【猫の手本舗の猫村さん】

KAC20229 お題「猫の手を借りた結果」


ある魔法の言葉を呟いたら

貴方の悩みを解決します!

猫の手本舗の社長、猫村さんが

大活躍!

48回目のプロポーズ、メインキャラクター

二人がちょろっと出てきます。


~~~~~~~~~~~~~~


皆様初めまして、「猫の手本舗」社長の猫村音子と申します。早速ではございますが、私共の会社の宣伝も兼ねて、最近の依頼事例を一つだけご紹介致します。なお、依頼者のプライバシー保護のため登場人物の名前は全て仮名となっております。


先日私が街のパトロールをしていたところ

深いため息を付きながら空を見上げて歩いている少女がいました。この少女の事を私は昔から存じ上げておりました。少女のため息の理由…それはきっと、明日で

高校生活が終わってしまうから。


私から見た彼女は、社交的で活発な性格の持ち主でクラスの中心的人物としてキラキラ輝いた学校生活を送っていた!というわけではありませんが、脇役ながらもそれなりに高校生活を楽しんでいたように思います。


そんな彼女のため息の理由。それは、高校生活の中にやり残したことがあるんです。私がなぜ知っているのか?それは、彼女に会う度に延々と愚痴を聞かされていましたからね。


ほら、また愚痴を言うつもりみたいですよ?


「あっ!たま~、聞いてくれる?明日で学校終わっちゃうのに結局私…今日も何にも伝えられなかったのよー。もう、本当…猫の手でも借りたいよーーー!!」


みなさん、聞きましたか?

ついに、ようやく、やっと、

この言葉が出ました!!

はぁ、長かった…

後は私がちゃちゃっと解決いたします!


”ひーこ様?今、猫の手を借りたいと仰いましたね?私はその言葉を待ちわびておりました。ずーーっとモヤモヤしてたんですよ、貴女の恋路が全然先に進まないことを!お任せください!やっと私の出番が来たというわけですね!あ、ちなみに私の名前は「たま」ではなく、「猫の手本舗」の社長をしております猫村音子と申しますので!!”


突然話し出した私を見て、ひーこさんは

とても驚いた様子でした。

しかしそんなことはどうでもいいのです。ポカーンとだらしなく口を開けてこちらを見ているひーこさんに、更に話を続けます。


”今、猫の手も借りたいと言いましたよね?それは魔法の言葉。やっと貴女に私の言葉が届く時がきたのです。もっと早くに言ってくれていれば、ひーこさんのパッとしない高校生活も、もっと楽しいものだったでしょうに…でも、大丈夫!私にお任せください!あれですよね?とーる君に思いを伝えたいんですよね?”


「ちょっと…たま?じゃなくて…えー、猫村さん?私混乱してて…頭の中を整理させて?えーっと、私が”猫の手も借りたい”って言ったから貴方の声が聞こえるようになって、しかも私がとーる君に思いを伝える何かしらのお手伝いをしてくれる…ということね?」


”流石、才色兼備のひーこさん!物分りがよくて助かります!ほとんどの人は猫の手を借りたいとか言っておいて私の声が聞こえた途端にぎゃっ!!っと逃げてしまわれます。受けた依頼の成功率は100%を誇っているのですが、なんせ逃げられる確率が多いもので。早速ですが、ひーこさんの名前入りの何かを私に貸して貰えますか?今から私がとーる君の所に持って行って、ポトッと落として参りますので。あ、出来れば私が運べるくらい小さめのものでお願いしますね?”


「う、うん、わかった…未だに意味はわからないけど、もうこうなったら何でもいいわ!やるしかないわよね!どうせダメでも明日で終わり!よし、このハンカチを預けるわ!猫村さん頼んだわよ!」


こうして私は、とーる君の

元へと向かいました。

そして、とーる君にハンカチを渡しに行くと

予期せぬ事が起こったのです。


『あれ?猫田さん、もう戻ってきたの?』


私は無言でハンカチを渡すと、

彼の言った言葉を考えました。

…ん?猫田さん?どこかで聞いた事…

あ!あいつだ…私共、猫の手本舗のライバル会社”キャットハンドファクトリー”の社長!

猫田雪太!

でも何故、あいつの名前がとーる君から?

私は急いでひーこさんの所へと戻りました。


すると、ひーこさんの足元にいる白い影が

何かを渡している様子が見えます。

私は近づいて聞き耳を立ててみました。


「あれ?猫村さん…じゃないわね。今日はなんでこうも色んな猫が寄ってくるのかしら?私、余程疲れているのね…。というかどうしたの?じっと見つめて私に何か用?ん?これ?これって…え??も、もしかして…」


そう、勘のいい皆様はお気づきですね。

この二人の人間は、お互い想いあっていたというのに、それを言葉で伝えることができずすれ違っていただけだったのです。きっと、とーる君も猫田に同じような依頼をしたのでしょうね。

こうして無事二人は結ばれ私と猫田は報酬の高級猫缶をたらふく頂くことができました。あ、別に高級じゃなくてもいいんですよ?

依頼者からの報酬はこれ!とは決まっておりませんので。


以上、私達の仕事内容が少しは

お分かり頂けたでしょうか?

私達は、ほんの少しのきっかけを人間達に与え、自ら歩み出すお手伝いをするだけ。喋り出した私達を見て怖がるもよし、話を聞いて頼ってみるのもよし、全てを決めるのは貴方です。


――――――――


「ん?稜さん、また変な顔して今日は何見てるの?夜ご飯の買い物行くわよ~?」


『また!変な顔は余計だから!いやね、最近巷で話題の都市伝説知ってる?その記事を読んでいたんだけど中々面白かったわ~。

はるさん!やっぱり時代は猫様ですな!

いやー、ここらに猫村さんいないかなー?』


「何訳の分からないこと言ってるの?

もう、置いていくわよ~?」


ガチャッ


「あれ?車の横に猫がいる。」


『えぇーー猫村さーーん!俺の結婚への

思いをはるさんに伝えてーーお願ーい!!』


”にゃーーー”


『やっぱりダメかーー』


私の声が届かないということは…

貴方は私がいなくても大丈夫よ?稜さん。


【完】

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2分で読める短編集 十文字心 @hirobaby

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