第11話 二人の女友達の唇は甘い(改)

 無事に、中間テストは終了――

 果たして、葉月の結果が無事かどうかは神のみぞ知るが、とりあえず終了した。


「はーっ……ケーキうんまい!」

「……おまえ、食い過ぎじゃね?」

「胃がはち切れちゃいそうです……」


 感動の声を上げる葉月に、湊と瀬里奈が呆れた目を向ける。

 ここは、巨大なショッピングモールの一角にある洋菓子店。

 店内ではケーキバイキングが楽しめる。


「モンブランにレアチーズケーキ、苺タルト、オペラ、ミルクレープ、それにモンブランおかわり……どんだけだよ」

「甘い物は別腹って言うじゃん」

「その別腹が異次元すぎる」


 湊はレアチーズケーキを一つだけ。

 瀬里奈のほうも、苺のショートケーキだけだ。


「だって、カラオケで歌いまくってお腹空いたし」

「ほとんど、葉月のワンマンショーだったもんな」


 中間テスト最終日の今日は、昼で学校は終わった。

 葉月グループが中心になって、クラスでの打ち上げがカラオケボックスで行われた。

 2時間の利用で、湊は半分くらいは葉月が歌っていたのではと思ったほどだ。


 ちなみに湊は一曲も歌わず、瀬里奈は歌うのが恥ずかしいのか隅っこでコソコソしていた。


「湊はともかく、瀬里奈の歌はみんな聴きたかったんじゃない?」

「私、別に歌は得意ではありませんし……人前なんて、無理です」

「中学の音楽で聴いたことあるよ、瀬里奈の歌。めっちゃ上手いからね、この子」


「あー、もしかしなくてもピアノとかも弾けるのか?」

「一応、弾けますけど……ピアノができても歌も上手とは限りませんよ」

 瀬里奈は謙遜しているが、間違いなく葉月の言うとおり上手いのだろう。

 地声が透き通った天使のような声なので、湊も一度聴いてみたい。


「つーか、カラオケでメシも食ってたよな?」

「だって、お昼だったじゃん。そりゃ食べるよ」


 カラオケボックスの軽食を、それぞれ適当に食べて、葉月もなにかつまんでいたのも、湊は目撃している。


「メシ食って3時間も経ってないのに……なんでそれで太らねぇんだよ?」

「全部、おっぱいに栄養いってるパターン?」

「やめろ、外だぞ」


 葉月がカーディガン越しに自分の胸に触れ始めたので、湊が慌ててたしなめる。

 瀬里奈も顔を真っ赤にしてしまっている。


「ごめん、ごめん。でも、ここのケーキ美味いからね」

「まあ、確かに美味い。俺、ケーキはあんま食わないし、バイキングなんて作り置きの固くて不味いケーキばっかかと思ってた」


「そうですね、私は和菓子をいただくことが多いですけど、このケーキは甘さも上品で、とても美味しいですね」

「へへっ、そうだろそうだろ。意外と知られてないんだよね、ここ。あたしら三人だけの秘密にしとこ♡」


 葉月は、とてもご機嫌だ。

 テストが終わったし、カラオケも楽しんだし、甘いケーキもたっぷり食べられて、これで機嫌がよくならないはずもない。


「そういや、俺らだけ抜け出してきてよかったのかな。クラスの連中、スポッティに移動したんだよな?」

「どうせ、湊たちはカラオケだけで抜ける気だったでしょ? それなら、あたしも一緒に決まってんじゃん」

「ま、まあ……そうなのか?」


 葉月には友人グループがいるが、そちらは放置していいのか。

 湊が葉月と二人で遊びに行くたびに、何度となく疑問に思ってきたことだった。


「けどさ、瀬里奈がクラスの打ち上げに来るなんて珍しいじゃん」

「え、ええ……私も少しはみなさんに溶け込む努力をしないとと思いまして……」


「ふーん、いいじゃん、いいじゃん。瀬里奈と遊びたいヤツら、多いしさ。今度、買い物行こっか。瀬里奈、下着も白しか持ってないでしょ?」

「い、いきなり下着を買いに行くんですか?」


「おい……俺の存在、忘れてないよな?」

「ん? 湊も一緒に来たいの? あたしはいいけど」

「買い物に連れて行けって言ってんじゃねぇよ。俺がいるのに、下着の話とかするなよって言ってんだよ」

「なにを今さら。あたしら二人のおっぱい、吸いまくっといて」

「あ、葵ちゃんっ……!」


 瀬里奈が常にない素早さで手を伸ばして、葉月の口を塞いだ。

