第13話      イシカワ⑫

テーブルに豪華な料理と酒が並べられ、俺の両隣にはカワイイ女が居る──


 ついこの間まで、金は無い、友達も居ない、勿論彼女も居ない。あるのは多額の借金だけという、底辺のおっさんだった俺にとって、まさに夢のようなシチュエーションだ。


「じゃあ料理も出揃ったし、乾杯しよっか」


 可愛絆(ビッチ)が音頭を取り、皆がビールジョッキを手にした。


「え~、ではチュリーの退院を祝しまして、かんぱーい」


「かんぱーい!」




 一時間後──




 俺は刺身の船盛りや、尾頭付きの鯛の刺身など、豪華な食事を堪能し、酒も浴びるように飲んだ。そして、両隣のカワイイ女の子──可愛絆(ビッチ)と愛妻優(ロリ顔)もかなり酔いが回ってきた様子だ。


 ぐふふふふ…………


「チュリ~、飲んでるぅ?」


 と、ほぼ0距離の密着状態で俺に絡む可愛絆ビッチ。


「うん、キッチョンも顔真っ赤じゃん」


 ……愉しい。愉しすぎる。こんな快感は、一ノ瀬大作時代に味わった事はない。更に──


「ふぇ~……酔っぱらっちゃったよぉ~」


 愛妻優(ロリ顔)もいい感じに出来上がってきた。そのトロ~んとした目が、より一層可愛さを倍増させている。


「すーちゃん、眠たそうだね。大丈夫?」


「う~ん……今日はタッキーのお祝いだから、楽しくて楽しくて。つい、お酒が進んじゃったぁ……」


 そう言うと、愛妻優(ロリ顔)は俺の左肩に寄りかかってきた。


 ──ふぐぉ!


 え? え? え?


 右に可愛絆(ビッチ)──


 左に愛妻優(ロリ顔)──


 中央に俺──


 ……これはもはや美女という名のサンドイッチ。具はおっさんだけど。


 あぁ……餓死して本当に良かった。神様……いや、異世界事務局の佐藤さん。顔も見た事ないけど、俺はアンタに感謝している。


 ……至福だ。


 この時、俺の脳裏に過去の哀しき出来事が蘇った。




<続く>

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