第69話 女友達との日常が帰ってくる

 夏は終わった。


 楽しい非日常は終わり、平凡な日常が戻ってきたとも言える。

 軽く涼しい夏服もしまい、少しだけ重たい長袖のブレザーに袖を通して。


 湊寿也は、どこにでもありそうな日々を今日も生きている。


「んんっ……♡ はぁ……あぁ……♡」


 甘い声を上げながら、くてっと葉月が床に座り込む。


「も、もう……いつものことだけど、いきなりがっつきすぎなんだって♡」

「悪い、悪い。ついな……」


 朝の湊家、その玄関。

 葉月は玄関を上がったところに座り込んで。

 黒いソックスをはいた足首に、ピンクのパンツが絡まるようになっている。


「朝イチで元気すぎんの♡ 玄関に入ったとたん、がばぁっ! ってどうなのよ?♡」

「いや、やっぱ俺の朝は葉月に一回ヤらせてもらうところから始まるから」

「ふふん♡」


 葉月は嬉しそうな顔をすると、立ち上がって、ちゅっとキスしてくる。


「ま、朝に毎日ヤらせてあげられるのはあたしだけだもんね」

「最近は特にそうだよな」


 苦笑しつつ、湊は一度リビングに戻って、ティッシュを取ってきた。

 葉月に渡して、後の処理をしてもらう。


「でも、玄関でヤらせてもらうの久しぶりじゃないか? 葉月は毎朝、普通にリビングまで入ってくるもんな」


 今朝はたまたま、湊がリビングから廊下に出たタイミングで、葉月が玄関から入ってきたのだ。


 葉月が「おはよっ」と手を挙げて挨拶したのと同時にGカップのおっぱいが、たゆんっ♡と揺れて。

 そんなもの見せられたら、一回ヤらせてもらいたくなるに決まってる。


 むしろ、湊は一回で我慢した自分を褒めてやりたいくらいだった。


「いやいや、あんた記憶吹っ飛んでんの? いっつも、一緒に帰ってきたときは、玄関のドア閉めたらいきなりパンツ脱がしてくるじゃん」

「うっ……」

「なんなら、昨日も玄関でパンツ脱がされたけど?」

「そ、そうだっけか」


 湊は一瞬、昨日の記憶を探り――


「待て待て、それは名誉毀損だぞ、葉月」

「めーよきそん?」


「昨日は違っただろ。玄関のドア閉めたら、葉月が抱きついてキスしながら、自分からパンツ脱いだんじゃないか」

「えっ、そ、そうだっけ? だ、だって、あのあと、あんたが玄関で二回もヤるから記憶が飛んじゃったんだよ」


「記憶飛んでるの、葉月じゃないか」

「き、記憶が飛ぶくらい激しくヤった湊も悪い! そ、そりゃすっごい気持ちよかったけど!」


 葉月は顔を真っ赤にして動揺している。

 湊にヤらせている間は大胆そのものだが、未だに終わったあとはこうして乙女のように恥じらうのだ。


「て、ていうか、いつまで玄関で話してんの。リビング行こ、リビング」

「ああ、そうだな」


 湊は葉月と一緒にリビングに入る。

 テーブルには、湊が食べ終えたばかりの朝食の皿が載ったままだ。


「パンとハムエッグかー。湊、ハムエッグつくれるようになっちゃったからなあ」

「いや、さすがにハムエッグくらいはずっと前からつくれるっつーの」


 湊は、朝食の皿をキッチンに持っていって手早く洗ってしまう。


「ふう……葉月は朝飯食ったんだよな?」

「うん、お母さんがつくってくれてるからね」


 葉月は嬉しそうに頷く。

 今、単身赴任中の葉月の母が一時的に戻っているのだ。


「瑠伽のご飯のほうが美味しいんだけどね。でも、なんだかんだでお母さんの味もいいよねっていう」

「そりゃそうだろ」


 湊には母親がいないが、全然気にしてない。

 葉月もそれを知っているので、特に気を遣わずに母親の話を聞かせてくれるのだ。


「俺も葉月の味は好きだしなあ」

「わっ、こ、こらぁっ♡」


 湊は葉月のブレザーの前、ブラウスの前をはだけて。

 ピンクのブラジャーを下にぐいっとズラす。


 ぷるるんっ♡とGカップのおっぱいが弾むようにして現われる。


「や、やぁんっ♡ もうあんま時間ないのに……んっ♡ ま、またヤりたくなるんじゃないの?」

「どっちみち、もう一回はヤるだろ?」

「ま、まあね。朝来て、二回以下ってことはないもんね……」


 実際、湊は回数重視で、朝も二回を下回ることなどない。


