第34話 いざブラックマーケット
「さあ見えてきたぞ。レンファレンス王国の王都だ」
「あ、いつの間にか王国に入っていたのね」
まあ、下に広がっていたのは圧倒的な田舎の景色だったしな。やはり王都以外はどこもそうなのだろうか? 謎である。王国全体が王都みたいな、家や商業施設がいっぱいあるところがあってもいいんだけどな。
レンファレンス王国と言ってもカーネル王国のように巨大な高い壁があるわけではないが、ノアにとっては凄く新鮮なものだった。
「す……凄い!!」
そう言って振り返って王国を指す。まあ嬉しそうで何よりだ。俺からすりゃ特に新鮮でもなんでも無いからな。
「家がいっぱいある!」
「だろ? 多分街中に入ったらもっと楽しい筈だぜ。あと、くれぐれも暴力はしないことな」
「え? 強そうな奴いても駄目?」
「いや、まず俺達みたいなレベルの人間や魔族もなかなかいないから、ノアが言う強そうな奴は多分いないぞ」
「それは悲しい。せっかく出てきたのに」
「でも見れないもんがいっぱい見れるんだからいいじゃないか」
「それは確かにそうだ」
「あそこだな」
ランベリオンがそう言うと、街中の中にある広大な土地に、堂々とそびえる黄金の宮殿が見えた。いや、普通に吃驚なんだけど。普通に土地の大きさで言うとディズニーランドくらいはありそうだし。それに造りは黄金のヴェルサイユ宮殿みたいだ。
「ナリユキさんもあれくらいの大きさの宮殿造りましょうよ」
「いや、あんな大きい宮殿造らなくていいだろ」
「お掃除は大変そう」
「メイド何人雇わないといけないんだよ。ランベリオンどっから入るんだ?」
「あそこの正門からだ」
俺達は街中にあるところ門番がいるところに降り立つ。空からジェネラル・ワイバーンが来たものだから辺りは大騒ぎ。当然、門番も槍を向けて攻撃を仕掛けてきた。
「あれ? やっていい?」
「いや、落ち着け」
俺は右手を槍兵二人に向けた。ノアはおおと声を漏らし、ミクはそのスキルやっぱり便利ですねと呟いている。ランベリオンは呑気に
「う――動かない」
「落ち着け。俺は敵じゃない。んでもってこれは金縛りっていうスキルだ」
「よ――要件は何だ。あ――」
槍兵の一人がランベリオンに気付いたようだ。
「うぬ等に我のワイバーン化見せてなかったか?」
いや、呑気かよ。
「た――大変失礼いたしました!」
二人が同時に謝罪したので金縛りを解いた。解いたら解いたで、良かったと声を漏らしていた。
「どうぞお通り下さい。国王がお待ちです」
門が開かれると、ノアも一緒に入ろうとしたので、ミクちゃんが止めた。
「申し訳ないけど、私とノアくんはここでお留守番だよ? ナリユキさんとランベリオンさんが戻ってくるまで待機」
「え? あのデッカイお城の中見たいんだけど」
「また、今度だね」
「今度っていつ?」
「ノアくんがもっと心が大人になってからかな」
「――いいもん。我慢するもん」
いや、めちゃくちゃ拗ねているんだけど。
「ごめん。ごめん。何ならここの宮殿めちゃくちゃ大きいから歩くの時間かかりそうだし、ミクとこの辺探索してていいぞ」
「本当! 行こうよミク!」
「じゃあこの辺で観光していますね」
腕を引っ張られていくミクちゃんはこっちに振り返りながらそう言って手を振ってくれた。
「ああ!」
そう返すと二人は群衆に紛れて姿を消した。
「じゃあいくぞ」
「ああ」
ランベリオンのそう返してくれると、俺達二人は門の中を潜り抜けた。潜り抜けると銀縁眼鏡をかけた黒の紳士服を着た男性がいた。歳は60後半くらいだろうか。一礼をするにしても振舞いそのものが美しく思えた。王の執事は伊達じゃない。
「私はセバスチャン・ロドリゲスです。ナリユキ・タテワキ様。ランベリオン・カーネル様お待ちしておりました。早速ですが、ブラックマーケットに至急行っていただきたいのです」
「王と話す必要は無いのですか?」
「ええ。今は一刻も早くカーネル王国のギルドの方々に力を貸していただきたいのです。何か嫌な予感がするのです」
「勘ってやつですか?」
「そうですね」
「だとよランベリオン」
「だな。ブラックマーケットはどこにある?」
「ロームホルグに行き、市場の裏路地にあるレンガがありますので、この紙の手順通りに触れて下さい」
「最後はどういう意味ですか? 身分証明書なんか無いですけど」
「それは私の方で手配を致しました。四人での来訪を伺っておりましたので、人数分ご用意致しました」
「ありがとうございます」
「いやはや。カーネル王国から念話が飛んでくるとは思いませんでした」
「
「そうでしたか。いや本当に驚きましたよ。ではブラックマーケットまでご案内しますので行きましょう」
「助かります」
俺達は一度門から出て、念話でミクちゃんとノアを呼ぶと五分後には来てくれた。何やらノアは不服そうであった。対して、セバスチャンはノアに警戒心を持っているようだ。
「オジサンには危害を加えないから大丈夫だよ」
何で分かった? みたいにセバスチャンさんは驚いているが、顔に警戒していますって書いている。スキルが無くても分かるよ。まあ、長年生きてきた直感なんだろうな。ランベリオンも始めはめちゃくちゃ警戒していたし。
ランベリオンに俺とノアと、セバスチャンさんという何ともむさ苦しい三人組で乗り、ミクちゃんは
飛んだので五分も経たないうちに着き、市場を案内してもらった。
「すげ~。知らない物がいっぱいある!」
「まさに異世界って感じですね」
二人とも大興奮である。カーネル王国でテンション舞い上がったが、街並みにが同じような感じなので特に何も感じない。
「ここです」
案内されたのは人が横に並んで三人ほどしか通れないような裏路地だった。確かにレンガの家だし、窪みもイラストの通りちゃんとある。セバスチャンさんが俺、ミクちゃん、ランベリオン、ノアに身分証明書を渡した。
「最初は誰から行くか決めて下さい。ここは一人ずつしか入れませんし、周りに人がいると入ることができないのです」
「ランベリオン、ミクちゃん、ノア、俺の順でいいだろう」
「了解」
その順番で入っていき、路地を確認する度姿を消していたので皆成功しているようだ。俺も三人についていくため、セバスチャンさんから教えられた手順で窪みに触れ、最後は身分証明書を提示した。
すると一瞬にして景色が変わったのだ。天気は――薄暗いな。曇りだし。
「ナリユキさん無事にこれたんですね!」
「じゃあ行こうよ。怪しい奴がいっぱいいるから気になる。というか麻薬って悪いもんなの?」
「異常聴覚で情報聞きまくっているんだな。それ耳元うるさくね?」
「まあ、タワーと違ってうるさいけど気にはならないよ。さあ行こう」
と市場の方へ走っていくノア。俺とミクちゃん、ランベリオンもノアの後を追いかけた。
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