第5話 ワイバーン襲来Ⅱ

 ダッシュで駆けつけると、ミクちゃんは俺達が討伐したワイバーンの倍ほどある巨大なワイバーンと戦っていた。スピードで翻弄しながら、圧倒的な剣技で切り付けている。ただ、驚くことに、ワイバーンはものともしていない様子だ。耐久力も相当なモンなんだろう。生半可は銃じゃ倒すことはできない――。


 一つ、名案だ浮かんだ。人がいる村から50m程の距離は離れている。そして辺りは何もない草原。いける――。


「ミクちゃん! 何とかそいつの動きを止めることはできる!?」


「無理ですよ! このワイバーン動き回るんですもん!!」


「ワイバーンから一旦距離を置いてくれ!」


 俺は仕方なく、手からL96を出し、2倍スコープを取り付ける。怯みやすいと言えば目だろ。それに俺には狙撃手のスキルが付いている。当たるはずだ。


 火を吹いたり、尻尾をブン回したりなどで暴れまわっているジェネラル・ワイバーン。なかなか狙うことができない。そう思っていたとき、ミクちゃんが尻尾を切断した。


「ギアアアアアアア!」


 その一瞬の怯みで、引き金を引いた。


 目に直撃したようで、すんごいうるさい声で叫んでいやがる。そしてもう一発撃ち、ジェネラル・ワイバーンの視力を完全に奪った。


「ミクちゃん離れて!」


 ミクちゃんはコクリと頷くと、俺はジェネラル・ワイバーンの上に向けて手を翳し巨大な岩をイメージした。


 上空から出てきたのは高さ20m、横幅10mの巨大な岩。ジェネラル・ワイバーンは声を荒げながら岩の下敷きになった。作戦大成功だな。


「めちゃくちゃ荒業ですね」


「俺も思った。まあこれで討伐できると思うけど、流石にまだ生きていやがるな」


「重量も計算したんですか?」


「100トンくらいにしたけど。どうだろうな。岩山の重さなんかよく分からんし――そいやコイツで鑑定できるのか?」


「できますよ」


「成程ね」





名前:ランベリオン・カーネル

性別:♂

種族:竜族 飛竜ワイバーン種:ジェネラル・ワイバーン

称号:飛竜ワイバーンの王

勲章:☆☆☆

パッシブスキル:鑑定士、熱無効、熱変動耐性、硬質化

アクティブスキル:地獄の炎弾ヘル・フレイム龍の咆哮ドラゴン・ブレス火炎放射フレイム・バースト灼熱の尾バーニング・テール人型化ヒューマノイド

ユニークスキル:死の灰デス・アッシュ

アルティメットスキル:地獄の火炎玉ヘル・フレイムボール




「え? 名前があるけど? んでもってめちゃくちゃ強そうなんだけど。よくこんなん簡単に倒せたな」


「確かにめちゃくちゃ強そうですね。あと、名前があるのも確かに驚きです。人型化ヒューマノイドもきになりますし」


「元々、名前ってあるものなの?」


「名前があるのは、珍しいですよ」


「助けてくれ」


 あれ~。絶対に、ジェネラル・ワイバーンが喋ったよね? 


「ナリユキさん。ああ言ってますけど、岩外しませんか?」


「お、おう」


 岩山を消したが、ジェネラル・ワイバーンは倒れこんだままで苦しそうなのは変わりない。と、あれこれと考えていると、ジェネラル・ワイバーンはみるみる小さくなったいった。と、いうかまさかの人型になったのだ。185cm程の身長に、赤い髪の美丈夫な顔立ちをした好青年に変身するとは驚き。


「え――どういうこと?」


「話をする前に回復薬ポーションなどを持ってきてくれぬか? ダメージが大きすぎて立つことすらできん。大丈夫だ。襲うことなどしない。ワイバーンは人を食べない魔物だ」


「本当だろうな?」


「大丈夫だ強き者よ。我等は洗脳されていた故、村を襲った。それに、同胞がうぬ等に倒されたのも、仕方がないことだと思っておる。復讐の機会を伺うようなことはせん。むしろ、村に先制攻撃を仕掛け、甚大な被害と犠牲者を出し、恐怖に陥れてしまったことは、非常に申し訳ないと思っておる。村人の皆に謝罪をさせてほしいのだ」


 まあ、営業経験からすると胡散臭さは無いし、先に復讐というワードが出てきたのも信憑性が高い。普通ならそこまで言わないもんな。疑われる可能性がある事柄を全て潰してきているし――。


「わかった。村まで運んでやる」


「かたじけない」


「担架で運ぶぞ」


「は~い」


 車輪付きの担架を出して、二人でジェネラル・ワイバーンを載せる。この身長で筋肉質なんだろう。推定体重75kg以上を二人で持つのはキツ過ぎる。乗せた後は二人で押して村に向かう。


「本当に申し訳ない。特に女子おなごには負担をかけたと思う」


「本当ですよ。それより目は大丈夫ですか?」


「血は止まっておるが相変わらず見えん」


「悪かったな。そいや、名前はランベリオンでいいのか?」


「よい。我はなんと呼べばよい?」


「俺はナリユキ・タテワキだ。ナリユキでいいぞ」


「ナリユキ殿と呼ぼう」


「私はミク・アサギ。ミクでいいですよ」


「ミク殿か。宜しく頼む。で、名前で気になったのだが、二人は転生者か?」


「何で名乗っただけで分かるんだよ。てか、この世界では転生者はレアではないのかもしかして?」


「転生者の知り合いがおってな。そのような特徴的な名前だった。まあ分かる人には分かるみたいな感じだ」


「特徴的なんだ」


「てっきりお互いしか分からないと思っていた――」


「我は1000年程生きておるからの」


 おい、今絶対ほくそ笑んだだろ。

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