第43話 ベリトを追えⅡ
「どうなっている! 何も視えないぞ!」
「ナリユキ。ボクも何も視えない。それに耳がキーンって鳴ってる」
「俺もだ。ミクちゃんは大丈夫か!?」
「大丈夫です」
「なら良かった」
数十秒程で視力は回復したが、当然ベリトは目の前にはいない。先を見てみると、すでに距離は離されており、近くの街へと姿を消した。
「くそ――追うぞ」
「それにしても今の何だったのだ」
「あれは恐らくスタングレネードですね」
「スタングレネード? そんなもん投げてきたのかよ」
「ねえ。それ何?」
「突発的な目の眩み、難聴、耳鳴りを発生させる小型兵器だよ。俺とミクちゃんがいた世界では戦争とかでよく使われていた。恐らくこれもマカロフ卿の代物だろうな。絶対ロシア人だろ」
「マカロフって名前だけでロシア人の転生者って決めつけるの止めてもらっていいですか――」
と、ミクちゃんに言われたが俺の予想は多分当たっている。
「とにかくベリトが向かった町に行こう」
ランベリオンの提案に俺も含めて皆賛成した。
町の上空に来ると、陽は沈んでいるにも関わらず、街中を歩いている人はちらほらといた。そんな中、見逃せないことが多々ある。
ナイフを持ち辺り構わず振り回している人が数人点在している。
「まずいですね」
「急ごう。もしかしたらベリトが洗脳してこんな状況になっている可能性が高い。散らばって暴れている人間達を気絶させていこう」
「解りました!」
「うむ」
「OK」
俺達は街中で着地すると、ジェネラル・ワイバーンが来たものだか当然騒ぎしている。こう何度も同じリアクションを取られると慣れてくるものだ。
ランベリオンは
「うあああああ!」
うわあ。ゾンビみたいなうめき声出しているじゃん。ベリトの洗脳ってこんなんだったか? ランベリオンのときのような洗脳ではないのか。
俺は暴れている町人に掌を向けた。
「
すると、暴れている町人は勢いよく吹き飛び、壁に頭を強打して意識を失った。あれ? 俺もしかして殺しちゃった? 大丈夫だよな?
案の定脈に触れて確認してみると、脈はきちんと動いていたので気絶しているだけだった。
「これをノアにやってもダメージカットが凄まじいから吹き飛ばないもんな」
ダンジョンではこの
「ん? うわ! 吃驚した!」
考え事していたら、
「
近くに寄って来た洗脳された町人5人を吹き飛ばした。物とかに当たっている訳ではないので、直ぐに起き上がっている。いや、本当にゾンビだな。
辺りを見渡すと、俺の方に皆が近寄って来る。それも皆が武器やらナイフやらを持っているんだ。いや、冷静に考えたら可笑しくね? いや、確かに異世界は皆武器とか持っているけど、それって冒険者だけでしょ? いや、マジで何で? 日本だったら皆銃刀法違反で捕まりますけど? 警察の仕事増やさないでやって下さい。
「流石に面倒くさいな」
「ミクちゃん大丈夫?」
「大丈夫ですよ!
「これ、俺達以外全員洗脳にかかっているぞ。もっと広範囲にできるスキルなかったか?」
「そんな都合がいいスキルあるわけないじゃないですか」
「ですよね~。
「もう面倒くさいから殺そうよ。皆洗脳されているんでしょ?」
ノアの提案は安定感抜群だ。何かあったらすぐに殺そうとするこの子。普通に怖いわ。敵に回したくない人NO.1なんだけど。
「我は手刀で戦うしか無いのがキツい」
「一旦皆で上空に避難しよう。ランベリオン宜しく」
「任された」
ランベリオンは
「人がまだ洗脳されていないところに行こう」
「万が一死者が出たらどうするのだ?」
「仕方なくね?」
その言葉が強烈だったのか、ミクちゃんとランベリオンは、小さく頷いた。しかもその頷き方が凄い微妙な感じだ。え? 俺なんか変なこと言った?
「ナリユキって人間の割に冷たいところは冷たいよね」
「ふふん。ノア君良い事を教えてやろう。これは無限に増える洗脳されたゾンビ共を相手するのは効率が悪い。ということは、洗脳されていないエリアに行きベリトを待ち伏せするほうが手っ取り早いということだ」
「成程」
「ナリユキさん風に言うと生産性っていうだけどね」
お。なんかミクちゃんのフォローが入った。分かっているじゃん。流石!
「生産性? なんかよく分からないや。今度時間あるとき教えてよ。それにしても思い切った判断だね」
「これは苦渋の決断なんだよ」
やばい。俺ダンジョンで魔物を狩りすぎて人間の心忘れつつあるかも。苦渋って言ったけど全然苦渋の決断じゃない。ノーストレス! 仲間じゃなかったら割とどうでもいいという価値観にさらに磨きがかかってしまった。
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