第30話 Overwrite
× ×
時はリューアから李仁に連絡が入った時まで遡る────
「命を貸すってどういう事だよ」
ラーゼ以外の三人も李仁の要求の意味がいまいち掴めていないのか顔には不思議そうな表情が浮かんでいた。
そんな四人に対して李仁は今回の作戦の解説を
「皆さんは、ゲームをした事ありますか?」
「ゲーム?まあ、そりゃあ誰でもあるだろ」
李仁の質問に対し、またもラーゼが返答をする。
誰しも目に見えてわかる程の訝しげな表情を向けているラーゼに対し李仁は相も変わらずに言葉を続けていく。
「じゃあ少しジャンルを限定しましょうか。皆さんはファンタジー系の作品をプレイした事がありますか?」
李仁の言葉に四人は僅かに頷きその言葉の真意を黙って待つ。
それを察したのか李仁も言葉を再び紡ぎ出す。
「あの手のゲームの特徴は死んでも生き返る点だと思うんです。何回死のうがゲームマスターがその手を止めない限り彼らが死ぬ事は無いんです。でも逆を言うと初見で死なないなんて事は無いですよね」
その返答に更にラーゼは顔に不快感を露わにして言葉を出す。
「おいおい、その言い草だと僕達が死ぬみたいに聞こえ────」
「えぇ、死ぬと思います」
ラーゼの嫌味を込めた質問を最後まで聞くこともなく李仁はすぐさま答えを投げた。
ラーゼは言葉を遮られたことに関して眉を
それを聞いていた他の三人うちの一人、
「まるで俺達を信用していないみたいにも聞こえますよ……これから戦うっていうのに……」
「和馬の言う通りだ。今の言葉はお前の信用に疑念を抱かざる負えないぞ」
和馬に続いてスナイパーライフルを
しかし尚も李仁は冷静に、そして淡々と言葉を返していく。
「人が死なない戦いなんて無いんですよ」
「どの時代にも必ず戦いには死者が付き物ですから。けど今回僕が狙うのは誰も死なないゲームです」
そこまで言った後に狼の見ためをした一際異彩を放っているフリークが李仁の考えを汲み取ったのか獣人の細長い口元を歪ませて言葉を繋いだ。
「ゲームマスターさえいれば死なねえ。確かにな!」
フリークの言葉に李仁は少し笑いながら再び言葉を紡ぎ出す。
「えぇ、僕からしたら『死なせない』ですけどね。いやでもそれも違いますね」
李仁はわざとらしく少し間を開けてようやく今回の作戦の肝となる部分を話した。
「残機を無限に増やしましょう。それなら誰も死にません」
フリークはその言葉を聞き笑っているがラーゼは相変わらず不快な顔をしたまま質問をする。
「どうやってやるんだよ……そんな事神でも何でも無いただの人間の君ができるわけ?」
「ええ、やりますよ。十分あればシステム全てを上書きしてあなた方の残機を増やせます。もちろん相手のステータスを低下させたりなどもね」
「十分で出来るんですか!?凄い!」
李仁の言葉に和馬は目を輝かせて反応する。
他の三人も突拍子も無い言葉に最初は困惑こそしていたが今の話を聞いて少しは納得しているようだった。
ラーゼは結局不快な顔を隠す事は無かったが最後に一言だけ呟いて話を終わらせた。
「もしその作戦が上手くいかずに死んだら────後世まで呪うからな」
「善処します」
そして作業を開始して六分後────
リューアから李仁に対して唐突なメッセージが送られてきた。
そのメッセージを見て李仁はすぐさま転生者四人に連絡を繋ぐ。
「どうやら、敵が動き出したみたいです。少しイレギュラーですが戦闘隊形を作ってください」
「作戦までは後何分だマスター」
戦闘慣れしているのかフリークは冷静に持ち場に移動しながらシステムの上書きが完了するまでの時間を問いただす。
「後三分。三分で必ず終わらせます」
「了解だ!任せとけ」
「全員、上書きが終わるまで必ず生き残ってください」
× ×
そして現在────
「俺は心臓を撃ち抜いた筈なんだけどな」
『
「心臓付近で球が止まっていますね。彼の身体の皮膚が異常に硬いんでしょう。次から狙うならヘッドショットですね」
「随分暗殺者泣かせな野郎だな」
『
「まあ、地面に落ちてからが本番なんだけどね」
フィールド地上にて────
「背中から血は出ているが生きてんな。しくじったなラックの野郎!」
「でも心臓めがけて球は飛んでましたよね?どういう事でしょう」
「考えても無駄だよあの手の敵は。ていうか鉛玉モロに食らって痛みで意識が飛んでないのもおかしいし。深く考えたら負け」
フリーク、和馬、ラーゼの三人は地上に自由落下を続ける『
「じゃあ、フリークさん!ラーゼさん!行きましょうか!」
「君が仕切るのかよ……」
× ×
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