 さっきより、瀬里奈の顔が真っ赤になっている。


「むぐぐ……ご、ごめんって。けど、買い物は行こうよ。なにも買わなくてもいいし」

「は、はい。私、あまり服持ってませんし……」


「だよね、中学ん時は何度か遊んだけど、いっつも同じような服着てたよね。ワンピースか、足で踏んづけそうなロンスカばっかだったっけ」

「パンツはあまり……スカートが多いですね。短いのは持ってませんけど」


「ミニスカはこうよ、ミニスカ。JKなんだからさ。瀬里奈、脚もすらっとしてるし、制服のスカートより短いのも似合うって」

「あ、あまり短すぎるのは……葵ちゃんみたいに脚長くないですから」


「嘘ばっか、あたしより背が低いだけでしょ。スカート丈もそうだけどさ、白とか紺が多いでしょ。もっと思い切ったピンクとか」

「えぇ……派手なのは似合いませんよ、私は顔が地味ですから」

「どこが地味やねーん! こーんな、かんわいいツラしてっ!」

「きゃっ……! ほ、ほっぺたつねらないでくださいっ!」

「…………」


 湊はまったく会話にまじれないが、二人は楽しそうだ。

 こんなとき、この友人たちは女子なのだなと思ってしまう。

 女子だからこそ、あんなことやこんなこともできたのだが。


「おっ……ちょっと電話だ」

 葉月はそう言うと席を立って、店の外へ出て行った。


「…………」「…………」

 葉月がいなくなってしまうと、いまいち会話が弾まなくなる湊と瀬里奈だった。


「そ、そういえば葉月のヤツは、試験はできたんだろうか。なんか、騒がしくて全然訊けなかったな」

「あ、あー……湊くんに教わったんですよね? それなら大丈夫じゃないですか?」


 その俺への絶大な信頼はなんだ、と湊はツッコミたかった。

 瀬里奈に比べれば、湊の成績はずっと下だ。


「ホントは瀬里奈さんも一緒に教えてくれると助かったんだけどな。でも、門限あるし、試験前に外で勉強とかできないよな」

「え?」

「え?」

 瀬里奈が、紅茶のカップを手にきょとんとしている。


「門限は守らないといけませんが、お友達と勉強会をしても怒られないと思いますが……前に、葵さんとお勉強したこともありますよ」

「……そうだったのか」


 だったら、前に葉月が「瀬里奈は勉強会に誘えない」というような話をしていたのは、なんだったのか。

 どうも、おかしな齟齬がたまに起きている。


 湊もすっかり忘れていたが、葉月が夏に声をかけてくるよりも前から湊の存在を知っていたような話もあった。


「ですけど、私はあまり人に教えられるタイプではないので……お二人で勉強して正解だったと思います」

「そ、そうか」


 瀬里奈は“仲間はずれにされた”とは思ってないらしい。

 湊は、ひとまず安心しつつ――


「ごめん、ごめん。急にいなくなんなって怒られちゃった」

「そりゃそうだろ」


 戻ってきた葉月に、湊と瀬里奈は苦笑する。

 カラオケボックスを出て、次へ向かう途中で湊たちはフェードアウトしたので、葉月の友人たちが怒るのも無理ない。

 おそらく、友人たちは葉月がそのうちまた合流してくると思って放置してたのだろう。


「さて、そんじゃ次はどうする? 晩ご飯はピザか……思い切って肉焼いちゃう?」

「こんだけケーキ食って、よく晩飯の話ができるな……」


「あ、でも……どうしよ。瀬里奈の門限を考えると早めにお店決めないとね」

「それなんですけど」

 瀬里奈が、おずおずと手を挙げる。


「今日は試験が終わったばかりですし、1時間くらいなら門限を延長してもらえます。それで……葵さんのお家で食べませんか?」

「うーん、そうか。お店入っちゃうと時間が読めなくなるもんね」

「この辺のメシ屋だと、同じ学校のヤツらとかち合いそうだしな」


 男連中だけならともかく、葉月と瀬里奈、それに湊という組み合わせでは周りから変な目を向けられそうだ。


「でもさ、瀬里奈。ウチだと、インスタントになっちゃうよ?」

「恐縮ですが……よかったら、私がおつくりします」

「「えっ」」


 湊と葉月は同時に驚いてしまう。

 二人とも片親の家庭で、料理をするつもりなど1ミリもない。

 家で手料理など長く食べていない。

