第35話 囚われた奴隷Ⅰ

「ロビン、周辺の状況はどうだ?」


「話し声を聞いているっすけど、油断はしているみたいですね。警戒心は低いっす。あともうそろそろ交代の時間なので。早くあの四人の門番をどうにかしないと」


「そうだな」


 俺達はレイドラムの屋敷が見える草むらに隠れて、俺達は身を潜めていた。ベリトの隠れ家に関してはいくつも回ったが、リアトの姿はなかった。ロビンは申し訳ないっすと言っていたが、ほんの小さな希望にかけてみただけなのだからそう上手くはいくまい。食事は摂れているのだろうか? 拷問はされているのだろうか? 実は死んでいるのではないか? どうしてもネガティブな憶測が飛び交ってしまう。


「ギルドマスターどうされますか?」


「私が強行突破する」


 うちのギルドと同じくらいの敷地の外に配置されている四人の門番。生憎入り口が一つしかないのがネックではあるが、私には決して関係の無いことだ。


 私は10m先にいる門番4人を迅速に手刀で気絶させた。私達は門番に化けるべく、彼等の身ぐるみを全て剥ぎ顔当てもつけて門番になりきった。


「ノーズはここで待機しておいてくれ」


「かしこまりました」


 私達はすぐに持ち場に着き、ただひたすら待っていた。五分ほどして敷地内から四人の兵士がやってきた。


「交代だ。次に備えゆっくり休め。変わったことなどは無かったか?」


「特に異常は無い。しっかり頼む」


 ハワードがそう言うと、私達は敷地内に潜入することに成功した。鑑定士のスキルを持たれていては困るが、どうやらレイドラムの戦力で鑑定士のスキルを持っているには魔族のみで、人間は鑑定士を持っていないようだ。故にこの変装でバレることは無いはず。


 私達は芝の道を歩き、レイドラムの館の前まで来た。ここでも門番がいるが、どうやら名前を言わないといけないらしい。


「カンティア」


「リズベル」


「トートス」


「ムスパー」


「入れ」


 ロビンの異常聴覚で兵の名前も聞けていたので、問題無く通ることができた。今更ながら、ロビンの力が無ければこうも簡単に侵入することはできなかっただろう。そしてまずは人と獣人を解放しなければいけない。


「どうしますか?」 


「監禁されているのは地下だろう。隠し通路などがあるはずだから見つけろ。尋問で情報を聞き出す際は必ず孤立している奴だ」


「はい」


 その指示で三人は散っていった。


 さて、兵士が全員監禁場所を知っている訳でもない。だとすると鑑定士で強そうな人間を探すしかない。


 私は警備の巡回のフリをしながら辺りを探索した。金持ちの屋敷というのは本当に大きい。それに屋敷全体は赤い絨毯は敷かれており。所々、レア度が高そうな絵画なども飾られている。レイドラムの部屋さえ見つけることができれば、出入りする人間を取り押さえればいい。主の部屋を出入りするのは幹部クラスで十分だからな。


「レイドラム様が連れてきた獣人、凄く可愛いらしいぞ」


「そうなのか? 少々犯しても構わないだろ」


「なら、今から行くか? あまりやりすぎると商品価値が下がってしまうからほどほどにな」


 極力一目を避けようと歩ているときに2人の兵士の話し声が聞こえた。これは幸運だ。彼らに着いていけば人と獣人が監禁されている場所へ辿り着くことができる。


 しばらく彼等に着いていくと、彼等はとある部屋の中に入って行った。足音を最小まで抑えながら、扉越しに音を聞いていると、扉が開く音がした。「行くぞ!」と何やら音が反響しているようなので、彼等は地下に入って行ったようだ。


 私は部屋の扉を開けると、赤い絨毯のカモフラージュがされた床が隠し扉になっており、地下へ続く階段があった。中に入ると、扉は自動で閉まったので、手動で閉めることができないから開きっぱなしだったらしい。


 2人の兵士と距離をとるために、しばらく歩かずに待機をしていた。1分ほど待ったところで足を進めた。人が横に並んで二人ほどしか通ることができない狭い通路に蝋燭が一定の間隔で灯っている。


「止めて! 許してください!」 


 ヒトの声か、獣人の声かは分からないが、女性が明らかに男性に許しを請う声が聞こえる。いるのは彼等2人だけではないらしい。


 階段を下り終えると、監禁所へ訪れた。人や獣人が檻の中に閉じ込められ、ここに来た時の衣服と違うのは明らかだった。皆、白い服を着させられているだけだった。そんな薄着では体調を崩してしまいそうだが、どういう訳か、ここの空間そのものは暖かい。


 檻に閉じ込められている女性は生気を失い、目に光が宿っていない人や、檻の中から助けを請う者もいる。ざっと見た感じだと監禁されている人間は多かった。200人ほどがいるだろうか。10人で一部屋のようになっている。そして、ここにいる兵士は私を含めて6人いた。先程の2人は奥まで行っていた。


 兵士は檻から女性を好みの人間を選び、犯している。何とも悲しい光景だ。


「お前もするか?」


 鎧を脱ぎ、バックで二十代くらいの若い女性を、バックで犯している男が私にそう問いかけてきた。


「失せろ」


 私は男に手を向けて、アクティブスキルの鎌鼬を発動した。男の頭は地面に転がりこんだ。そして、首元からは大量の鮮血を噴出していた。


「きゃあああああああ」


 辺りの女性が悲鳴を上げたことにより、他の兵士が私の方を見た。

 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る