第41話 合流

「今のは何だ?」


「凄い光でしたね。レイドラムの屋敷の近くでしたね」


「だな」


「ねえねえナリユキ。何かこっちに向かってくるよ?」


「本当だな」


 正面から、黒翼を生やした何かが向かってくる。


「あれは魔族だな」


「ランベリオン。お前視えるのかよ」


「我はワイバーンだぞ? 人間の視力とは比べ物にならない」


「何か腹立つから鱗一枚だけ剥ぎたいな」


「我は硬質化のスキルがあるが、もはやナリユキ殿、ミク殿、ノアには全く関係ないから痛いのだ。止めてくれ」


「分かっているよ。で、1km程先にいるそいつはどんな奴だ?」


「銀髪に赤い目をしているから魔族だろうな」


「レイドラムの方向から来ているぞ? もしかしてベリトなんじゃないか?」


阻害者ジャマーのスキルが発動しているようだ。我では鑑定できない」


「マジかよ。鑑定士Ⅴで出来ないのか」


 そう話していると、ランベリオンが魔族と言った男は通り過ぎて行った。ベリトじゃない可能性もあるから、むやみやたらに攻撃することはできないな。


 まあ、通り過ぎて遠いこともあり、俺とミクちゃんは鑑定できなかった訳ですが。


「今度あいつを見つけたら鑑定すればいいじゃん。ボクを仲間に入れたことによって、パッシブスキルの阻害者ジャマーじゃ、無効化できない最上位の鑑定士を手に入れたからね」


「Ⅴがマックスレベルの筈なのに隠し要素で、Ⅵが出てくるんだもんな。驚きだわ」


「ルイゼンバーン殿達だ。降りよう」


 ぐだぐだと話を進めていると、ルイゼンバーンさんの部下達がこっちに手を振ってくれた。ただ、女性達や獣人達は攻撃態勢になっていた。眼帯をした男に関しては、凄く情けない顔をしている。


「お待たせしました」


「ご無事で何よりだ。そして約束通り来てくれてありがとう」


 ルイゼンバーンさんはそう言って握手を求めてきた。それを見て女性達は首を傾げている。そらそうだろな――ジェネラル・ワイバーンがいるもんな。


「ルイゼンバーンさん達もご無事で何よりです。その後ろの方々は捕らえられていた人達ですか?」


「そうだ。で、その子供は誰だ? 気になって鑑定士を発動しているのだが、全く鑑定士できないのだ。それにナリユキ殿も、ミク殿も装備がさらに強化されているように思える」


「まあ――この子供に関しては700階層目のボスなんだ」


 その言葉に反応して、ルイゼンバーンさんの部下達は騒然としていた。レイドラムに捕らえられていた女性達はあっけらかんとしている。


「な……700層まで行ったのか――前人未到だぞ――? しかもボスを連れてきたというのはどういうことだ? あそこは結界が張っていて外界との干渉をできなくしているはずだぞ?」


「それは私が解きました」


 と、明るく手を挙げて笑顔で振るまっている。うん可愛い。


「――いや、そんな馬鹿なことがあってもよいのか――?」


「我もミク殿が結界を解けるようになって驚いたからな」


 ランベリオンは何故か得意気に高笑いしている。本当にコイツは味方が褒められると凄い喜ぶよな。


「何故こんなところにジェネラル・ワイバーンが――そ、そうか! 貴様ランベリオン・カーネルだな!」


 眼帯を付けたオッサンがそう言って、ランベリオンを指していた。いや、うるさいな。コイツが俺達が探していたレイドラムか?


「ナリユキ。あの人ピーピーうるさいから殺していい?」


「いや、駄目だろ。頼むからイライラを面白さに変換するために、人を殺そうとするのやめてくれ」


「はーい」


 と、会話していると、レイドラムは急に黙り始めた。勿論、ルイゼンバーンさんもきょとんとしている。あれ? そんなに俺達の会話可笑しかったかな? いや、可笑しいか。すまん。ノアは人の命を奪うことに抵抗が無い子なんです。


「とりあえずレイドラムも捕まえたし一安心って感じか。この女性達はどうするんですか?」


「カーネル王国で保護しようと思っているが」


 すると女性達はなにやら話を始めた。どうやら帰る者もいれば帰れない者もいるようだ。


「帰る場所が無い人は手を挙げてくれ」


 すると、沢山の人が手を挙げた。つかそもそもこれ何人いるんだよ。めちゃくちゃ人いるじゃん。


「意外と多いな」


 ルイゼンバーンさんは頭を抱えているので困っていることは明白だった。そりゃそうだよな。王国にいきなり100人近く入れるのは厳しいよな。


「じゃあ。俺が国を造るから引き受けるよ」


 その発言にルイゼンバーンも、その部下達も何を言っているの? 状態だった。そりゃ確かに、国造りするからおいで~って発言はなかなかぶっ飛んでいるもんな。


「く――国をお造りになるのですか?」


「そうだ。このワイバーンがいるだろ? こいつはマーズベル山脈に棲んでいるんだけど、どうやら人があまり出入りしないらしい。だから俺が開拓していこうと思っている訳さ」


「す――凄い。でも迷惑じゃないでしょうか? お家を作るのも大変かと思いますし」


「それなら問題ない」


 俺は誰もいないところに創造主ザ・クリエイターを使って家を建ててみせた。


「おお~~」


 とルイゼンバーンさん、ルイゼンバーンさんの部下達、女性達だけではなくレイドラムですら驚いていた。


「す――凄いスキルだ!」


 レイドラムはそう言って大声を上げた。いや、急に興奮するとかマジで意味分からんから止めてくれよ。


「そ――それは爆弾や銃も出せるのか?」


「勿論。けれども非公開だ。なんせ悪人に見せる必要はない」


「そ―そんな――」


 レイドラムはそう言ってめちゃくちゃ落ち込んだ。何か思っていた奴とは違うのは言うまでもないが、自分が生き残るためならば、躊躇う事すら無く、味方を切り捨てるような顔をしている。


「ナリユキ様でしたね? 私は獣人のミーシャと申します。ナリユキ様の国に住んでもいいと言うのであれば、私達は喜んで行かせていただきます」


 そう言って皆頭を下げた。流石に少し恥ずかしいが、まあいい事をやっているなら結果オーライだな。


「ナリユキ殿のお蔭で、彼女達の安全は確保された。しかし、ベリトがまだ残っている。方向的にナリユキ殿達はすれ違ったと思うのだが」


「やっぱりアレはベリトだったんですね。倒しておくべきでした」


「そでしたか。で、あれば急いで奴が向かった方角へ向かいましょう。私達は仲間と一度合流しないといけない。ナリユキ殿達はどうする?」


「俺達はベリトを追いかけるさ。いくぞランベリオン」


「ああ」


 ランベリオンの背中には、俺とミクちゃんとノアが再び乗る。女性達は一旦ルイゼンバーンさん達につていく形となった。


 ベリト――。必ずお前を呪いから解放してる。






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