第32話 Incantation
「どうしてこんな……」
背中の傷に違和感を覚えていた次の瞬間、今度は先程助けてくれた騎士に射抜かれていた筈の肩の傷も治り出し『
そしてその違和感の正体に気付いたのは『
「この魔力。先程貴様を殺そうとした男の魔力と類似しているな」
『
二人は先程の部屋で魔力の大幅な放出がされた事など知るはずもなくなぜ回復しているのか、なぜあの男の魔力を送られているのかは知る由も無かった。
しかしこの回復はこの窮地から抜け出すには最高のタイミングであったのは間違いない。
『
しかし地面に待っているものは────
地面と残り二メートルという所で、突如視界の隅に獣が現れた。
「よお、出会い頭そうそうに悪いとは思うが────」
獣はあろう事か二足歩行で『
「死んでくれ」
しかし獣の届く事はなく、突如その合間に現れた
────!?
突如現れた槍に狼の容姿をしているフリークは驚きを露わにしながらもすぐさま思考を切り替える。
何故ならその隙に『
『
フリークは思わず手に持っていた剣で防御の体勢を整えたが『
そして尚も槍は勢いを殺すことなくそのまま一周を果たし、その勢いによって生み出された風は周囲の木々をざわつかせる。
そしてその衝撃は結果的に木々の周囲に控えていた和馬、ラーゼにも衝撃を与え、フリークに続く追撃は出来ることなく終わってしまった。
そしてそれと同時に三人は一つの思考を巡らせた。
────コイツは……
────コイツ……
────ぬぅ……
「「「手強い」」」
そんな三人を他所に「
「貴様の羽があればもう少し安全に落下できた筈では無いのか?」
「お恥ずかしいことに私は飛ぶの苦手なんです……」
「そうか、それ以上は聞くまい。まずはこの状況をどう打開するかを考えよう」
『
「スナイパーが居る以上この森から抜け出す事はオススメできないな。わざわざ遮蔽物が無い場所へ赴くメリットがない」
「ええそうですね────って危ない!」
突如『
間一髪の所で女神が「
「おいおいおい、敵を前にして堂々と作戦会議とか舐めてるの?舐めてるでしょ?」
攻撃を放ったのはラーゼであり、文句を垂れながら二人の前にその姿を現す。
そしてその横から先程『
「あやつの攻撃は魔力か?」
「いいえ……少し違います。魔力なら貴方がすぐさま気付いていた筈です。かと言って神の力と言われると少し歪ですね……近くに来るまで存在にすら気付きませんでした」
二人が能力について考察をしているとそれを遮るかのようにラーゼが言葉を開いた。
「そんなに怯えなくていいよ。複雑な力じゃ無いから」
そんな事を言いながらラーゼは右腕を二人にかざす。
二人はすぐさま先程の攻撃のように何かが飛んでくるかと身構えるがラーゼに何かを飛ばすという考えはない。
何故なら、二人が強張ることを目的として翳したのだから。
「複雑じゃない……その代わり歪なんだけどね」
────ッ……!
二人が違和感に気づくのは遅くはなかった。寧ろ早かった。しかし、気付いた所で何かが変わる訳では無い。
────身体が動かない……!
女神と『
「種明かしなんてしないよ。種明かしをする悪役が心底嫌いだからね。そのまんま男の方は死んでくれ」
ラーゼの声と同時に太陽に被さる形で一つの影が女神と『
「
影はその両腕に突如巨大な斧を顕現させ、同時に『
「────ハルバード・インパクト!!!」
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