第74話 女友達にさよならを1

 日々は、容赦なく平凡に続いていく。


 湊寿也は、どこまでいっても凡人で。

 そんな凡人が過ごす日々が特別であるはずがない。


 女友達が八人いる、というのも特に珍しいことでもないだろう。


 たまたま、その女友達八人が全員並外れた美少女で、エロい身体をしていて。

 頼めばいつでもヤらせてくれるというだけだ。


 しかも、いつでもヤらせてくれるのはたった三人だけになってしまった。


 いや、それどころか最近は――


「ん? どうかしたの、湊?」

「ああ、別に」


 おなじみのスポーツ施設、スポッティ。

 放課後に、葉月に誘われて遊びにきたのだ。


 今は軽く遊び終えて、飲食スペースで休憩中。


「ローラースケートなんて生まれて初めてだったからな。足がガクガクだよ」

「あたし、得意なんだよね。初めてのときも一度も転ばなかったし」

「どうせ俺は転びまくったよ」


 葉月は、ミニスカをヒラヒラさせながら華麗に滑っていた。

 もちろん、男どもの注目を集めてしまっていたが――


「今日はちゃんと短パンはいてたかんね。野郎ども、残念だっただろうね」


 ニヤニヤと葉月は人の悪そうな笑みを浮かべている。


「俺も、葉月のミニスカパンチラ、見たかったな」

「今さら!? や、驚くのも今さらだけどさ。マジで、もう死ぬほどあたしのパンツなんて見てるじゃん」

「まあ、そうなんだが」


「なんなら、今朝だって見てきたじゃん。何色でどんなデザインかまで、あたしより見てるくらいでしょ?」


「久しぶりに白で、前に赤いリボンがついた可愛いヤツだったなあ」

「もー、周りに誰もいないからって、はっきり言うなよ、ばーか♡」

「うおっ」


 どんっ、と葉月に肩を押されて、湊は持っていたペットボトルを落としそうになる。


「あ、危ないだろ」

「あはは、ごめん、ごめん」


 そう、湊はいつものように葉月のパンツを見ている。

 今朝も葉月が登校前に湊家に来て、玄関前で――


 スカートをめくってパンツをじっくり観賞したし、脱がしたし、そのあともう一度はかせてから脱がしたりもしている。


「でも、葉月。今朝は結局は口と胸だけ――」

「あ、次はなにやろっか? まだ、瑠伽と麦があんたの家に来るまで時間あるしね♡」


「えっ? お、おい、まだ遊ぶのか?」

「せっかく来たんだから、もっと楽しまないと。そうだ、バッティングやってみよ。あたし、実はこれやったことないんだよね」


 葉月は湊の手を掴んで、引っ張るようにして歩き出す。


「バッティングとか、男子のほうが得意じゃね? 湊のかっこいいとこ、見せてもらおっか」

「おまえ、無茶ブリするなあ……」

「そっか、ああいうのって、遠くの的に当てたら景品とかもらえるんだっけ?」

「あー、そういうのあるよな」


 湊も中学時代、バッティングセンターに行ったことくらいはある。


「野球部のヤツと行ったことあるが、あんなのまず当たらねぇぞ」

「えー、そこは『任せとけ』じゃないの?」

「だから、葉月は俺になにを期待してんだよ」


 別に湊は運動神経は鈍くはないが、飛び抜けて良いわけでもない。

 なにしろ、平凡を絵に描いたような男なのだから。


「大丈夫、今日はお金あるから。当たるまで、あたしがスポンサーになってあげよう」

「絶対、景品を普通に買ったほうが安くなると思うが」

「努力で勝ち取ることに意味があるんだよ」

「金の力も必要だけどな」


 実はハードな卓球や、葉月が好きなトランポリンよりはマシではあるが。


「いいから、やってみよ。数打ちゃ当たるって」

「まず打てるかどうかが問題だな」


 葉月のことだから、100キロくらいの球速では許してくれないだろう。

 140キロを打てとか言われたら逃げよう。

 湊はそう心に決めて、葉月と並んで歩いて行く。



「うーん、あんま可愛くないねぇ」

「言うな、穂波。俺が一番わかってんだから」


 場所は変わって、湊の自室。

 穂波麦が床にぺたりと座って、ぬいぐるみを持ち上げている。


 スポッティのバッティングセンターで本当に120キロを打ちまくって。

 なんとか的に当てて、景品をもらってきたのだ。


「この景品もなあ……」


 景品は、クマの肩に小熊が乗っかっているぬいぐるみだ。

 親子グマのコンセプトは悪くないが、当のクマが絶妙に可愛くない。


「バッセンなんて、だいたい男がやるだろうに。ぬいぐるみが景品ってどうなんだ?」

