第30話 レイドラムの噂Ⅱ

 私は、先程の酒場の店長に言われ通り、骨董品売り場に足を運んでいた。中に入るとハワードの姿が。


「何だ? 今日は騒々しいっすね」


 そう言ったのは、ここの店長であろう人ではあるが、骨董品を取り扱っている割には歳は若い。二十台前後だ。目の下にはクマを作り、生気をあまり感じることができない。が――。




名前:ロビン・パーカー

性別:♂

種族:人族

称号:黄金の目利き

勲章:なし

MP:50,000

強さ又は危険度:D級

パッシブスキル:品定めⅤ、鑑定士Ⅱ、回復士ヒーラーⅢ、駆ける者Ⅲ、異常聴覚Ⅴ、異常嗅覚Ⅲ

アクティブスキル:仮面の暗殺者マスク・アサシン

ユニークスキル:超越した情報網ワールズ・ネットワーク

アルティメットスキル:|なし




 この男のユニークスキル、情報収集能力に長けているようだ。


「ギルドマスターも来たんですね」


「ああ。酒場の店主に聞いたんだ。で、この男は有名なのか? ハワードもいるってことは」


「そうみたいですね。しかし、なかなか話をしてくれなくて」


「なるほど。お金が足りなかったのか? いくら必要だ?」


「お兄さん達知り合いだったんっすね。レイドラムの情報を聞きたいらしいっすけど嫌ですよ」


「金貨一枚でもか?」


「そうっす。レイドラムに関わるとロクな事ないんっすよ。それにあっしは情報屋としてこの辺ではそこそこ名前がが売れているので、何か情報を漏らしたらレイドラムの刺客が来て拷問されるっす」


「そうなのか?」


「嘘をつく必要ないでしょ」


「そうか悪かった。さあ行くぞハワード」


「え? 宜しかったのですか?」


「無理に巻き込むのは良くないだろ」


「そうですね」


 私達がこの店を出ようとしたときだった。


「待つっす」


「ん?」


「そこのハワードの旦那は鑑定できますが、お兄さんは何者なんですか? この辺りの人間なら大体鑑定できるからお兄さんみたいな人みたいな人は珍しいんっすよ」


「残念ながら教えることはできん」


 ロビンは私の顔をジロリと見つめた後、はあとため息をついた。


「分かったすよ。教えればいんでしょ?」


「何だ。命を狙われんるんじゃなかったのか?」


「ギルドの人間なんでしょ? 独特のニオイがしますからね。それにお兄さんの正体がどうしても気になります」


「ほう――」


「ただし、あっしを守ってくれることが前提ですからね


「分かった。話してくれ」


「レイドラムはマカロフ卿と魔族のベリトと手を組んでおります。ベリトは洗脳するアクティブスキルを持っているので、それでマカロフ卿から仕入れた武器を洗脳した人間に持たせて、無作為に荒らしていると聞いたことがあるっす。それに多分信じてもらえないと思うんっすけど、ベリトは飛竜ワイバーンの王までも洗脳したらしいっす。最近覚えたスキルのようなので、実践でどこまで使えるか試しているらしいっす」


「ああ。その話は本当だな。ランベリオンの代わりに私達が来たからな」


「あれ? そうなんっすか? これは驚いたっす――ということはやはりカーネル王国のギルドですか?」


「凄いな。一体どういう情報網だ」


「へへん。あっしの情報網舐めないでください。成程成程――情報提供する代わりに少しやってほしいことがあるっす」


「やってほしいこと?」


「はい。ここは世間でブラックマーケットと呼ばれているっす。まあそれは仕方の無い事っす。けれどもあっし達にすりゃ、自由に生きたいんっすよ。だから違法の薬物に手を染めたりするわけですが、一つだけブラックマーケットで出している種類で撤廃したいことがあるんっす」


「話が見えん。結論から話せ」


「おっと――あっしとしたことがコミュ力終わっていましたっすね。依頼はレイドラムの屋敷の地下で換金しているヒトや獣人を解放してほしいっす」


「無論。困っている人がいれば助けるのが我々の信念だ。見過ごす訳なかろう」


「おっと――そうでしたか。レイドラムの屋敷の場所は御存知っすか?」


「ああ。レイドラムの屋敷はここから10km程離れた南西にあると聞いたが」


「合ってるっすけど、まあまあザックリっすね。ベリトの隠れ家も知っているっすか?」


「いや、知らん。知っているのか?」


「勿論っす。ただ、いくつかあるので全て回らないといけないっすけど。だから案内するっすよ」


「来てくれるのか?」


「ええ。ただ、お兄さんの名前を教えてください。当たっていると思うんっすけど、聞いていた見た目と全然違うもんで――もし当たっていたなら、信じてついていきたいと思うっす」


「私はカーネル王国のギルド本部、第66代目ギルドマスター、アドルフ・ズラタン・ルイゼンバーンだ」


 生気の無かった目が突然輝き始めた。あれ? 私はそんなに有名人なのか? これはファンのリアクションなんだが――。


「凄いっす! サイン欲しいっす!」


 どこからともなく、毛筆と色紙を出してきたロビン。まあ別に減るものでもないしな。


「はい」


「感謝感激雨あられっす! それにしてもスキルか何か発動しているんすっか? めちゃくちゃお若いっすね」


「そうだ。それに鑑定士を万が一にやらても大抵は阻害者ジャマーで見せれないようにできるからな」


「そうっすか。まさかこんな遠いところで来てくれるとは思わなかったっす。さあ行きましょう! ギルドの皆さんも集めてくださいっす! 作戦を練ってレイドラムのところに乗り込みますっすよ!」


 急に元気! 私は歳をとっているようだ。さっきまで目立っていた彼のクマは無くなっているかのように思えた。

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