第42話 ベリトを追えⅠ

「ただベリトがどこに行ったのかマジで分からないよな」


「だな」


「何の手がかりもないもんね。ベリトの所有物とかあるなら、ボクが近くの魔物を従えて探し出すことができるんだけど。それか魔眼とかがあれば便利なんだけどな」


「魔眼ってどうやって取得するんだ?」


「S級の魔族やドラゴンを倒せば出てくるな。闇森妖精ダークエルフなんかでもごく稀に所有しているやつはいるが」


「勿論。そいつが魔眼をスキルで持っている前提だよな」


「ああ。魔眼は探知にも攻撃にも使えるから、スキルを持っているだけ割と何でもできる。まあノア程の実力があって持っていないということは相当レアと分かるだろう。魔眼スキルの入手は現実的ではない。探索系統のスキルを入手するしかない」


「マーズベル森林にはいるのか? 探索系のスキルを持っている魔物」


「ああ。マーズベル森林には森妖精エルフもいるからな。けれども基本的に、人族と同じ言語を使える高い知能を持った魔物は、我の知り合いだったりするからな」


「成程。味方にはなってくれそうなのか?」


「そこは問題ない。まあ、森妖精エルフは森の管理人みたいな役目を果たしているから、話さえできれば歓迎してくれるだろう」


「結構ワクワクだな。早くベリトをどうにかして国造りの続きしようぜ」


「そうだな」


「ナリユキさんは、ベリトをどうするつもりなんですか?」


「ん? 仲間にしようと思っているけど」


 そう言うと、ランベリオンは「え?」と小さく声を漏らしていた。まあ、自分を操った張本人だから当然の反応ではある。


「いや。役立ちそうじゃん? 洗脳するスキル」


「まあ、アクティブスキルかユニークスキルか分からないがな。我が考えるに、ユニークスキルなら実験する必要が無いから、ここ最近入手したアクティブスキルなのだろうと考えている」


「それは俺も同意見だな。だからユニークスキルが気になるんだよな」


「でもまあ警戒しながら戦えば問題ないでしょう!」


 と、明るく元気に振舞うミクちゃん。ごもっともだ。


「確かに。もはやうちのチームでベリトと戦闘して負ける奴いないだろ」


「奴に触られない限りは、洗脳のスキルは発動しないからな」


「なあ触れられずに戦えばいいから、俺の超強力なパッシブスキルで何とかなるだろ」


 ミクちゃんとランベリオンは確かにと頷いていたが、ノアだけ「え? 何それ?」状態だった。だってノアには俺のこのパッシブスキル効かないからな――。


「ねえ。ナリユキ教えてよ」


「まあベリトのスキル視て大丈夫そうだったら見せてやるさ」


「本当だね?」


「本当さ」


「ナリユキ殿、奴が視えてきたぞ」


「本当だ。あまり速くないんだな」


「私が先制します!」


 ミクちゃんは天使の翼エンジェル・ウイングを展開して、50m先にいる黒翼を展開しているベリトに向かって、極大な美しく輝く光線を放った。そう、燦爛の光線シャイニング・レイだ。


 しかし、ベリトはこっちに顔を向けたかと思うと、後ろ向きで飛びながらミクちゃんの燦爛の光線シャイニング・レイを弾き飛ばした。


「お、あの魔族やるね」


「ミク殿の燦爛の光線シャイニング・レイを弾き飛ばすとはやはりなかなかの手練れだな」


「ランベリオン。新技お見舞いしてやれ」


「任せろ。紅炎放射プロミネンス・バースト!」


 ランベリオンは口から、火炎放射フレイム・バーストの上位互換。新技の紅炎放射プロミネンス・バーストを放った。名前の如く、太陽に近い強烈な火炎放射。まあ、俺とミクちゃんは無効化できるからぶっちゃけどれほど熱いのか分からないが、カルベリアツリーのダンジョンの魔物にはめちゃくちゃ効いていた。それに死の灰デス・アッシュもあるから確殺できるというオマケ付きだからな。


 だがベリトは手を前に向けて余裕の表情を浮かべている。何とランベリオンの紅炎放射プロミネンス・バーストは、ベリトが展開したバリアーによって、五つに分かれて別々の方向へ飛んでいった。


「ぬ……」


「ドンマイ。引き立て役ご苦労様」


「酷くないか?」


「任せろ。ノアこの石持っておけ。俺が合図をしたら、火事場の馬鹿力フル・パワーで身体強化を行い、重量操作ウェイト・カラーでその石ころを10kgにして、ベリトのあのデカい黒い翼に向かって投げつけるんだ」


「OK」


 ノアはそう返事をしてくれると、めちゃくちゃウキウキな顔をしていた。あらやだ怖い。


 そして俺はいつもの如く手から銃を取り出した。久々の登場だなデザートイーグルだ。俺はベリトの胸に目掛けて引き金を引いた。


 発砲すると、ベリトの左胸に見事に命中。ベリトは訳が分からず口から血を吐いている。


「貴様! 何をしたあああ!」


 めちゃくちゃ怒るじゃん。やっぱり銃は効くんだね。


「ノア。思いっきり投げろ」


「はいよ。それ!」


 ノアは石切りをする少年の如く、純粋な笑顔で10kgも石ころを投げた。人造人間で火事場の馬鹿力フル・パワーを使っているせいか、笑えるほどのスピードがあ出ていた。石ころなのにブオン! と凄い轟音を鳴らしていたのだ。


 それはベリトの右の翼に命中。


「ノア君凄い!」


 ミクちゃんに褒められてえへへと照れていやがるが、音速はあったんじゃないか? と思うような石ころの速さだった。あんなもん額に当たったら普通死ぬぞ。


「く――くそ身体が」


「これ以上は傷つけねえよ。大人しくするんだ」 


 俺達は既にベリトを囲んでいた。ただどうも違和感だ胸と翼に怪我を負い、この状況は割と絶望的なはずだが、ベリトはまだ余裕がるよう思えた。


「私がこんなところで捕まるわけがないでしょう」


 ベリトはニッと笑うとランベリオンに何かを投げつけた後、目を瞑った。


「何だ?」


 ランベリオンがそう声を漏らしたその瞬間、視界は眩しい閃光に包み込まれた。

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