第18話 イシカワ⑰
そんな忌々しい記憶が走馬灯のように蘇った──
……そうだよ。今考えてみれば、あの日以来、俺は女の子に対して恐怖心を抱き、避けるようになったんだ。つまり、『山本なつみ』は、俺が餓死という壮絶な結末を迎えたきっかけじゃないか。
そんな怨むべき女の娘である、愛妻優(ロリ顔)の顔を見つめながら、復讐にも似たような、似てないような感覚に包まれたような気がした。
……よぉ、山本なつみ。どうやら幸せな家庭を築いてるみてーじゃねーか。そんなお前が種馬と交配を行った結果、生まれてきたガキが、まさかあの時、虐げた奴の隣で無防備な笑顔を振り撒いてるとは、想像もしてねーだろ?
……どうしてやろうか。
復讐を遂げる選択肢は山ほどある……かも知れない。いや、そんなにないかも知れない……いやいや、むしろ復讐どころか単なる逆怨みでしかないかも知れない。それでも、俺はあの日味わった辛さを忘れる事なんて…………
「タッキー、あ~ん♪」
愛妻優(ロリ顔)が俺の口元に鯛のお造りを近付けてくる。
え? 何コレ?
あ~ん?
もしかして、かの有名な、『あの』あ~ん?
「……あ~ん」
モグモグ……ゴックン。
旨ぁ……てゆーか何々? 俺生まれて初めて女の子から『あ~ん』ってしてもらっ……うおおおおぉぉぉぉ────────! カワイイッ! 何コイツめっちゃカワイイ! それに優しい! カワヤサ? なんだそれ。あー、昔の事なんて忘れた。今この瞬間に綺麗さっぱり忘れた!
くだらない。くだらないくだらないくだらない。
エグい初恋の思い出など、餓死した時点でオワコンなんだ。俺のアバターは、無双女子、滝本移だ。だったら……だったら、だったら、だったら! これはもう愉しませてもらう以外、他ならぬでしょ!
テンションを爆上げさせた俺は、追加のビールをがぶ飲みし、光悦モードへ移行させた。その時、 速皮喩我無(豆タンク)が何やらスマホをいじり出した。
「お待ちかねであります……これより第32回『移たんモキュモキュタイム』開催であります! では皆の衆、アプリを起動させたり! あ、させたりぃ! であります!」
速皮喩我無(豆タンク)が妙なテンションで高らかに宣言すると、全員がスマホを手にして、操作を行い出した。
……なんだ? モキュモキュタイム?
<続く>
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