第23話 レイドラムとベリトの調査Ⅲ
「こちらでございます」
金とプラチナのコントラストの壁面の廊下を歩き、着いた所はこれもまた金色の扉だった。まあ、先程思った通り錆一つない。大人が十人横に並んでも、問題ないほどの幅がある。
セバスチャンが扉を開けると、数十―メートル先に逆座に座る人間と、その周りには二人の護衛がいる。上に飾られているシャンデリア。そして玉座まで続く赤い絨毯と金色の柱。そしてその柱には必ず二本の蝋燭が飾られている。
「こっちに来い。ルイゼンバーンとハワードよ」
レンファレンス王と私は勿論面識があるが、兵士とセバスチャンからの又聞きで聞いたはずの、ハワードの名前まで覚えてくれている。昔からそうなのだ。やり手――。レンファレンス王はその言葉に最も相応しい。
「久しいな。ルイゼンバーンよ。そして初めてだなハワードよ」
「はっ!」
私達は膝をつき顔を伏せた。
「面を上げろ」
「はっ!」
その指示に従い顔を上げた。腰まである長い白髪に、胸の辺りまである顎鬚。何より、鷹のような鋭い眼光は未だ衰えていない。
齢、80を越えているのにこの風格だ。この私ですらも重圧と戦いながら、一言一句粗相の無いよう振舞っている。ある意味で一番初心を思い出させてくれる人でもある。
「良い。話せ。要件は大方聞いておるわ」
「はい。単刀直入申し上げます。ランベリオン・カーネルにご依頼されているレイドラム・ゴールウォーズの件、カーネル王国ギルド本部に預からせていただけないでしょうか?」
「理由を」
「理由としましては、ランベリオン・カーネルは戦力になる転生者二人を連れ、カルベリアツリーのダンジョンに潜っております。ランベリオン・カーネルを洗脳し、モトリーナの村を襲わせた男、ベリトとS級クラスの魔族です。恐らく戦闘を避けることはできません。そのベリトと交戦になった際、一人でも多くの戦力が必要となります。また、その二人はまだまだこちらの世界に来てばかりのである、ランベリオン・カーネルが傍にいる必要だがあると判断致しました」
「成程な。聞いた話では、その転生者は二人はランベリオンを無傷で撃退したと聞いたがそれは真か?」
「はい、嘘偽りございません。そして、この情報はやられたランベリオン・カーネルの口から聞いた話なので疑う余地もありません」
「うむ。存分に働いてくれ。あと命だけは大切にな。何ならセバスチャンを同行させても良い。S級の魔族となると厄介だ。下手をすれば国が滅ぶ程の危険度だ。そしてお主は、カーネル王国でS級に匹敵する唯一の人間だ。大変頼もしいが、余の命令でカーネル王国の英雄を地獄に叩き落としてしまうのは本意ではない。何か困ったことができたら必ず報告するんだ」
「お気遣いありがとうございます。レンファレンス王の御厚意に必ず応えられるよう精進致します」
「下がってよい。頼んだぞ」
「はっ!」
何とか、上手くいったようだ。特に怒ってもいなかったのでヘマはしていないはずだ。
「それでは、ルイゼンバーン様、ハワード様、こちらへ」
セバスチャンにそう招かれて部屋を出たのだが、正直なところ心臓が押しつぶされそうだった。ハワードの様子を見てみると変な汗をかいている。うちの国王が緩い分、恐らく顔を見て圧倒されたのだろう。
「凄い方ですね――」
ハワードはそう呟いた。心の奥底から言っているように思える。
「ええ。レンファレンス王は厳格な性格で他国でも有名ですから。ただ、今日は機嫌が良かったみたいですね」
「そうなのか?」
「内緒の話でありますが、ランベリオン様の代替えでルイゼンバーン様が自ら来る対応が評価に値したそうです。もし来なければ潰すとまで仰っておりましたから」
「笑えない冗談は止めてくれ。胃が痛む」
「冗談ではないですとも。本人は本気でそう仰っておりましたので」
「……大変だなセバスチャン」
「慣れです」
このように終わってからの感想や、少し昔の話などをしているうちに門の入り口まで来ていた。あとは、レイドラムを見つけるのみとなる。
「それでは私はここで。ご武運を」
セバスチャンがそう一礼すると私とハワードもそれに応え、この王宮を後にした。もったより話はスムーズだった。まあ、レンファレンス王に時間を沢山割いてもらうのも正直どうかと思うが、13時までにの自由時間をせいぜい堪能するとしよう。
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