 そんな二人の返事は――決まり切っていた。



「あ、あまり期待しないでくださいね。普通ですよ、普通」

 葉月家のキッチンで、瀬里奈が恥ずかしそうにしつつ働いている。

 瀬里奈は長い黒髪をポニーテールにして、制服のブレザーは脱ぎ、白いブラウスの上にピンクのエプロンという格好だ。


「すげー、あたしの家で料理してる人間がいる……」

「しかもエプロン女子高生だぞ……」


 湊と葉月は、キッチンが見えるリビングでソファに座り、感動的な光景を眺めている。


 途中で買い物してきて、瀬里奈は葉月家に着くとすぐに調理を開始した。

 湊が見る限り、瀬里奈の手際は素晴らしい。

 タタタタタッと小気味良い音をさせてネギを刻んでいる。


「つーか、本当に俺たち手伝わなくていいのか?」

「大丈夫です、任せてください」

 瀬里奈が振り向いて、にっこりと笑う。


「お二人とも、くつろいでいてください。私は作業に集中してしまうので、一人のほうがやりやすいんです」

「そ、そうか。それじゃお言葉に甘えて」


 女友達に手料理を振る舞ってもらえるとは、幸せすぎる。

 しかも、瀬里奈のような清楚な美少女に――


「くっそ、瀬里奈めー。可愛くて頭良くて、料理までできるとか……」

「悔しがることじゃねぇだろ。でも、俺らも自炊くらいできないとまずいかな」

「いいんじゃね? 今はウーバーでもなんでもあるし。そりゃ……たまに手料理は食べたくなるけど」


「だろ? 覚えるとしたら、俺のほうかな」

「なんでだよ! あたし、女子だよ!」

「俺は女子に料理を押しつけるような、古い価値観の持ち主じゃねぇぞ」

「賢そうなこと言うんじゃねー。あたしは、女子っぽく料理とかしたいんだよ!」

「その割に、練習してないだろ」

 湊も、本当に葉月に料理技術を求めようとは思わない。


「……しっかし、マジで集中してるな、瀬里奈さん」

「あいつ、思い込みが激しいっていうか、周りが見えなくなることあるんだよね」

「変わってるな……」

「変わってるから、知り合ってそんなに経ってないあんたに、おっぱい吸わせたんでしょ」


「……おまえ、それ根に持ってるんじゃねぇ?」

「なんであたしが根に持つんだよ。あたしは、ただの友達だよ?」

「……うん、友達だよな」

「…………」

 湊が頷くと、葉月は黙り込んで――ちらりと瀬里奈のほうを見た。


「友達だから。これはお願いとかじゃなくて、友達同士の挨拶みたいなもんだから」

 葉月はそう言うと、ちゅっと軽くキスしてきた。

 実は、この前の初めてのキス以来、勉強会の合間合間に、二人は何度となく唇を重ねてきている。


「バレたらマジで瀬里奈に悪い……ちゅっ、ちゅっ……」


 恥ずかしそうにしながらも、葉月はさらにキスしてくる。

 湊も隣に座っている葉月の細い腰を抱き寄せ、自分からも唇を合わせていく。


「んっ、んん……んっ、ちゅっ……♡ 湊、ダメだよ……瀬里奈が料理してくれてんのに、あたしたちこんなこと……」

「わかってるって、だからちょっとだけ……」


 ちらりとキッチンを見ると、瀬里奈は野菜をカットしているようだ。

 買い物に付き合った感じ、鍋物のようだった。

 そろそろ秋も深まりつつある今、あたたかい鍋は悪くない。


「んっ、ちゅっ……ほら、ちょっとなら……いいよ」

「じゃあ、ちょっとだけ……おっぱいいいか……?」

「うん……瀬里奈にバレないように……ね?」


 葉月は白ブラウスの前をはだけ、ピンクのブラジャーをあらわにする。

 湊はそのピンクブラを上に押し上げ――ぷるるんっと弾むようにしてFカップのおっぱいが飛び出してくる。


「も、もう……いきなり揉むなぁ……んんっ……♡」

「メシの前におっぱい揉めるとか、最高だな」


「アホみたいなこと……んんっ♡、ちょ、ちょっと強く揉みすぎじゃない、今日?」

「ああ……ずっとキスだけだったからな」


「と、友達同士なんだから……キスだけでもいいでしょ……はうんっ♡」

「ちょっと興奮しちゃってるな……葉月のおっぱい、すっげー柔らかい……」

「もうっ……早く治まってくれないと、瀬里奈にバレちゃう……」


 葉月は、意味ありげな目を向けてくる。

