第24話 邂逅
「ちゃんと女神ちゃんの所に飛ばされたかな?」
タチの悪い神は奇妙なステップを刻みながら実に楽しそうに『
「女神ちゃん今の彼を見て変な気を起こさなければ良いけど……」
そんな楽しげな顔に誰が見ても気がかりな事があるのだなと思う程にわかりやすい
「まあ!それはそれで面白いから良いかな!もうこの際どう転んでも楽しければ良いよ!」
実に投げやりな言葉を呟きながらタチの悪い神は二人の元へ向かう。
歯車が狂い始める────
× ×
「……え?」
女神の前に突如として『
あまりに唐突な出来事に女神はキョトンとした顔を露わにしている。
『
それ故に女神の頭の中は混沌を極めていた。
────どうして急に?
────しかも、何故かもの凄く傷ついてる?
飛ばされた『
そんな光景に女神の頭の中にある一つの考えが過ぎる。
────今なら、彼を殺せる……?
女神の混沌とした思考の中に紛れ込む歪な考え。
その歪な考えは突如として思考の表面側に顔を出し女神の脳の大半を支配し始める。
明らかに動く事すら叶わない程に傷付いた身体。苦しみを体現している顔の筋肉。微かに感じ取れる程にまで低下した魔力。
全てが女神の頭の中に「今なら彼の息の根を止められる」という思考を植え込む。
しかし────女神の腕は自然と彼の傷口に手を伸ばし、治癒魔術を施していた。
「何故だ……?」
『
この女神は自分に命を握られている。それ故に抵抗できない今のタイミングで殺してしまえばいいだろうという考えが『
「だって……まだ何も
女神の殺そうと言う思考の中に微かに自信を脅した不気味な男が浮かんだのだった。
彼の言う意味深な言葉とその前の『
それらのピースが女神の殺すという行動を抑制したのだ。
────あぁ、何で私はこんな事してるんだ!
治療行為を施しながらも女神は自問自答をする。
ここで『
それでも女神には『
彼の正体を知り、その心を操っているものが本当にいるとするならば────
────彼はただの被害者じゃ無いですか…!
女神は命に関わる面倒事に本当の意味で足を入れてしまった事を悔やみつつも治療行為をやめることは無かった。
「私は納得したいんです!貴方が何者なのか!私を脅したあの人は何者なのか!この後何が起こるのか!私はそれらを知って納得して、その上で決断をしたいんです!」
女神の言葉に『
「だから、まだ貴方を殺す訳には行かないんですよ!」
それを言い切ると女神の顔はどこか引き締まったような顔付きになり、決心を決めたようにも思える目付きになった。
『
「貴様を脅した奴とは何だ……?」
────しまった……!
女神は会話の勢いで彼の裏を知っている男の事を遠回しに『
「ええと……」
もし言ってしまえば女神は彼に首を狩られる側になるだろう。彼は他の神に言えば……と言っていたが彼の正体を『
しかし女神は目の前の傷だらけの男の正体を探ろうと決めたのだ。
彼女は決心を更に強固なものへと変化させる。
────抗わないと何も変わらない……
目の前の『
歪に動き続ける歯車の中で小さくも確かに動く為に────
この時、小さな歯車が本格的に動き始めた。
「貴方の正体を知っている風の男です!貴方が第二の世界に行った瞬間に私に接触を測ってきたんです!」
「俺の正体……?」
『
「貴方は自分が何者なのかわからないんですか……?」
女神の質問に『
「俺が何者かだと……?」
「そうです!貴方はどこから来た誰なのか!親は!友人は!その魔力の源は!故郷は!答えられないんですか!?」
女神の怒涛の質問に『
────俺は誰なのだ……?
────俺は『
────違う、俺には名前が……
────故郷?親族?違う、俺にはそんなもの……
『
記憶に酷い
────俺は……
────俺は……!
────俺は……?
────俺は、誰なんだ?
「はい、そこまで」
『
その声の主の方を見るとそこには見覚えの無いはずが、
「その声……」
部屋に響いた声と手を叩く音には女神も覚えがあった。
確かに自身の命を脅した人物。
先程『
その男は女神に若干不快な目線を浮かべながらも口元には笑顔を作り『
「随分酷い傷だね。でも時間がないからそんなみみっちい回復魔術が時間足りないよ?すぐにあの弓兵が追ってくる」
まるで先程の戦いを見ていたかのように振る舞う男に『
そんな『
「まあそんな強張らないでよ。僕は君と戦うつもりなんてさらさらないからさ。今ここで戦うべきは……わかってるよね?」
『
「君は、わかってるんだよね?」
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