【ココデスノート】

【KAC20223】三回目お題「第六感」


主人公の菅原真(すがわらまこと)は

第六感を発揮し、いつも成績は上位。

しかし、その第六感には秘密があった。


~~~~~~~~~~~~~~


「天神様!!明日の数学のテストは

教科書のどの辺から出るのでしょうか?」


『おぉーこれはこれは、我が幼き頃よりの友、山田ではないか。明日の数学のテストだな?しばし待たれい…』


僕の名前は、菅原真。あだ名、天神様。

青い春を謳歌する15才の中学三年だ。

海と山、自然の風景には不釣り合いな軍艦が行き交い、和洋の新しい文化が交錯するこの街で僕は育った。

僕がこの同級生に重宝される、傍から見ると第六感とも言える能力を手に入れたのは小学生の時に起きた出来事がきっかけである。


”パカッパカッパカッ”

何処かで聞いた事のあるような、変な音に

後ろを振り向いた。

…誰もいない。再び歩き始めると、

またしても同じ音が聞こえてくる。


陽も沈みだした夕暮れに聞こえてくる謎の音に、とてつもない恐怖を感じ早く家に帰ろうと走り出す構えをしたその時…


「おい!そこのクソ、、もとい

そこの童子。立ち止まれ!」


突然、口の悪い言葉を後ろから

投げかけられ歩みを止めた。

そもそも僕に話しかけてきているのか?

しかも、童子ってなんだよ…

とにかく正体を確かめてやろうと

恐る恐る振り返った視線の先に居たもの…


それは、真っ黒な牛。


う、牛?何故こんなところに…牛?

西日を背後に受けている為、最初牛の姿しか

確認できなかったがよく見ると牛の上に人影の様なものが見受けられた。

どうやら、最初の変な音は牛の足音で口悪く話しかけてきたのは、牛に跨っている変な着物を着た人物だと結論付いた。


『う、うわぁー!夢か?これ夢だよな?

誰かーー、神様ーーー、助けて!』


今度こそ走って逃げようと牛達に

背後を向け走り出そうとした所で

またしても謎の声に呼び止められた。


「おいおい。そこのクソ小童!神を呼んでも無駄だぞ?何故なら…私が神だからな!」


動きを止め耳を傾けてみる。

神様だって?何だ、このサイコ野郎は…人の事を知りもせずに、クソだとか小童だとか言いやがって段々腹が立ってきたぞ!


『…オジサンさ~どこの世界に牛に乗って小学生を怯えさせる神様がいるんだよ?!このコスプレ変態オヤジ!!』


「なぬ?てめぇー!!もとい、生意気な小童!この菅原道真を知らぬとは…最近の若い者は全く嘆かわしい…まぁ仕方ないか。出来の悪そうなツラをしておるしな。」


初めて会ったというのに口からポンポンと出てくる自称神様の罵詈雑言に呆れ返り先程まで感じていた、恐怖はなくなっていた。


『…オジサン?それ以上僕に付き纏うならでっかい声で人を呼ぶよ?すぐに警察も来るだろうし、その恥ずかしい格好でパトカーに乗りたいの?』


「なんてクソ、、、生意気な小童だ!まぁいい、吾輩は可愛いハナのたっての願いでここへ来た。ハナとはこの牛の名前だ。」


ふぅ…落ち着け自分…

この人はきっと友達のいない寂しい人で誰かに構ってほしいんだ。”学校で知らない人とは話してはいけません”と口煩く言われるけど相手は牛に乗った人だし、危なくなったら走って逃げよう。そう心に決め少しだけ話を聞いてみることにした。


『で、その菅原のなんとかさんと、牛のハナさんがどうして僕の前に現れたんですか?』


「道真だとさっき申し立たであろう!この小童!いや、クソガキめ!」


"まぁまぁ道真様。どうかワタクシに免じて怒りをお沈めくださいませ。この見るからに頭の悪そうなクソ、、いや、童子は名を真と申します。何と、道真様と同じ菅原を名字に持つのです。この真は、幼少期に両親とワタクシ共の天満宮を訪れ、幼少期だというのにアホみたいなお願いをする訳でもなく、世界の平和を願い、災害地の復興を考えるという慈悲深く欲の無い子供でした。他の誰よりも熱心にワタクシを撫でているその姿に心打たれ、将来何かこの子の役に立ちたいと思い、ちょうど暇そうにしていた道真様をお連れした次第でございまする。"


