第17話 爆弾事件Ⅱ

 なんとまあ驚きなのだが、来たのは酒場の地下室だ。まあぶっちゃけた話barだ。オレンジの照明がある薄暗い部屋で森妖精エルフの女性がグラスを拭いている。違う、めちゃくちゃ美人なんだけどそうじゃない! なんでbarで森妖精エルフなの? もっといい登場の仕方あったじゃん! まあ? 貸し切りっぽいからいいけどさ。つか、お酒頼まずbarって可笑しくない? 顔見知りか? 仮に顔見知りでもさ? お金は落としていこうよ。経済回していこうよ。


「なんかbarみたいなところですね」


 もういいや。ミクちゃんの小声が案の定可愛かったからOK。


「俺も思った」


 俺とミクちゃん、ランベリオンが並んで座り、反対側には、ルイゼンバーンさんと、クロノスさんがいるという配置で座っている。


「まずは僕が体験した事を簡単に説明します。表の遺体の人間がベリトに洗脳されて、レイドラムにC4爆弾とやらを持たせて、あの民家を襲わせたようです」


「目的はなんだ?」


「どうやら実験のようです。そして、最終的な目的は人間への復讐だと思います。ただこれはベリトの目標です。レイドラムが何を企んでいるかは分かりません。それに彼等が手を組むことになったのかも」


「ベリトという男は人間に復讐といったな? そもそもそのベリトという男はどんな奴なんだ? 我を操ることができるほどの――」


「そうですね。ベリトは魔族でも有名な人物です。人を話術だけで操ることができる持って生まれたカリスマ性と、強制的に人を操ることができるスキルを有しています。勿論、僕と同等の戦闘スキルを持っています。どのような人物かというと、元々は☆3つの勲章を有していました」


「我と同じ数か」


「私とも同じだな」


 うえ――ルイゼンバーンさんも☆3つあったのかよ。そりゃオーラが違うわな。


「しかし、彼は協力していた国に裏切られたのです。その国はアードルハイム共和国です。現在はアードルハイム帝国ですね。元々多種多様な種族が共存していましたが、今はもう人間のみの国となっています。当然、ナリユキ殿とミク殿以外の方は把握していると思います」


「勿論だ」


 ランベリオンとルイゼンバーンは仲が良いのか同時に相槌打ったな。


「彼は、王国が良くなると信じ国に忠を尽くしました。しかし、ある時彼は見てしまったのです。人間が無抵抗の獣人族、魔族、森妖精エルフ族などを私欲を満たすために強姦し、挙句の果てには殺すといった残虐非道な事をしている兵士達を――彼はできた人です。その光景を見ても、それはただの一部に過ぎない。だから忠告しようと。それを当時のトップだった人間に伝えたのです。ベリトの信頼は厚いので、話は通り、彼たちは処罰されました。当然、表では一件落着と思われます。しかし彼は国から追放され、命を狙われました」


「え? 何でですか?」


 確かに、ベリトの命が狙われる意味が分からん。話が飛躍しすぎだろ。


「その時の国のトップも同じ事をしていたからです。ベリトは邪眼を持っていますので、国のトップは悪事が広まる前に先手を打ったのです」


 確かにそれだと先に潰しておくな。つかやっていること同じ人間とは思えないわ。


「ベリトは、体力を削りながら、当時の魔族の恋人と、逃げて逃げて逃げました――ふと力が抜けたとき、国のトップが彼の前に現れ、ベリトと恋人の二人を拘束します。国からすればベリトは手強いのでなかなか仕留めることはできません。そこで出してきたカードは、ベリトの恋人と、ベリトのどちらかが死ねば片方の命は見逃してやるという、シンプルにタチの悪い交渉でした。勿論、ベリトと、ベリトの恋人はお互いの命を尊重し合います。見かねた国のトップは飽きたと吐き捨て、抵抗できない二人の心臓を、兵士に刺すように命じたのです。ですので、魔族の間ではベリトが消息不明になったと話題でした。生きていたのは正直嬉しいですが、こんな事になっているのは複雑な気持ちです」