 今日はもっとサービスしてくれる、と言いたいらしい。


「じゃあ……基本に返って、パンツ見せてくれるか?」

「な、なんの基本よ、もう……!」


 そう言いつつも、葉月はゆっくりとスカートをめくっていく。

 ピンク色の可愛いパンツが、わずかにめくったスカートの下から覗いている。


「いけるな。こういう焦らされる感じがすげーいい」

「段々マニアックな方向に進んでない、あんた……?」


「でもなあ。『ほらパンツよ。勝手に見れば?』みたいな感じで見せられるのと、恥じらいながら見せられるのとは全然違うんだよ」

「なにを力説してんのよ……ほ、ほら、勝手に見れば?」


「おっ、同じ台詞でも葉月の口から照れながら言われるとすげーいいな」

「湊、なんでもいいんじゃないの!?」

「そりゃ、パンツ見せてもらえれば、だいたいなんでもいいな」


「ば、ばーか。も、もうこれくらいでいいでしょ。いい加減、瀬里奈にバレちゃうし……」

「も、もうちょっとだけ……パンツ見せてくれ」


「今さらだけど、どんだけあたしのパンツ好きなの……やんっ、じろじろ見すぎぃ♡」

「こんなの、目を逸らせるわけねぇだろ」

「そ、そりゃ……喜んでもらえるのは嬉しいけど……んんっ、視線がえっちすぎるよ♡」


 葉月はもう、スカートを大きくめくって、パンツが丸見えだ。

 クラス一の陽キャ美少女が、これだけ大胆にスカートの下を披露してくれる――

 友人としての特権としては、大きすぎるほどだろう。


「こ、こんなの……今日だけ、試験勉強教えてくれたから、大サービスしてるだけだからね? 毎日なんて、してあげないから……」

「わ、わかってるって」


 毎日じゃなければ、二度目三度目もあるということだろうか。

 湊は、快感とともに期待もこみ上げてくるのを感じて――


「あの、具材……全部カットできましたけど……」


「「…………っ!!」」


 突然の声に、湊と葉月はフリーズする。

 いや――こうなるに決まっていたのに、なにを二人で盛り上がっていたのか。

 エプロン姿の瀬里奈がソファのそばに立ち、顔を真っ赤にして、二人から目を背けていた。


「……えーと、瀬里奈さんもまたおっぱい見せてもらえるか?」

「湊っ、あんたなにお願いしてんの!?」

「む、胸だけでいいんですか……?」


「は? 瀬里奈さん、なにを言って……?」

 瀬里奈は耳まで真っ赤になりながら、ソファにすとんと座る。


「私も……あの、これ……葵さんと一緒に……お見せしたほうがいいですか?」

「……マジで?」


「え、ええ……む、胸も……下着も……湊くんになら見せてもいいです……」


 湊は思わず耳を疑った。

 まだ付き合いの浅い瀬里奈が、パンツを見せてくれたり胸を揉ませてくれたのは、気の迷いではないかと思っていた。


 今日も――あるいは、これからも胸とパンツなら好きなだけ……?


「お友達ですから……だ、大丈夫です」

「…………」


 自分からお願いしておいてなんだが、湊には瀬里奈の友人の定義がわからない。

 だが――断る理由もない。


「じゃあ、瀬里奈さんも……ごめん、少しでいいから見せてもらえるか?」

「は、はい……胸もお好きなだけどうぞ……」

「もー、どうなってんの……」


 瀬里奈は目を逸らしながら頷き、長いスカートをめくって清楚な白いパンツを見せてくれる。

 湊は、ごくりと唾を呑み込む。


 瀬里奈のエプロンの下、葉月には及ばなくても充分に大きな胸がそこにある。

 この胸を揉んでもいいし、パンツも好きなだけ見せてくれる。

 これほどの美少女が、友達だからと湊にそこまで許してくれるとは。


「ほら、あたしと瀬里奈、どっちのパンツでも……好きなだけ見ていいからさ♡」

「は、はい……む、胸も揉むだけならお好きに……♡」

「あ、ああ」


 茶髪の葉月と、黒髪の瀬里奈、タイプは違うが極上の美少女が並んでスカートの中身を見せつけてくれている。


 湊は必死に理性を総動員して、襲い掛かりたくなる衝動を抑えなければならなかった。

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