受け入れがたい世界観を前に耐えがたい好奇心が刺激される

　グロテスクや狂気という言葉では片付けられないほどの作風で、私は最初からこの作品に取り憑かれました。

　このレビューを書くにあたって、まず言うべきところは、唯一無二のシナリオが特徴的な物語であることです。
　異世界ファンタジーは人気で、新しいものが毎日のように作られているので、どうしても既視感のあるものになりがちですが、この作品はそうではない。だから異質で、興味を惹かれます。新鮮な期待があるから、単純に読んでいてあとが気になります。

　もう一つ言えることとして、主人公の思考回路から、人の奥に潜む負の感情まで綿密に書かれています。ダークな世界観を汚さず、雰囲気を底上げするその語彙力と、文字の使い方が物語としての完成度に拍車をかけ、読み始めると、その不思議なリズム感に圧倒されます。

　非常に読みがいのある作品ですので、少し受け付けないような展開になっても、我慢強く読み続けることをお勧めします。