第24話 カルベリアツリーのダンジョンⅣ
あれからおよそ一週間程経っている。なんともまあ色々なスキルを手に入れたものだ。現在はちょうど450層の休憩エリアに来ている。
ここまで来ると体内時計が正確に分かるパッシブスキルなんかも手に入れた。後は400層の魔物のボスが
で、現在は21時。この時間帯に休憩エリアにの家で体を休めているときは机に向かって、国造りのためのイラストを描いているのだ。どの土地にどんな施設やスポットを置くかだ。ランベリオンは好きにしても良いと言っていたので割と好きに考えている。
しかし、この考えている時間に、最近とあるイベントが発生する。そうここ数日可笑しいのだ。
「ナリユキさん一緒に寝ましょう」
そう、ミクちゃんである。いつも通り、パジャマ姿で枕を持参で部屋に入ってくるのである。
「何でまた――」
「嫌でしたか?」
「いや、そういう訳じゃないが」
「えへへ――じゃあお邪魔しますね」
そう言ってミクちゃんは俺のベッドに腰かけるのだ。ちゃんとミクちゃんのベッドと部屋は用意をしているのにこれである。そして、ミクちゃんはベッドをぽんぽんと叩く。これはいつもの合図。隣に座って下さいというサイン。最初は戸惑ったが、ここはもう慣れた。
で、ペンを置きミクちゃんの隣に座るのだ。もうミクちゃんが来た時点で、集中力は無くなっているのでもはやどうでも良くなる。
「今日も大変でしたね。
「て、言っても10分な。俺達が強くなり過ぎた感ある。ミクちゃんもランベリオンにもう勝てるだろ?」
「まあ――確かに」
「まだこの世界に来てそんなに経っていないけど、こっちの世界の人からすると何百年もいる人並みに強いのだとか」
「そう考えるとあまり実感湧かないですよね。他に転生者がいたら是非戦ってみたいです」
「多分勝つだろ。て、言ってもまだまだ俺達の強さはS級だ。1,000層にはZ級がいるらしいけど、ランベリオンも実態が分からないって言っていたからな」
「元々カーネル王が造ったモノなら、スキルも凄いはずですよね。例えば
「あり得そう――いや、俺のユニークスキルも結構チートだけど、そこまできたらさすがに勝てる気しないわな」
「ですね。ヤバいそう考えていたらもっと強くならないと」
ミクちゃんはそう言って気合いを入れている。が――俺はミクちゃんの生足がどうも気になって仕方ない。いやだって男だもん。変態とか言うなよ。それが
いや、むしろ見るのが礼儀ってもんだ。程よい細さに色白できめ細かい肌――。駄目だ一緒にいるとどうもペースがバグってしまう。これはあれだ。神様の悪戯だ。おい! そこの神! こっちの世界に来て、今のところの試練ってミクちゃんといるときに、いかに理性を保てるか! になっているぞ! そんな試練聞いたこと無い!
「そいや、なんで俺と一緒に寝たがるんだよ」
「え、だってナリユキさんと一緒に寝ると、朝めちゃくちゃスッキリするんですよ」
「え――そんなに?」
「はい。ナリユキさん風に言うと生産性がいいんです」
めちゃくちゃ嬉しそうにそう言っているけど何なんだ。いや、俺よ。一旦落ち着け。ミクちゃんが貞操観念がバグり散らかしているのは前々から分かっていることだ。そして、俺は童貞だ。つまり、友達や仲間として良いと思っているだけで、いざ勝負を仕掛けると負ける可能性だって全然あるのだ。これはもう傷付きたくない精神からきている。そもそも異性として好かれるような事はしていないのだ。そうこれはハニートラップ。というか勝手にハマるハニートラップ。自分からクモの巣に突っ込んでいく感じだ。
「生産性ね――大分俺の口癖が移ってきたのは気のせいか?」
「気のせいじゃないと思いますよ。出会ってまだ半月も経っていませんが、一緒にいる時間が長いので、口癖や考え方も少し似てきますよね」
全国の皆様朗報です。ミクちゃんの笑顔が眩しいです。そして可愛い。たまらん。ドーパミンがドバドバ出るわこれ。
「寝るときの生産性。ふかふかの布団。夜の生産性ですね」
「そうだな。夜の生産性だな」
間があった……。
お互いあっ――という表情をしたであろう。ミクちゃんもしていた。俺も多分なっていたのだ。そして、ミクちゃんは顔を反らした。気のせいかもしれないが少し顔が紅く――いや、耳紅いわ。て、ことはだな……夜の生産性。つまりS〇Xのことか。そうかS〇Xだ。ま――?
「なんかあっついですね」
ミクちゃんはそう言って手を扇子代わりにしてパタパタさせている。そして、何故か俺も暑くなってきた。ミクちゃんの挙動もちょっと変になっている。そして何でも可愛いのでオジサン困る。
「そうだな。ちょっと暑いな」
そう言うとミクちゃんは不意に俺に抱きつき、顔を俺の胸に埋めてきた。あのさ! 不意打ち過ぎるだろ! 心の準備できていないっての。やべ、胸の感触少しあるんですけど。これブラ付けてなかったら爆死していた自信しかない。
「えっち……します……か?」
ふぁっ!? ちょっと待てちょっと待てお嬢さん。今、聞き間違たか? すんげ~可愛い声でとんでもないこと言わなかったか?
「ミクちゃん……?」
その声に反応してくれたのだが、上目遣いで目がウルウルしている。駄目だ。そんな顔で俺を見ないでくれ。
「いいのか……?」
「冗談では……言いませんよ……」
はい。どうやら俺は今夜童貞を卒業できるらしい。
顔を近付けるとシャンプーの香りがふわっと鼻を刺激する。脳裏に焼き付くようだ。
そうだ。これで俺も――。
「ナリユキ殿! UNOでもせんか! あれ? ミク殿も一緒であったか!」
――ヤバい。このアホワイバーンにすげ~殺意が湧いた。人のムードを台無しにしやがって。
「あれ? ナリユキ殿? 何故だか凄く怒っているような気がするのだが? ナリユキ殿の後ろに魔王が見えるのだが?」
「死ね。ゴミワイバーン。
「グアアアアアアアアアアアア!」
家に外にギャグマンガの如く吹き飛んだランベリオン。これでゴミ掃除は完了だ。
「わ、私やっぱり今日は部屋に戻ります」
ミクちゃんはそう言って部屋からそそくさと出ていった。うん――終わった。
人生そう上手くいかないよね。
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