第5話 情報収集

 噂を耳にして思ったことがある。案外キャシーベイツやファントムを知ることができると。正直、こいつらを知る理由はないし、知りたいとは思わなかった。けれど今は気になる。やはり同じチームのメンバーとして、それと単に気になっただけなのかもしれない。とにかく調べてみようと思った。

 噂を聞いて回ったり、過去に事件などないか、パソコンで調べてみたりした。

 こんな一匹狼の俺が噂を聞いてくるなんて相手は驚いていたが、大体が教えてくれた。中には、チームの悪い噂を流しているから隠そうと「知らない」と嘘を吐いた奴もいた。まぁ、デマをわざわざ聞いてやる程俺は優しく無いからそんな奴はスルーした。コンピュータ室で調べてみた。調べ方がわからずイライラしていた。後ろでこそこそと話しているのが聞こえた。俺がこんな陰気臭いところで調べごとをしてるからだろう。まったく失礼な奴だ。情報収集はあまりはかどらなかった。初日だからいいとしよう。ただ、問題は俺が飽きっぽいということだ。長く、続かないかもしれない。最悪、本人から聞くとしよう。

 しっかしどう調べたものか…。

「ねぇ…。」

 小鳥が囀るかの如くコンピュータ室に小さく木霊する、可憐な声。女の声じゃない方が違和感が凄い。俺は少し遅れて睨むようにしてその声の主を見やった。やっぱり女。しかも黒い前髪がグレーの瞳を隠す少し陰気な瓶底眼鏡少女と言った方が正しいと思われる、女だ。その女は俺から一歩後ろへ下がると言った。

「その…、コンピュータ室になんの用?」

 居ちゃ悪いかよ。その言葉は喉の奥へ押しやった。睨むのをやめずに答えた。

「調べごとだよ。調べごと。」

「その……。あまり、はかどってない…みたいだね。」

 なんだ、やっぱり文句を言いに来ただけか?苛立ちは酷くなる一方。

「それがなんだよ。」

 女は何か言いたげにもじもじしていた。はっきり言ってくれなきゃわかんねぇよ。じれったいなぁ。

「何が言いたいんだよ。」

「えっと……。手伝っても…いいかな…?」


 は?


 それが伝えたかったこと?どういうことだよ。手伝いたい?調べごとをか。

「名前、なんて言うんだ。」

「私…ソフィ・アメディアン。」

 ソフィ…、誰だよ。まぁ、協力なら大歓迎だ。

「そうか。俺はダイナマイトだ。」





 ソフィは情報収集が上手だった。調べるのもキーボードを打つのも早い。何なら綺麗な字でメモを取るのも早い。どうやらコンピュータのプロ、専門らしい。助かる。多分、俺にしたように他の人の手助けもしているのだろう。

 碧いブルーライトに照らされる白く透き通る肌にある黒くて長いまつ毛に覆われる艷やかで美しいグレーの瞳。長すぎるがサラサラで柔らかな癖のある髪の毛が顔の輪郭にそってかかる。銀縁の分厚い瓶底眼鏡がずり下がっている。その姿は人形のようだった。しばらくじっと見ていたらバチッと俺とソフィのグレーの瞳が重なった。ソフィはすぐずらしたが俺に言った。

「調べないの…?」

「否?あ~うぅん、今日はもういいや。あんがと。またな、ソフィ。」

飽きていまいメモノートを持ち、席を立った。ソフィは座ったまま、「あっ…うん。」と返した。俺はそのまま教室に戻った。

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