第16話 爆弾事件Ⅰ
「これはどうやら不発らしいな」
「これは爆弾なのか?」
ランベリオンの質問にああと返答すると、ルイゼンバーンさんは詳しく聞かせてくれと尋ねられた。当然話すつもりだ。
「この爆弾は、転生する前の世界で使われていたプラスチック爆弾です。主に戦争で使われていたので、一般人が目にすることはありません。しかし、ゲームという娯楽が前の世界ではあったのですが、そのゲームの中によく登場する一般人でも名前くらいなら聞いたことあるって感じの代物です」
「そんな小型兵器が何故この街に――」
「見たことはないのですか?」
「当然だ。ランベリオンはどうだ?」
「我も名前くらいは聞いたことあるぞ。この世界では転生者がちょこちょこといるからな。ナリユキ殿と同じ世界から来た人間が、その優秀な科学を利用して、この世界で使っている輩がいるのだろう」
そう話していると、民間人の女性がルイゼンバーンさんに声をかけてきた。
「ルイゼンバーン様、お取込み中申し訳ございません。しかし、伝えなければならない事がありましたので」
「続けてくれ」
「この家に入っていく人がいたんです。見かけない顔だったので、しばらく見ていたら爆発が起きて、入っていった人間と共に、シュノールさんの一家はこの有様になりました」
「そうだったか――生存者はどうなった?」
ルイゼンバーンさんはそう言って、呼び出しをしに来た男に声をかけていた。
「家主であろう男性が意識不明の重体です。
「クロノスは呼んだか?」
「ええ。別の者が呼びに行っております。じきに到着するかと」
「お、クロノスが来るのか?」
「仕方ないだろう。魔族の力を借りなきゃこの事件は解決しない」
魔族がくるのか――。て事は良心的な魔族ってことだよな?
「クロノスは王直属の護衛の一人だ」
心が読めるのかこのオッサン!
「当たっていたようだね。まあ、そういう顔をしていたらつい伝えたくなったのさ」
「て、事はランベリオンが言っていたべらぼうに強い護衛だよな?」
「そうだ。未来や過去を体験できるユニークスキルを持っている。まあ鑑定ができるなら来た時に視るといい」
「ああ」
と、言ってルイゼンバーンさんの鑑定も視たいが、全然視れないんだよな。俺の勘が正しければ絶対に強いステータスの筈なんだけど。
「残念ながら私のステータスは視れないぞ? そういうスキルをパッシブスキルが発動しているからな」
「――もしかして心が読めるスキルとかもありますか?」
「それはどうかな?」
と、ルイゼンバーンは得意気な笑みを浮かべているが、怪しすぎる――。
「ところで、何の為にこんな酷いことをしたのでしょうか?」
「だな。というかミク殿は平気なのか? 家の中をよく見ると血が飛び散っているが」
「私、意外と平気なんですよ。まあ、いい気がしないのは当たり前なんですけどね」
「ナリユキ殿が大丈夫そうだが――」
「いや、実は俺こういうの苦手だぞ?」
「そうであったか。お、来たようだ」
「お待たせして申し訳ございません。うわあ酷いですね」
そう言って申し訳なさそうに現れたのは、黒服の上にを身にまとった深紅の目が特徴的な男性だ。これまた綺麗な顔立ちをしていやがる。まあ、魔族ってこともあるのか髪色は銀。その髪を右側で分け目を作っている。うんまあ――。
「お人形さんみたいだ」
そうミクちゃんが述べた通りである。下手しい女性に間違われる事もあるんじゃないか? どれどれ。
名前:クロノス
性別:♂
種族:魔族
称号:時の神
勲章:☆☆
パッシブスキル:アクティブスキル無効、斬撃無効、状態異常無効、精神作用無効、洗脳無効、アルティメットスキル確殺率向上、鑑定士
アクティブスキル:
ユニークスキル:
アルティメットスキル:
いや、パッシブスキルがエグすぎるだろ――どうなってんだよコイツ。
「悪かったなカーネル王の護衛があるのに」
「いえいえ、大丈夫ですよ。王は寛大な方なので、民間人に死者が出ただと? 早く行って来い! と仰っていましたからね。まあ今頃、民間人が心配でソワソワしていることでしょう」
「まあ、いつも通りだな。王らしくないと言えば王らしくないが、優しいお方だ。クロノス、悪いが早速始めてくれ」
「解りました。少し静かにしていて下さいね」
すると、クロノスさんは外にいる人間に触れた。一分ほどすると立ち上がり、成程と呟き、次は家の中に入り玄関付近にいる人間に触れた。正直、この酷い有様なので、彼が触れている人間は男性か女性かも分からない。
そして、最後に一番奥にいる人間に触れて、また一分程するとこちらへ戻って来た。
「ベリトの仕業ですね。それにこのC4と呼ばれる爆弾は、レイドラムのモノですね」
クロノスさんのその言葉で、久しぶりに熱い気持ちがこみ上げてきた。そう怒りだ――。何故こんな酷いことができるんだ。
「そのベリトという男はどんな輩なのだ? 我はそいつに洗脳されてモトリーナの村を襲ってまったのだ」
「ランベリオンさんが? また珍しいことがありますね。そうですね、人目につきますし場所を移しましょう。で、あなた達は――? ナリユキ様とミク様ですね。宜しくお願いします」
「宜しくお願いします」
どうやら、彼は俺達の事を鑑定したようだ。まあ、このスキルを持っていれば、初対面の人を鑑定するのは当たり前だよな。
「あとは頼んだ。また何かあったら言ってくれ」
「かしこまりました!」
ルイゼンバーンさんがそう部下に告げると、俺達はクロノスさんについていき、別の場所へと向かった。
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