「あ、そっか。湊、今日は……はうっ♡ 病院の日だっけ? 放課後はデキないなら、今のうちに三回はヤっとく?」

「そういや、言ってなかったか。前回で検査終わったんだよ」

「あ、そうだったんだ。あんっ♡ もうー、そういうことは言ってよ」


 葉月がじろっと睨んでくる。


「なんで言わなかったんだっけ……? あ、そうか」

「なに?」

「病院から帰って、なんか眠かったから寝てたら……いつの間にか葉月が、俺のベッドに潜り込んでたんだよ」

「そ、そうだっけ」


 また記憶が飛んでいる葉月だった。


「それで、その日は葉月に朝までヤらせてもらってたら、すっかり言うの忘れてた。そのまんまになってたな」

「……もうー、せめて瑠伽には言ってやんなよ」

「ああ、瀬里奈には言ったぞ」

「だったら、あたしにも言え! あんっ、こらっ♡ そんな乳首美味しそうに吸っても許さないから……!」


「じゃあ、遅刻してもいいから、四回……いや、五回ヤるから許してくれるか?」

「あたしがヤらせてあげるんでしょ。午前中、丸ごとサボったら、何回ヤれる?♡」

「試してみるか」

「試させてあげちゃおっかな♡」


 ちゅっ、と葉月はキスしてきて。

 湊は葉月と激しく唇を重ね、舌を互いに絡め合う。

 熱くて柔らかい舌の感触に、湊はどうしようもなく興奮が高まってくる。


 五回で済ませる自信が、どんどん失われていく。


「んっ、んん……♡ ふぁ……でも、思ったより回復、早かったよね」

「結局、かなり浅い傷だったからなあ……」


 あの別荘で瀬里奈に――

 いや、八人に刺された傷は出血の割にたいしたことはなかった。


 念のためにということで、二ヶ月ほど通院していたが。

 実際は、一ヶ月くらいで完全回復していた。

 今はもうほとんど跡形もないくらいだ。


「まあ、何事もなく片付いてよかったよね」

「何事もなく……ではなかっただろ」

「そうだったね」


 ちゅっ、ちゅっと葉月は続けて湊にキスしてくる。


「あの展開は予想外だったな……」


 料理中にふざけていて、うっかりケガした――ということにしている。

 病院から警察に連絡が行って、湊たちも一応事情を聞かれたのだが。


 ケガの原因をあっさり信じてもらえたのはよかった。

 もちろん、料理中にふざけないようにと強くお叱りは受けたけれど。


「ケガのほうは、すぐに事故だって思われたのにね。んんっ♡ くすぐったっ♡」

「あの警察の人ら、ちょっと疑り深すぎねぇ?」


 どうやら、警察はケガのことよりも別のことが気になったらしい。


「やー、悪いけどちょっと笑っちゃった」

「あのなあ、笑い事じゃねぇよ」


「だって、“女の子八人を侍らせてるなんて、湊寿也という少年のバックに反社会的集団がいる可能性があった”って。あははははははっ!」

「シャレになってねぇよ。反社なんて一ミリも関係ねぇのに」


 警察は本当に調べたらしいが、なにも出てこなかった。

 出てくるわけもない。


 湊はヤンキーですらないし、親もごく平凡だ。

 湊家の一族郎党を調べ尽くしても、交通違反が出てくるかどうかだろう。


「まあ、それも良い夏の思い出だよ」

「別荘の9ピーの思い出だけでよかったのに……」


「あんっ、こ、今度はこっち?♡」

「ああ、パンツはちゃんと見ておかないと。ピンクもいいな」


 湊は葉月のスカートをめくり、後ろを向かせてピンクのパンツを眺める。


「んんっ♡ おっぱいの次はパンツ……湊ってば、欲望全開だよね♡」

「欲望全開にさせてくれる、最高の女友達がいるからな」

「ね、最高でしょ?♡」


 果たして、午前中だけでこの身体を手放せるのか。

 ちょっとばかり、自信はなかった。


 湊寿也の平凡な日常は、こうして女友達とともに続いている。


「まあ、最高なのはあたしだけじゃないけどね」

「それはそうだが……」


 今は葉月に楽しませてもらっているところだ。

 あまり他の女子の名前を出すのもはばかられる。


「ヤらせてもらえる女友達、三人もいるんだから――そりゃ最高だよね♡」

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