「あー……男の人が景品を取って彼女さんにプレゼントするんじゃないでしょうか。きゃっ、あんっ♡」


 湊はベッドの上で、瀬里奈の可愛い乳首をぺろぺろしている。


 スポッティで遊び終わり、自宅に帰って――

 そこにちょうどやってきた瀬里奈と穂波とも合流して。


 さっそく、瀬里奈と穂波に一回ずつヤらせてもらったあとだ。

 もちろん、二人とも制服をはだけて、おっぱいは丸見えだ。


「けど、みなっち。だいぶ頑張って取ったみたいだねぇ」

「わかってくれて嬉しいよ」

「だって、麦とるっかちゃんでまだ一回ずつじゃん。いつもなら、まず二回ずつはヤるのに♡」


 それはそのとおりだった。


「ほらほら、クマちゃん。お疲れのみなっちにちゅーだよ♡」

「わっ、おいっ」


 穂波もベッドに上がってきて、クマの口を湊の顔に押しつけてくる。

 モサモサした感触で、まったく気持ちよくない。


「次は、麦ちゃんにもちゅーね♡」

「そっちなら、いくらでも」


 湊は穂波を抱き寄せ、ちゅばちゅばと唇を重ね、舌を吸う。

 何度味わっても、女友達の唇は甘くてトロけるようだ。


「わ、私も……んっ、ちゅ♡」


 瀬里奈も顔を寄せてきたので、湊はそちらの唇も味わう。

 舌で彼女の薄い唇を舐め回し、はむはむと軽く噛むようにしてキスする。


「あーん、麦のターンだったのにぃ。るっかちゃん、乳首ぺろぺろしてもらって、気持ちよくしてもらったんだから、次は麦麦♡」

「す、すみません……あんっ♡ で、でも、湊くんが、私のおっぱい、また揉んで……んんっ♡」


 湊は穂波とキスしながら、瀬里奈のDカップおっぱいも楽しむ。


「ふぁ……もう一回、ちゅーしましょう……♡」

「麦も、もっとぉ♡」

「ああ、やっぱクマより瑠伽と麦の唇のほうが美味いな」


 湊はちゅるちゅるちゅばちゅばと、わざと大きな音を立ててキスする。


「はう……み、湊くん、そろそろ……次、いいですよ……?」

「麦もいいよ。あ、でも、葵は?」


「……葉月、なんか俺より疲れてねぇ?」

「そんなことないけどさ」


 実は、葉月もさっきから湊の部屋にいる。

 まずは瀬里奈と穂波にヤらせてもらっていたが――

 いつもなら、すぐにまざってくる葉月が、座って3ピーを眺めているだけだった。


「葉月、もしかしてどっか体調でも悪いのか? この前から、口とか胸だけが多いし」


 葉月にヤらせてもらえない数日が終わったばかりだ。

 だが、あまり気が乗らない――とのことで、一日に三回もヤらせてもらえない日が続いている。


「そういえば、葵がヤらせてるとこ、二、三日あんま見てないねぇ?」

「あの、葵さん。どこか体調がお悪いなら、お医者さんを紹介しますか? ウチのかかりつけで、優しい女のお医者さん、いますよ?」


「あー、それお願いするかも、瑠伽」


「お、おい。葉月、マジで体調悪いのか? スポッティ行ってる場合じゃなかっただろ、そりゃ」


 湊はベッドから下りて、葉月の前に座り込む。

 見たところ、顔色が悪いようにも思えないが……。


「心配させてごめん。でも、別にどこも悪くはないんだよ」

「そ、そうなのか? それじゃ、なんで……」


「うーん」


 葉月は座ったまま、ぽんと自分のお腹に手を置いた。

 いつものピンクのカーディガンを着たままで、まだ脱いでいない。


「湊、今日はさ、よく当てたよね」

「は? いや、あんだけ打ちゃそりゃ当たるんじゃないか?」


「そうなんだよね、数打てば当たるんだよね。特に、あたしが一番多いのは間違いないし。瑠伽より麦より、ずっと」

「んん? 葉月、いったいなんの話だ?」


「あっ! あ、葵さん、まさか……」

「葵、もしかして……」


 瀬里奈と穂波もベッドを下り、湊の左右に座って。

 深刻そうな顔をして、葉月の顔をまじまじと見つめている。


「湊、実は……その、来てないんだよね」

「だから、なにが?」


「つまり、その……女の子には毎月あるやつっていうか」

「…………」


 湊は葉月の言葉の意味を考え、一瞬ののちに理解して。

 頭が真っ白になってしまう。


「あはは、数を打ったら当たっちゃった……かも?」

「は、葉月……!」


 湊は、ベッドの上に置かれたままの景品を見る。

 そこには、仲の良さそうなクマの親子のぬいぐるみ。


 湊は、女友達との関係が大きく変わる――

 いや、終わるかもしれない予感を感じていた。

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