第17話 イシカワ⑯
しかしながら、ヘタレな俺がラブレターの手渡しなんて当然出来るわけもない。ベタに下駄箱に入れる事も考えたが、誰かに見られたら最悪だ。
なので──
俺はなっちゃんを尾行し、自宅を突き止め郵便受けに投函した──ハイハイわかってますよ。現在なられっきとしたストーカー行為ですよねー。でも……俺はそれでも、彼女に気持ちを伝えたかったのだ。
ラブレターの内容はこうだ。
『好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きですキスしたい好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです好きです』
……何でこんな事を書いたのか? 脳が膿んでたのかな? もはや完全に変態さんだよね。大人だったら確実にお縄だよね。
そんなサイコパス要素満載のラブレターと共に、当時人気だったジャ○ーズの生写真を同封した事は多少あざといとは思ったが、魚を釣る事と同様に『餌』は必要でしょ? と、無理矢理自分を正当化させていた。
しかし、その翌日事件が起きた──
卒業式前日だった事もあり、朝からざわつく教室にただならぬ『異変』を察知した。
その予感は的中、朝のホームルームにて担任が、「緊急の学級会を開く」と、切り出したのだ。教室内は急遽会議形態になり、担任が「一ノ瀬、前に出ろ」と俺に指示をした。バリバリ心当たりがある俺は、『え? 意味わかんないんですけど』的な態度を取り、ふてぶてしさを演出して壇上の横に立った。
そして学級会が始まると、書記長が黒板にチョークで『一ノ瀬くんの変な手紙について』と書きやがったのだ。
なんと、なっちゃんは俺のラブレターを担任に渡したのだ。 担任は、具体的な内容に触れはしなかったが、『とても不愉快な事が書かれていました』とみんなに公表しやがったのだ。
え? え? え?
ナニコレ?
現実? 現実に起こってる事なの? いやいやフィクションだよね? 卒業式前のサプライズ?
自律神経がおかしくなったのだろうか? 両ワキから異臭がしてきた。クッサ! え? 何この臭い? クッサ! 死臭? クッサ! もう死にたいんですけど! と、思いつつも、地獄の学級会は進行していった。
女子生徒の一人が、『なんでそんな気持ち悪い手紙を書いたんですか?』と、質問しやがった。
……オイコラ。お前手紙の内容知ってんだろ。
袋小路に追い詰められた猫のように真上に飛び上がり、天井をぶち抜いて逃亡したい──
精神的圧迫を受けた俺の解答は、『ちょっと待ってよ母さん!』と、何故か母親の名前を出してしまった。これにクラス中は大爆笑。その笑い声を最後に俺の意識は途絶えた。
気付けば保健室のベッドの上──保健の先生いわく、どうやら俺は貧血で倒れたらしい。うやむやになって学級会という名の吊し上げは閉幕したようだ。
そして翌日、俺は体調不良を理由に卒業式を欠席した──
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