「酷い話だな」


「胸糞悪い話である」


「ゆ、許せませんね――」


 各々、ベリトに同情している。無理も無い。この話でベリトに同情しない人間なんてなかなかいないと思う。ただ気になることがある。


「何で、カーネル王国で実験をする必要があったのですか?」


「そこまでは分かりませんでした」


「いずれにせよ、この国全土で警戒を強める必要があるな。クロノスよ。レイドラムは転生者ではないのか?」


「転生者ではありませんね。ですので、レイドラムのパイプが気になります」


「C4か――何かもっとこの世界の事を知る必要があるな。そもそも、俺達みたいな転生者は多いんですか?」


「多い――という表現があっているか分からないが、100人程はいるらしい」


 ルイゼンバーンさんはギルドマスターだから情報網はエグイだろう。だとすると信憑性はものすごく高い。100人前後はいるって推定で間違いないだろう。厄介だな――俺無双できるじゃんって思ったいたけど、世の中そんなに甘くは無さそうだ。でも、ランベリオンが仲間になったことで、協力してくれる人物が強力なのは確かだ。


「レイドラムの軍事力も気になりますね。闇の商人と呼ばれているくらいですから」


「そうだな。ナリユキ殿、ミク殿、他に以前の世界での兵器はどのような物がある?」


「戦闘機や、小型のドローンとか、戦車とか」


 ミクちゃんから出てくる聞いたことが無い言葉に、キョトンとしているランベリオン、ルイゼンバーンさん、クロノスさん。そらそうだわな。


「でも、戦闘となればここにいる皆さんなら対抗できると思います。前の世界では、この世界のようにスキルという概念が存在しませんでした。ですので、そういった手法で戦争が行われていたのです」


「成程――対抗できる可能性があると言われてもやっぱり、民間人がやられるのはギルドマスターとしては放ってはおけんな」


「カーネル王の護衛をしている僕からしても同じことですよ」


「ランベリオンよ。調査はギルドが一旦預かる。三人でダンジョンへ潜ってくれないか?」


「また急だな。どうしてだ?」


「スキルをいっぱい集めてほしいのだ。特にナリユキ殿のスキルはレアだからな。ランベリオンが10分程度で倒されたくらいだし」


「え? ランベリオンさん、ナリユキ殿とミク殿にそんなに直ぐにやられたんですか?」


「実はな――」


 普通そこは悔しがるんだろうけど、めちゃくちゃ嬉しそうに話すな。てかちょっと照れてない?


「全てのスキルLVがⅠなのがネックだ」


「スキルLVが1??」


「何だランベリオン。教えてなかったのか?」


「すっかり忘れていた。メンゴメンゴってやつだ」


「まあいい。いいかナリユキ殿、ミク殿」


「はい」


 まあ、ミクちゃんと当然、同タイミングで返事するわな。


「戦闘経験と、スキルをどんどん使うことで、スキルのLVがアップする。鑑定士のスキルを持っているそうだが、LVが上がると、スキルの効果が分かったり、スキルでの妨害を突破して鑑定を行うことも可能になる」


「だから、ルイゼンバーンさんのスキルも視ることができなかったのか――」


「私も試していたんだけど全然無理でしたね」


「そういう事だ」


「それに魔物と戦闘することでスキルを獲得することができますもんね」


「だから、ダンジョンに潜ってほしいのだ。なあにナリユキ殿のユニークスキルがあればダンジョンの魔物など雑魚同然だろう。普通の人間なら苦労するのだが――。それに人間は割と色々なスキルを獲得できる種族だ。ランベリオンやクロノスは個体は強力だが、色々なスキルを獲得できる程器用じゃない種族なのだ」


「成程。人間の特権って訳か」


「是非、強くなってきてほしい」


 ルイゼンバーンさんのその一言で、俺とミクちゃんは顔を合わせて二つ返事をした。そうこれは国造りをするために必要な 過程プロセスなのだ。

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