唐突に話し始めた牛、いやハナさんは

どうやら僕の事を知っているみたいだった。


『ハナさん?ちょっと触っていい?』


ニコリと微笑み頷いたハナさんに触れた刹那全身にまるで雷にでもうたれたのかと思ってしまうくらいの衝撃が走り頭の中には何やら見覚えのある映像が映しだされる。

その映像の中にはまだ小さい僕が、この牛を一生懸命に撫でながら、何かを訴えている幼少期の自分の姿が見えた。


『もしかして…あの時の牛の銅像なの?』


嬉しそうに何度も頷いているハナさん。

その上で、サラッと暇人扱いをされて

不服そうな顔をした菅原なんとかさんが

面倒くさそうに話を続けた。


「小童よ、そういう訳じゃ。ハナに感謝するがよい。ま、ワシも暇じゃないから簡単に言うぞ?お前にこれを授ける。この帳面に書いた願い事を一日一つまで叶えてやる。ちなみにワシは勉学の神、天神と呼ばれておるからな、叶えられる願いは勉学に関することのみじゃ。それと、忘れてはならぬ大切な約束事がある。これを破ると、この帳面はたちまち消え失せ、お前は元のバカ、もとい、出来の悪いクソ、いや真に戻るぞ!その約束とは…”決して牛の肉を食べてはならぬ”ということじゃ。くれぐれも忘れるではないぞ。」


そう言い残すと、一人と一匹は跡形もなく消え、居たであろう場所には一冊のノートらしきものが残されていた。

そして、そのノートを手に入れた直後から僕は周りの人々が目を見張るスピードで学力を伸ばすこととなる。なんと便利な物を神は授けてくれたのだろうか。

しかし、一つだけ不便なことがあった。

それは”牛肉を食べてはならない”という決まりを守ること。幼い頃から当たり前のように食べていたハンバーガーに牛丼、ステーキなどを食べてはいけないという決まりは、育ち盛りの僕にとっては地獄のようなものだ。母親には、牛肉が嫌いになったという事を延々と説明し、合い挽きミンチは鶏と豚肉にしてもらい、牛丼屋さんでは豚丼を食べた。


そして時は過ぎ、迎えた高校受験前日。幼なじみの山田と僕は行きつけのハンバーガー店で最後の追い込みをしていた。


「あー、腹減って集中できねーー。とりあえずなんか食べようぜ?俺買ってくるけどお前何にする?」


『そろそろ休憩もいいね。

僕はチキンバーガーとポテトお願いー』


山田が買ってきてくれたハンバーガーを

スマホを弄りながら頬張る。


ん?なんだ、この旨味は!!

ここのハンバーガーってこんなに

美味しいものだったか?

そんな事を考えていると山田が

思いもよらない言葉を口にした。


「あ、菅原ごめん!!それ俺のだわ!ってもう食べてるじゃん!!くそー俺チキンかよー、ハンバーガーはビーフ100%じゃないと食べた気しないってのによー」


い、い、いま、なんと仰いました?

ビーフ100%?俺のハンバーガー…?

ハナさんと天神様が現れて以来ずっと、

ずっと、牛食を避けて生きてきたのに…

よりによって入試前日に…?


山田に何も言わず店を飛び出し家に帰ると

勉強机の引き出しに入れていたノートを探した。


な、ない…ノートがない!!

そんな…もうあの便利なノートが

使えないなんて…!!


その後なんとか、高校受験には成功したものの、ノート有りきで選んだ超進学校の勉強についていけず、補習だらけの悲惨な高校生活を送ることとなった。


第六感を失った僕は、勉学で成功することは出来なかったが、ノートを失うきっかけとなったあの時食べたハンバーガーの味が忘れられず、第五感をフル活用して研究しまくった結果、地元で一番と言われるほどのハンバーガーの開発に成功し富と名声を手にすることとなった。

そして今でも年に一度はハナさんに会いに行き優しく撫でてお礼を伝えることを続けている。

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