第46話 王からの礼Ⅰ
俺達はベリトの案内でリアトさんを救出した。始めは、リアトさんはランベリオンの顔はやっぱり知っていて、ベリトと一緒にいたもんだからもう死んだと一瞬思ったらしい。
口に貼られているガムテープで、必死に訴えかけていたのが面白くて爆笑していた。
ミクちゃんがガムテープを取るときょとんとした表情を浮かべていた。
一部始終話すと落ち着きを取り戻した。どうやら長期遠征が初めての新兵らしい。不安もあっただろうに頑張ったな。本人は三日だけなので大丈夫でしたよ。ベリトの話を聞かされて、アードルハイム共和国の話を聞いて腹立っていたので、善の心を取り戻したようで良かったです。と、まあ何とも出来た人間だよ。カーネル王国の、国お抱えギルドは、自己啓発の本をたくさん読んでいるのだろうか? と疑ってしまう。
皆がアドラー心理学を知ったところで、いざ実践できるかと言われればできない人にはできない。大半の人が反発し、拒絶し、それは戯言だと抜かしやがる。
俺も異世界に来る半年くらいまではそうだったからな。気持ちは分からなくもないが。
ただ、自分が変われば、関わる人も変わるというのはどうやら本当らしい。穏やかな気持ちであろうとすると、周りも穏やかな心を持っているのだ。
ミクちゃんは女子大生ながら、動画配信者としてゲームと恋愛のコンテンツを発信していた。登録者が30万人ほどいるので、コンテンツとしても素晴らしいものだと推測できる。その裏側にはやはり価値観を深めないといけないわけだから、当然穏やかな心の持ち主になるわけだ。
またランベリオンは多くの人間と、転生者と交流を持ち、ワイバーンジョークとかいう謎のユーモアに溢れていたりする。魔物ながら知性が溢れているのは、やはり穏やかな心を持ち、多種多様な人間と魔物との交流を深めたコミュニケーション能力オバケの賜物だろう。
そういった仲間と巡り会えたのは本当に素晴らしいことだ。改めて今回の件で気付かされた。
その後、皆とクロックスタウンに戻りルイゼンバーンさん達と合流した。ベリトが深~く謝罪した後、ルイゼンバーンさんがクロックスタウンの町人と、町長に説明すると納得してくれた。
寧ろ、町人を救ってくれたので、☆の1つでも上げたいと言ってくれたので、結果的にはよかった。まあ残念ながら☆の授与は王様にしか権限ないらしいからな。
て、思っていただけど、☆の授与はどうやら王様一人での判断でもないらしい。どうやらその国の由緒ある貴族の当主も参加するらしいので、ベリトは貴族にも認められたことがある魔族ということになる。まあぶっちゃけた話、取締役会みたいな感じが開かれて決定しているという訳だ。勲章を1つでも持っていることがだれだけ凄いかもここで再認識したし、そんな善良な魔族が、ここまで闇に染まったのは、王国兵は相当屑だったんだろうな。
町を出た後、この辺りにもレンファレンス王国に繋がる場所があるとのことだった。
ロビンという情報屋を残し俺達は王国に向かった。
そして帰還後、レンファレンス王国にレイドラムの身柄を引き渡した。
「よくやってくれた。諸君らの働きぶりは誠に大義である」
「有りがたきお言葉」
俺、ランベリオン、ルイゼンバーンさんの三人は、レンファレンス王の前で跪く。レンファレンス王の大変有難いお言葉らしいが、俺はこういう堅苦しいのはどうも苦手だ。まあそんなんだから、俺はチーフ止まりだったっていうのもあるかもしれんが俺は俺だ。
「ベリトの身柄はどうするのだ? 聞いた話ではレイドラムしかいないそうではないか」
「ベリトは私の部下にします」
「理由は?」
「確かに行ってきた事は見逃せるようなことではありません。死んでいる人も数多くいるでしょう。しかし彼は元々人類に対して友好的でした。それこそこちらにいるランベリオン・カーネルのように素晴らしい人格者だったと思います。仮にランベリオン・カーネルが万が一にもベリトのように、悪に染まってしまい人間を何人か殺めていたとしましょう。しかしその闇に染まってしまった理由は、人間が他種族に対して私欲を満たすために、殺したり強姦したりをしてたのが原因だとします。そして、あるとき間違っていた。と反省します。レンファレンス王ならどのような処置をとりますか?」
レンファレンス王はその質問に一瞬眉をしかめたが、直ぐに穏やかな表情になった。恐らく眉をしかめたのは、ランベリオンがそんなことはしないという信頼からくるものだ。
「確かに牢に入れる以外の何かを考える。仮に入れたとしても期間はそれほど長くは無いだろう」
「そういうことです。ですので私は彼には殺めた人間の数以上に、人を助けてほしいのです。ベタな話ではありますが、彼の強さはそれほど価値があります」
「しかし、ベリトを配下にできるほどの実力があるとは思えないな。元々悪人だった魔族だぞ? それに魔族の性質上、人間に危害を加えるほうが多い」
「大丈夫です。今の私なら10秒あれば食い止めることができます」
「本当か? ランベリオン」
「はい。ナリユキ・タテワキ殿はカルベリアツリーのダンジョンを700層まで到達し、数多くのスキルを有しております。そして戦闘スタイルも幅が広いです。何より驚きなのが、ダンジョン700層目のボス、ノアという人造人間の子供を味方につけております」
その言葉を聞いた途端、目を見開いて驚いていた。700層までいった人類も初めてだが、味方につけるという荒業に対しての反応のようだ。
「うむ――。下がってよい。そこまで強さを主張されては反論できんからな。ナリユキ殿」
「はい」
「国を造るのだろう? 何でも手から家や施設、重火器など何でも創造して出せると聞いた。そんなユニークスキルがあるなら、近いうちに立派な小国家になり、一年も経たないうちに大国になるだろう。やるならとことんやるがよい。そして我が国と国交を結んでほしい。如何せん、珍しい資源が多いからな」
「勿論です」
すると、レンファレンス王はニッと笑った。気のせいなんかじゃない。ほんの一瞬だったが、俺には親しみやすいお爺ちゃんとして映ったのだった。
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