第19話       イシカワ⑱

俺もスマホを取り出し、アプリの一覧を表示させてみた。そして、何やら違和感のあるアイコンを発見した。




【移LOVE】




 ……これか。異能アプリ並みに怪しいな。


 アプリを起動させると、ゲームと思われるタイトルがズラリと並ぶ。しかもタイトル全ての冠言葉に、『移たんと──』が、使用されている。


 コイツ……どんだけ滝本移の事が好きなんだよ? 正直怖いわ。


「では本日の移たんゲームはなんぞねなんぞね~? であります!」


 速皮喩我無(豆タンク)がスマホを操作すると、画面に薬玉くすだまが表示された。そしてその薬玉が割れた瞬間、『移たんと女王様ゲーム』というタイトルが浮かび上がってきた。


「移たん女王たまゲーム……キキキ、キタキタ、キター、キター、キタ──────! であります!」


「ウオオオ─────────!」


 ガッツポーズを決める速皮喩我無(豆タンク)と緒方力也(筋肉バカ)を横目に俺は戸惑った。


 ……おいおい、何だよ女王たまゲームって。まさか変な事させられるんじゃねーだろうな?


「では移たん……否、移女王たま。全ての権限は貴女に、であります」


「……え、えっ~とぉ。久しぶりだからやり方忘れちゃった、アハハ」


「なぁ~に、簡単であります。まず、画面に表示されている【スタート】を押すだけであります」


「あ、う……うん」


 俺は言われるがままスタートボタンを押した。すると、画面にルーレットが表示され、滝本移以外の名前が表示された。


「では、これよりダーツを二回投げてもらうのであります!」


 ……ダーツ?


 俺は一回目のダーツを投げた──ダーツは【可愛絆】に命中した。


「ムフフフン……可愛たんでありますか。では続きまして、プレイング・ルーレットであります!」


 画面には二回目のルーレットが表示され1~51の番号が割り当てられている。そして俺は二回目のダーツを投げた。ダーツは17に命中した。


「……17ですと? こ、これは………」


 速皮喩我無(豆タンク)が険しい顔で画面を凝視している。これはあれか? かの有名な、『王様ゲーム』みたいなモノか? ま、コンパなんて俺は一回も行った事ねーから、やった事はないけどね。


 ────【キス】


 と、画面に浮かび上がってきた。


「出た──!ついに出たであります!移たん女王たまゲーム初のキッスが降臨したであります!」


「なんという引きの強さ……血湧き肉踊るな滝本の! 今日は祭りだ! フハハハハ!」


 ……え?


 キ……キス?


 キスって、天ぷらとかにすると旨いあの鱚?


「え~、チュリーとキスかぁ。何か照れるなぁ」


 ……マァズィくぅわあぁぁぁぁ────────! マジか! キ……キキキキキキスゥ? キスって、つまり接吻? 口づけ? 唇と唇をくっつけるアレですかぁ!?


 童貞チェリーがチュリーとキス。つまり、可愛絆ビッチは俺の初キッスの相手となるのか……まぁ、贅沢を言えば愛妻優(ロリ顔)の方とキスしたかったが、しかしそれは贅沢というもの………どんな形であれ、女の子とキスが出来るんだ。これは転性始まって以来の大規模イベントだぜ。




<続く>


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