第7話 経緯と今後

「まずは私から説明させていただきます。この辺りをたまたま通りがかった冒険者のナリユキ・タテワキと申します。とは言っても、この格好なので違和感を感じる方は多いと思います。ただ、ワイバーンはミクさんと共闘して討伐した事実には変わりありません。ワイバーンの襲撃によってこの村の民家は焼き払われてしまい、さぞ大変なことでしょう。ですので、私のスキルを使い、この村の復興に助力致します。そうですね――」


「おお。凄い」


「一瞬に家が建てられた」


 俺は2階建ての家を手から出すと皆はザワつき始めた。まあ、内装は何もイメージしていないので、ただの大きな箱ではあるが。


「こうやって、家を簡単に建てることができます。それに――」


 銃を手から出して耳を塞ぎ発砲。そして、すぐに銃を消す。


「このように希少価値が高い武器を出すことができます。勿論、剣なども出すことができます。ただし、食料や水、燃料と言った資源を出すことはできません。ですので、少しでいいので、この村で育てている食料を、私とミクさんに分け与えてほしいのです」


「勿論いいに決まってじゃないですか!」


「沢山働きますよ!」


 お、何かいい感じだな。まあこれで村長も拒もうとしても無理なわけだ――ま、心配は無さそうだな。表情は一つも曇っていない。


「ありがとうございます。ちょっと前置きが長くなりました。そしてもう一つ聞いてほしいことがあります。この私の左隣にいる彼の話を怒らずに聞いてほしいのです。彼から皆様に謝罪と経緯の説明を行ってもらいますので、お静かに聞いて頂けると幸甚です。どうか宜しくお願い致します」


 村人はなんぞや? と、いうような表情をしているが心無しか聴く姿勢には入っているようだ。上手くいくといいけど。


「ナリユキ・タテワキにご紹介を預かった我が名は、ランベリオン・カーネルだ。皆に謝罪をしなければならないことがある。我は人型化ヒューマノイドになっているワイバーンの王、ジェネラル・ワイバーンである。故にこの村を襲ったワイバーン達の長であり、責任者である。甚大な被害を出してしまって本当に申し訳ない。そして、弁明をさせてほしい。この村を襲ったのは本意ではなく、洗脳されて襲ったということである。本当に申し訳ない」


 村人の様子を見ると拳を握っている者もいれば、複雑な表情をしている者もいる。ただ共通しているのは皆訊く姿勢が崩れていないこと。アンガーマネジメントの天才が集まっているのか、俺の発言が効果出たのか正直分からん!


「洗脳されたことについては、レファレンス王国に訪れたときの事だ。何故ワイバーンが呼ばれる? と思った者もいるかもしれないが、前提として我は☆3つの勲章をを持っている」


 お、ザワザワしだしたな。本当に凄いんだな勲章って。


「故に王国に呼ばれたのである。頼まれたことは闇の商人を突き止めてほしいとのことだった。その闇の商人という人物は、レイドラム・ゴールウォーズという人物だ。本当に不覚だったのだが、追っていくうちに、ある領域テリトリーに入った時に意識が朦朧とした。そして地面に倒れ込んだ。意識が薄れていく中で得た情報は、我の意識を飛ばしたのはレイドラムではなく、ベリトという男の可能性が高いという事だ。そもそも我が不意打ちとは言え、人間のスキルで無抵抗でやられる程ヤワじゃない。そこからは記憶乖離が酷く、あまり憶えていない。いつ、洗脳されたとかの情報は一切残っていない」


「そうでしたか。と、なるとベリトという男は何者ですか?」


 確かに気になる。仮にもS級の魔物で☆3つ? どれくらい凄いのかマジあんまり理解できていないのだが。もしそうだとすると相当な手練れになる。凄い強い人間なのか? それとも、ランベリオンみたいに人型化ヒューマノイドできる魔物なのか――。


「我が考えるに同じ竜族か魔族、闇森妖精ダークエルフ族の3択だと考えておる。まあ人間という可能性も無くは無いが、限りなく可能性は低い。無くは無いと考えているのも、ナリユキ殿のような猛者もさもいるわけなので完全に否定するわけではないが」


「ですが、何故我々の村を襲ったのでしょうか?」


 一人の村人がそう質問すると、ランベリオンを目を瞑って真剣に考えている。仕方ない――。


「私が考えるに、この村の美味しい食料が、闇の商人からすると煙たいのではないのでしょうか? でもまあ、お金が欲しいだけなら、ワイバーンに襲わせるってのはよく分かりませんが。私が商人なら、この村の食料と取引しているルートを全て潰して、完全な独り占めにします」


「そうですな――」


 村人が剣幕な表情で俯いている。それもそうだ。グァイアスに襲われるは、ワイバーンに襲われるはたまったもんじゃない。


「我は、まだまだこの村が襲われる危険性があると思っている。勿論、我の話を聞いてその事態を危惧するのが必然といえよう。そこで、我の仲間ワイバーン達を、何頭かに警備をさせたいという提案なのだがいかがだろうか? 勿論、これは我が今回、うぬ等に多大な損害を与えしまったことの贖罪しょくざいでもあるが、何より、悩んでいる人間を見捨てるのは我のポリシーに背く。いかがだろうか?」


「お気持ちはありがたいのですが、ワイバーンが何かしらの不備で、再び村を襲う可能性が無いとは言い切れないと思うのです」


「ふむ。ごもっともな意見ではある。ナリユキ殿、ミク殿。何か意見が欲しいのだが」


「ランベリオンは近隣の王国のギルドに知り合いがいないのか?」


「――いるな。確かに」


「ランベリオンが信頼できるギルドの知り合いに声をかけて、その信頼できる人の信頼できるギルドの人間を、この村に派遣させればいいだろう。勿論、護衛をしてくれるのだから、俺が割と広めの宿を出してやる」


「助かります」


「私は、そもそもの原因である、レイドラムの情報を集めて接触して問い詰める必要があると思いました。ですよねナリユキさん?」


 いや、そんな笑顔で見られてもさ? 俺、そんな生産性が無さそうなことしたくないんだけど!? しかもベリトって奴ヤバそうだし。できれば関わりたくないのですが、ここで変な顔すると人でなしとか言われそう。ミクちゃんに思われるのは流石に嫌なんだけど――。


「そうだな。手を打つ必要はあるな」


「とりあえず今日は休もう。そして明日から復旧作業に移ります。家が無い方は申し訳ないですが、俺が出す宿で共同で過ごして下さい」


「そこまでして頂けるとはありがとうございます。グァイアスの討伐、ワイバーンの討伐。そして、村の復旧作業から何から何まで感謝しきれません」


「いえいえ。それと言ってなんですが、家を一軒建てていいですか? そこで今日は泊まります」


「勿論いいですとも」


「じゃあ、私もナリユキさんと同じ家に泊まります!」


「え、マジ?」


「マジです。え? なんか都合悪かったですか?」


「いや、別にいいけど――」


「やった!」


 めちゃくちゃ喜んでいるんだけどミクちゃん。謎すぎる――。


「食事は村から提供します。その際はお呼びしますので是非同行願います。村の皆、それでよいな?」


 勿論。と反論する人は誰もいなかった。そして、俺が家が無い人用の家を手から出して各自解散をした。俺とミクちゃん、そしてランベリオンは今日は一緒に寝泊まりすることとなる。


 何でランベリオンもいるかって? 聞きたいことがあるから今日は同席してもらうのだ。明日は忙しいし、しばらくは家でゆっくりするか。まあ2階建てで、1階に大きめのお風呂でも作るか――。




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