第6話 ランベリオンって実は凄い
「ナリユキ様、ミク様お待ちしておりました。ジェネラル・ワイバーンの撃退感謝いたします」
この村長毎回出迎えてくれな。驚きなんだけど。ん? まあ物腰が柔らかいのか、何か企んでいるのか。
「建物は大方鎮火できたようですね。負傷者はどうでしょうか?」
「ナリユキ様の不思議なアイテムのお陰で、残り三軒で終わります。負傷者の治療も残り数人となっております。で、そちらの方は?」
「落ち着いて聞いてください。この負傷者はジェネラル・ワイバーンです」
「なんと!? 噂は本当だったですね。人型に変身できると聞いたことがあります」
「そうでしたか。実を言うと、ジェネラル・ワイバーンは、操られていたらしいのです。彼は甚大な被害をもたらしてしまったので村人に謝罪をしたいと申しております。ですので、私が傷つけた、彼を治してやってほしいのです」
「襲っておいておこがましいが宜しく頼む。回復してくれた後、謝罪と経緯を説明したい」
「ナリユキ様、本当に宜しいのでしょうか?」
「勿論です。もしなんかあったときは確実に殺す。安心してください」
「ナリユキ殿、遠慮ないな」
ランベリオンは少し苦笑いしているがそらそうだ。俺はやるときはやる。
「とりあえず、運びましょう」
ミクちゃんの掛け声で俺達は足を動かした。村長はミクちゃんに変わろうと言っていたが、村長の年齢も考えてか、何かあったら困るので、担架を押しの交代を拒んでいた。少し残念そうだったのが面白い。
噴水の広場に行くとよく分かるのだが、鎮火していて煙が所々上がっている。ただ、家はやはりボロボロになっているので、俺が家を提供する必要がある。なんでそんなことをするかって? 農作物を俺とミクちゃんに分けて与えてもらうからに決まっているじゃないか。無料でするボランティア活動なんて、生産性の悪いことはしない。てか家を一瞬で建て、一日あれば村の家全てを建てることできるんだから、俺が貰おうとしている恩恵なんて小さいと思うのだが。
「村長、負傷者は全員治療致しました」
「この方も治療してやってくれ」
「はい」
目の前で、一人の村人がランベリオンに手を向け、両手から淡い緑の光で
「できました」
「うむ。助かった」
ランベリオンはムクリと起き俺の方を見てきた。
「あの手から何でも出せるスキルは何だ? それに我の両目を潰した武器はなんだ?」
なんか、めちゃくちゃ食いついてくるなこのワイバーン。元々黄色の目をしているのに、少年のような輝きを瞳に宿らせるなよ――。
「目がうるさい。あとで説明するから、早く謝罪してこい」
「め、目がうるさい? そんなの初めて言われた――」
「謝罪とはどういうことでしょうか? 確かに村では見かけない顔ですが」
「この人はジェネラル・ワイバーンですよ」
ミクちゃんの言葉に固まる村人。けれどもそんなに固まらなくていいじゃん。メデューサにでも睨まれたの? って思ったが、よくよく考えたらこの世界ならメデューサいそうだな。
「事情はランベリオンをしか知らないので、私達も含めて説明してもらいます」
「ランベリオンとは誰でしょうか? あまり聞きたくないのですが、この
「そうだ。我の事だが?」
「え、大丈夫ですか?」
村人が泡を吹いて倒れたので思わず吃驚した。
「名前持ちのジェネラル・ワイバーンってそんなに凄いんですか?」
「凄いですとも。魔物には危険度と強さを総合的な評価でランク付けされているのです。E級、D級、C級、B級、A
級という風になっておりまして、ジェネラル・ワイバーンは個体にもよりますが、総合的に見てS級に近いA級です。しかし、名前を持っているとS級になるのです」
「ほう――因みにS級の上はありますか?」
「Z級がありますが、S級の魔物は、最低でも一晩あれば、一頭で一つの都市を破壊することができるレベルです。ですので、お二人とも無傷で帰還してきたのが奇跡です。ナリユキ様、ミク様は凄すぎるのです」
「お、おう――あれ、お前そんなに強かったの? 確かに鑑定で見たらヤバそうなスキルばかりあったけど」
「我の事をそんなに強くないって言う人間初めて聞いたのだが。これでも勲章は☆3つだぞ?」
「☆3つ!? ということは安心できますな。正気に戻ったランベリオン殿が私達を襲う道理はない」
「あの村長さん。勲章の☆3つってなんですか?」
「勲章は☆が5つまであるのですが、国を救ったり、人類の新発見をしたり、戦争で絶大な活躍をしたりなど、様々な功績を残した者に、国から☆を授与されるのです。☆が多ければ多いほど、優良な人間と言えるでしょう。彼は人間――いえ、☆を持っている方にタメ口など死に値します。軽率な発言でした。無礼をお許し下さい」
「我は
「はい。勲章は人間が作った制度です。人間が魔物に勲章を与えている上に、それが3つもあるのであれば、自分の私欲の為に人間を襲う可能性は、今回のような事が無い限り0といえるでしょう」
「私欲じゃなかったら可能性はあると」
「勿論。しかしその際は大国同士が争うような戦争の時です」
「まあ我は戦争に参加して勲章を授与されているので、人間を襲った事実は否定せん。というか、襲いたくないのが本音ではある。凶暴で醜い生き物ではあるが、面白い面が多いからな」
「成程ね」
そう会話していると広場に着いた。村といってここは案外広いのだ。まあ、ランベリオンが担架から降りたかと思えば、次は村人を運ぶことになるとは夢にも思わなかったが。
広場には村人全員を集めてもらった。まあこんな状況というのもあり、辺りはザワザワとしている。合計で200人ほどいるらしい。そんな中、まずは俺から話すこととなった。
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