第36話 囚われた奴隷Ⅱ

「何事だ!」


「貴様がやったのか!」


 そう声をかけてきたのは私がさっき追っていた2人だ。槍を向けて威嚇してくる。


「貴様等はここで監禁をし、犯しては売り飛ばしているのだな?」


「――貴様、ここの兵士では無いな?」


「それはそうだろう。ここの人達を解放しに来たのだからな」


「貴様、何者だ」


「カンティアだ」


「カンティア? あいつは首を飛ばすような殺傷能力の高いスキルを持っていない」


「まあ別に覚える必要ないだろう。今から死ぬのだからな」


「殺してやる!」


 兵士はそう言いながら掌を向けてきた。そして、手前にいた2人は槍を突き出してきたが、私は鎌鼬のスキルで槍兵の両手を鎌鼬で飛ばし、アクティブスキルを発動しようとしている2人は首を飛ばした。


「ぎゃあああああああ」


 生き残っている2人は両腕から容赦なく出血する腕を見ながら涙を流し悲痛の叫びを出している。残念な話だ。女性の声があれだけ大きかったのに、入り口の部屋からは声は全く聞こえなかった。恐らく防音になっているのだろう。これだけ叫んでいても、この女性達を犯そうと思わない限り人は来ないのだ。


「や――やめてくれえええええ」


「女性達はそう願ったが貴様等は容赦無く犯していただろう。カーネル王国のギルドマスター、アドルフ・ズラタン・ルイゼンバーンの名のもとに、貴様等を粛清してやる。光栄に思うがいい」


「ひっ」


 情けを請う2人の首を手刀で容赦なく切り飛ばした。女性達が視ているなか、5つの首が転がっているのはいささか不愉快だが仕方ない。


 女性達は私の事見ているが、きょとんとしている人の方が多かった。安心をしている人は1人もいない。しかし、私が兵士が落とした鍵を拾い、一つずつ開けていくと、安堵した表情を浮かべている人が増えていく。。


「出てここから避難するんだ」


「あ、ありがとうございます! 宜しければお名前をお聞かせ下さい」


「カーネル王国ギルド本部ギルドマスターのアドルフ・ズラタン・ルイゼンバーンだ」


 その名前を出した途端、周囲はざわつき始めた。


「カーネル王国のルイゼンバーン様が何故こんなところに」


「話はあとだ。入り口はあそこしか無いのだな?」


「はい」


「あの壁の向こうはどこに繋がっている?」


「壁の向こうですか? 敷地外の洞窟に着くと思いますが」


「何メートルくらいのところにあるのだ?」


「200mくらいだと思いますが」


「そうか」


 そう返事をすると監禁されている人間全員を檻から出すことに成功した。


「戦闘ができる人間はいるか?」


「はい」


 と、手を挙げられた後、人間4人、獣人6人が挙手した。


「何とか頑張ってくれ。私が時間を稼ぐ」


「でもどうやって抜けましょう」


「壁を破壊すればいいのだろう? 「燦爛の光線シャイニング・レイ


 流石にMPを消費したな。しかし、200mも壁を開通できるのもこのスキルくらいしか思い浮かばない。


「す、すごい」


「本当に壁に穴を開けて道を――」


 MPを大量に込めた一撃はどうにか大穴を開通することが出来たが、さっきの燦爛の光線シャイニング・レイはあまりにも威力が高いので、凄まじい轟音と揺れを起こした。流石にこれだと奴等に気付かれるだろう。


「私が食い止めている間に行くんだ。今の揺れで奴等は来るぞ」


「あ――ありがとうございます!」


 そう礼を言われ、彼女達は開けた道を進んでいった。しばらく待っていると、ゾロゾロと敵が入った来た。その中にはレイドラムもいたので、これほど嬉しいことは無い。


「貴様がやったのか! 私のコレクションを勝手に出しおって」


 兵士が殺されている心配をしないのは相当な屑だな。真っ先に監禁していた女性達がいないことに腹を立てるのか。


「私は、アドルフ・ズラタン・ルイゼンバーンだ。レイドラム・ゴールウォーズ。貴様を捕らえにきた」


「カーネル王国の犬が何故こんなところに――やれ!」


 兵士が一気に10人程襲い掛かってきたが、ハワード達も混ざっていたようで、3人一気に戦闘不能となった。


「な? どういうことだ。奴一人ではなかったのか!」


「レイドラム様ここは私に任せてください」


「デカラビア頼んだぞ。魔族の力を見せつけてやれ。ここはお前に任せる。私は他の者に脱走者を捜索させているから、終わったらこっちに来い」


「かしこまりました」


 レイドラムの表情は先程までとは思えないほどリラックスをした。鑑定士のスキルでデカラビアと呼ばれる男を視ようとしていた時だった――。


 ハワードの部下2人はデカラビアの横薙ぎで斬り倒された。


「貴様!」


「待てハワード!」


 その声で、ピタリと動きを止めたハワード。


「恐らくお前では勝てない。私がやろう」


「二人がかりでもよいぞ? 人間如きに負けるわけがなかろう」


「確かにハワードでは勝てないだろうが、私なら貴様を倒すことくらい造作もない」


「強がりを――何?」


「どうした? 来ないのか?」


「何故鑑定できない――」


「そういうパッシブスキルがあるのだから当たり前だろう」


「まあ良いわ。ズタズタに切り裂いてやる!」


 

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