第21話       イシカワ⑳

俺はおしぼりで口元を拭い、ビールを一気に飲み干してアルコール洗浄を行った。


 ……チッ、このクソアマが。次に【キス】を引いたら、こっちから強引にテメーの唇を奪ってやんぜ。何せこのゲームの支配者は俺様だからな! 女王たまは絶対君主なのだ! そして、ベロンベロンにお前の唇を舐めてやる! めちゃめちゃ舐めてやる! なんなら舌も入れてやる!ついでに前歯も舐めてやる! グフフフ………


 俺の脳内は、煩悩を通り越して変態領域へと到達していた。


「ユ、ユガムッチ~」


「女王たま、何でありますか?」


「ボク、まだ遊び足りないなぁ。もう一回……いや、三回戦にしない?」


「……な、なんと! いつもは一回勝負の移たんゲームを三回戦にでありますか!?」


「う、うん。せ、せせせっ……」


 ……危ねぇ。思わずセッ○スしたいと呟く所だった。まだキスもしてないのに先走り過ぎだ。落ち着け俺。


「……久しぶりの楽しい飲み会だし、今回は特別ルールにしよーよ」


「……アリであります。素晴らしい提案であります! クリエイターたる者、既存のルールを壊してこそであります!」


 ……よし。これでチャンスは後二回。何としてでも【キス】を引いてやんぜ!


 と、息巻く俺だが、餓死するきっかけの一つとなったのが、パチンコやパチスロ等のギャンブルだ。俺の引きの弱さは、神が見放すほど弱い。派遣のバイト代、生活保護の手当て、挙げ句の果てにトイチで借りた闇金……その全てが、台の横に設置されているコインサンドに溶けていった。


 しかしだ。


 今、俺は滝本移。女王たまゲーム初の【キス】も引いた。そう……今の俺は『持っている』。だとしたら、連チャンだって充分にありえる事だ──


「じゃあ、ルーレット始めるよっ!」


 俺は女王たまゲーム二回戦目のルーレットを回した。狙いは当然、愛妻優(ロリ顔)だ。


 引ける……引ける…………俺は、引ける!


 そう強く念じてダーツを投げた。




 【速皮喩我無】




 ノォォオオオオ───────────────────!!


 よりによって、ダーツは速皮喩我無(豆タンク)に命中してしまった。


「ブヒョヒョヒョー! 歓喜の極まりであります!」


 ……やられた。ハズレだ。仕方ない、こうなったらなるべくどーでもいいゲームを引かないと。


 俺はプレイング・ルーレットを回し、ダーツを投げた。




 【定規でムフフ】




 ……は?


「くおぉぉぉ!【定規でムフフ】を出しおったか! 羨ましい! 羨ましいぞ速皮の!」


「緒方氏、申し訳ないであります。では早速……」


 速皮喩我無(豆タンク)は、リュックの中から大、中、小と、三種類のアルミ製定規を出した。


「……さぁ女王たま、お好きなサイズをお選びくださいであります」


「……え、えっとぉ」


 何だよ定規って。こんなモンでどうやってゲームすんだ?


「前に我が当選した際は、この小さい定規にて『シッペ』をされたな……くおぉぉぉ! やはり羨ましいぞ速皮の!」


 シッペ? ははぁーん、なるほど。この定規を使った『ソフトSMプレイ』って訳か。このクソドM共が……いいぜ、ならお前らの願望の斜め上を行くプレイをやってやんよ。


「じゃあ……コレ」


 俺は一番大きな定規を手に取った。


「な……なんと。『定規でムフフ』始まって以来の大型でありますか」


「ユガムッチ、お腹出して」


「腹…………でありますか?」


「うん、早く出して~」


「……御意であります」


 速皮喩我無(豆タンク)は上着をめくり上げ、腹部を露出させた。




<続く>

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