダー・ストーム:数百の雷を辺りに落とす。

雷痺の尾ライジング・テール:雷を帯びた尻尾で攻撃を行う。また、直撃した者は麻痺状態になる。

充雷電チャージ:電気、雷を自身のエネルギーに変換することができる。

放雷電ディス・チャージ:電気、雷を周囲に放出することができる。また、直撃した者は麻痺状態になる。

雷壁サンダー・ウォール:雷の壁を張り、攻撃系のアクティブスキルを無効化する。但し、アクティブスキルの習得難易度によって無効化できないアクティブスキルがある。

疾風迅雷:雷の如く速さで60秒間辺りを駆けまわる。使った後は数秒間雷属性のスキルが発動できない。

雷光鞭らいこうべん:光り輝く無数の雷を、鞭状に放出する。


■ユニークスキル:電磁パルスEMP:24時間に1度だけ、半径3km以内にいる全ての電気、遠隔操作武器、生物のスキルを無効化する。持続時間は60秒。尚、スキルの発動者は対象外とする。


■アルティメットスキル:雷の処刑場サンダー・カルヴァリー:雷を一人の対象者に落とす。尚、防衛スキルとスキルを無効化にするスキルを無効化にし、対象者に攻撃を行うことができる。




 ――。めちゃくちゃ強くない? これカルベリアツリーのダンジョンの550層くらいの強さはあるよ! でも、ランベリオンさんは自分でマーズベル森林の中で最強クラスだと言っていたから、多分あれだね。死の灰デス・アッシュで倒せるって事だよね。ランベリオンさんスキルは本当に少ないけど、一つの一つの攻撃がめちゃくちゃ強いから。


「お主か?」


「うん。まあ当たっている」


「そうか。隠さずに話すことは良い事だが同胞の恨み晴らさせてもらうぞ」


 うええええええ。この狼さんいきなり突進してきたんだけど! 私は慌てて天使の翼エンジェル・ウイングを展開して空へと駆け上がった。


 勢い余り過ぎたのか雷黒狼王ベオウルフは少し小さく感じる。多分上空50mくらいまできていそうだ。こっちに気付き顔を上げて睨んできた。飛行系のスキルは無かったから圧倒的に有利。けれども、電磁パルスEMPを撃たれたらまずい。私そのまま落下死しちゃうから先手必勝だね。条件がついているから序盤で撃ってはこないはず。それに私には究極の阻害者アルティメット・ジャマーがついているから、スキルはバレていない。


 私は天に手を掲げるとお日様が顔を覗かせてきた。雲の動きが心なしか早くなった。


 この辺り一帯だけ、少し薄暗かった空も晴れていった。そして、お日様が顔を完璧に出したようだ。森全体に強い光を照らしていて、私の背中も強烈な温もりを感じている。後ろを振り返ると眩しいだろう。


 雷黒狼王ベオウルフの視点が容易に想像できる。ここは天使の梯子のど真ん中だ。


聖なる裁きホーリー・ジャッジメント!」


 刹那、天使の梯子の範囲に、一筋の極大の光が雷黒狼王ベオウルフに直撃。実はこのスキルを使うのは初めてちょっと興奮している。ダンジョンにはお日様がいないから使えなかったんだよね。疑似のお日様では駄目だし。

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