第3話 イシカワ ②
スマホの着信音が鳴り響いた。
「うお……」
何だよ、ありきたりなタイミングで邪魔が入りやがったな。
やれやれ、と俺は部屋に戻り、ベッドサイドに置かれているスマホを手に取った。
「非通知か……ま、こういう時に鳴る電話は、大概非通知でかかってくるもんだよな」
俺は通話ボタンをフリックした。
『もしもし、一之瀬大作様ですね』
「は? はい」
『ですね』と、言い切りやがった……つまり俺の素性を知っている人物か。
『私、異世界転生事務局、担当の佐藤と申します』
「……は? い、異世界?」
『左様でございます。今回お電話差し上げた件ですが、単刀直入にお伝えしますと、「転生手違い」が発生致しまして……』
「転生……手違い?」
『はい。本来、餓死にて死去される予定の一之瀬様は、転生ルーレットで大当たりをお引きになられました』
「転生ルーレット? な、なんすかそれ」
『死の直前、人生最後の運試しというイベントにございます。そこで、一之瀬様は「異世界で大賢者に転生出来る権利」を獲得したのですが……』
「ですが?」
『同日、事故死にて死去される予定でした滝本 移うつり様も、転生ルーレットで一之瀬様と同じ権利を引き当てたのです』
「は……はぁ」
「この事自体がそもそも間違いでして。転生ルーレットに、同じ権利は2つとないのです。つまり、システムエラーが発生した次第でございます」
「システムエラー? は、はぁ……」
『つまり、本来一つしかない大賢者の資格が、重複するという数万年に一度のシステムエラーが発生した……という事でごさいます。この事態を受け、我が異世界転生事務局では専門家会議を行った結果、異例ですが、滝本移様を大賢者に転生、一之瀬大作様を滝本移様の身体に「移す」という事で決議いたしました』
「……は?」
『この結果の決め手となったのは「死因」です。滝本様は前途有望な若者の交通事故による不運の事故死。一方、一之瀬様は自らの怠惰により破綻し、そして餓死をした。これらの経緯を踏まえまして、多数決にて決定した事項でごさいます』
「そ、そんなぁ!」
『……不服でしょうか? では、一之瀬様には不服申し立てをする権利がございます。ですが、この場合、転生ではなく死去という形式を……』
「いいんですか!? こんなカワイイ女の子になっちゃって!」
『……は?』
「いやだって、俺ド底辺のカスオヤジだったわけじゃないですかぁ~。それをこんなにも激烈美少女として生きて行けるなんて超ラッキーすよ! あざーっす!」
『……切り替えが早くこちらも助かります。では、「転生したあなたへ」というマニュアルをそちらのスマホに送信いたしますので、ご確認ください。今回はお手違い、誠に申し訳ありませんでした。では失礼致します』
そこで電話は切れた。
「……そっか。俺は本来大賢者に転生するはずだったのか。じゃああれか、『異世界転生』じゃなくて、『異性かいっ!』って事だな。ま……いいや。この子カワイイから」
こうして俺の転姓? ライフは幕を開けた。
<続く>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます