【第四話】世界の弱点 ③

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア…………ッ!!」



恭司は斬って斬って、斬りまくった。


ただただただただ、


斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って──……。


それでもまだ終わらないから、


斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って────……。


何度も何十度も、


斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って斬って──────…………斬り続けた。


もう何十人目かも分からない。


どれだけの時間かも分からない。


脳がアドレナリンで満たされ、殺意と興奮が止まらなかった。


やらなければと……


やらなければならないと…………


頭の中で呪文のようにそれだけを繰り返し唱え続けて、頭が今にもイカレ狂いそうだ。


こんな所では死ねない────。


死ぬわけにはいかない────。


ただただそれだけを胸に戦う。


恭司には目的があるのだ。


ここで生き延び、脱出し、力を蓄える────。


そして…………


奴らを、カザルを苦しめた人間たちを全て皆殺しにし、恭司をこんな目に遭わせた神に、復讐してやらなくてはならないのだ。


そのためにも…………



「そのためにもッ!!こんな所で死んでる場合じゃねぇんだよォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」



全ての動きを読みながら────。


全ての攻撃を避けながら────。


恭司は着実に兵を殺していった。


飛び交う血液が体中に降りかかり、鉄臭い臭いと熱気が、場に満遍なく充満する。


兵士たちからすれば、完全に予想外だ。


恐ろしくて仕方がない。


血と狂気が恭司を赤黒く色取り、同じ人間を相手にしているとはとても思えなかった。


こんなのが、人間のはずがない。


『無能者』な訳がない。


聞いていたのと、思っていたのと違う────。


そして…………


そんな時────。


正に、そんな時だった。


この中の遠いどこかで────。


1人の兵士がポツリと────。


ただポツリと────呟いた。



「鬼だ………………」



それは、あまり大きな声ではなかった。


か細く…………聞こえるか聞こえないかくらいの…………


とても小さな呟き────。


しかし…………


それは周りの兵士たちの耳にも、しっかりと聞こえていた。


さっきから50人がかりで一斉に攻撃を仕掛けているにもかかわらず、相手は一向に死なないどころか、攻撃が当たりすらしないのだ。


何度も何度も、どれだけ何十度やっても────。


こっちは相手に傷の1つすら付けられていないのに、襲っているこっちの人数だけは着実に減っていく。


それは兵士たちにとって、一つのターニングポイントになった。



「ダメだ…………もうダメだ…………」

「死にたくない…………死にたくない…………」

「コイツがこんな化け物だなんて…………聞いてないぞ…………」



見るも明らかなほど、呟く者が増えていく。


遠くから────。


後ろから────。


前から横から斜め前から斜め後ろから────。


徐々に徐々にと増えていく。


次々に…………どんどん…………あっという間に…………


後退していく兵士も増えていく────。



「お、おい…………貴様ら…………?」



異変を感じて、訝しげに呟かれた声。


こんなはずではなかったのに────。


もっと楽で簡単に済むはずだったのに────。


兵士たちの間で恐怖が瞬く間に伝染していき、止められなかった。


体が震え始め、血の気がサーッと引いていく。


皆思いつつも、分かりつつも、考えないようにしていたのだ。


何とか見えないフリをしてきたのだ。


相手は『無能者』だと…………出来損ないの不遇職相手だと、そう言い聞かせてきたのだ。


それなのに…………



「ぅぁ…………ぁ…………」



『無能者』相手だからと誤魔化していた気持ちが、この数々の呟きによって一気に開いてしまった。


自分だけではないと知り、悪い意味で決意が固まってしまったのだ。


明らかに…………後退していく兵が増えていく。


少しずつ…………足が前に進まなくなっていく。


すると、そんな中────。


突如として、


兵士とは気色の違う、とても大きな声が聞こえてきた。

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