第4話 女友達にお願いしたい

「つっても、まあ」

 みなとは手を伸ばし、さっと葉月はづきのスカートの裾を掴む。


 中身はついさっき見たばかりだが、ドキドキしてしまう。

 男の悲しいサガというか、スパッツだとわかっていても興奮するのだ。

 ぴらり、と見慣れた制服のスカートをめくると――


「…………っ!?」


 パンツだった。

 レースの刺繍で縁取られた、白いパンツだった。

 サイドのあたりが、わずかに下の肌が透けて見えている。


 うつ伏せなので、前のほうは見えない。

 だが、小ぶりでありながらぷりんと柔らかそうな尻がなかば見えている。

 葉月の尻は真っ白でつるりとしていて、わずかに彼女が動くだけでぷるぷると尻肉が揺れているようだ。


 数ヶ月の付き合いだが、当然ながら葉月のパンツを目撃したのは初めてだ。

 葉月が言うように今時スパッツやショートパンツをはいていない女子はほとんどいない。


 学校はミニスカの女子だらけだが、パンチラを拝む機会などまずない。

 湊は、ごくりと唾を呑み込み――


「んん……」

 ころん、と葉月が寝返りを打った。


 スカートは大きくめくれたままで、今度はパンツのフロント側があらわになる。

 前面もレースの刺繍があり、ピンクの小さなリボンもついている。

 そこはわずかに盛り上がっているようで、なにか動いているようにも見える。

 真っ白な太ももも丸見えで、この友人の肌はこんなに白かったのかと、湊は今さらながら驚いてしまう。


 すべすべの白い肌、白い下着、その下に隠されているなにか――

 湊は、まっすぐ凝視したまま、そこから目が離せない。

 気がつけば、息が掛かるほどそこに顔を寄せてしまっていて――


「……あのさ、もうたっぷり見たでしょ? そろそろいい?」

「…………っ!」


 湊は、文字どおり跳び上がってベッドから離れる。

 そのベッドの上では、葉月が上半身を起こし――ジト目で湊を睨んでいた。


「わ、悪い! これは……!」

「まさか、湊に先手を打たれるとはね。あたしが、あんたのズボンをこっそり脱がしてやるつもりだったのに」


「……あ、あれ? 葉月、おまえ怒ってないのか……?」

「このツラ見て怒ってないように見えんの?」

「いえ、怒ってますよね」


 寝ている隙に、スカートをめくられ、下着を見られて怒らないわけがない。

 たとえ恋人同士でも怒られるだろう。

 ましてや、湊と葉月は恋人ではなく、友達同士――


「あんなかぶりつきで見られたら、さすがに恥ずかしいに決まってるでしょ。もうちょい、遠慮したら?」

「程度の問題なのか?」


「まあ……湊なら、パンツ見られたくらいは別に……」

「えー……」


 湊の基準では、男と女で下着の価値はまるで違う。

 女子のパンツはスパッツをはいて隠すほどのもの。


 一方で、湊たちの学校では、部活に向かう男子が女子もいる教室で堂々と着替えていたりする。

 女子たちも大半は気にしない。

 つまり、男の下着などどうでもいいものなのだ。


「それに、今日あたしにイタズラされた仕返しでしょ? ふん、寝ちゃったのは迂闊だった」

「そんなもんなのか……」


 湊が考えていたより、葉月は彼に心を許しているらしい。

 ある意味、カレシ以上に気安く思っているのかもしれない。


「つーか、おまえさっきスパッツはいてたよな?」

「あれは家で脱いできた」

「制服から着替えなかったくせに、なんでそんなもんだけ脱ぐんだよ」

「ぶっちゃけ、スパッツとか嫌いなんだよね。なんか、逆に落ち着かない」

「ああいうの、落ち着くためにはくんじゃねぇのか」


 湊の認識では、スパッツはスカートの下を見られないように、安心するためにはくものだ。


「スパッツ脱ぐだけなら一瞬だし。つーか、今までもここ来るとき、だいたいスパッツ脱いでたよ? わざわざ言わなかったけど」

「言ってたら、ただの変態じゃねぇか」


 わざわざ、「今は生パンツです」など言う必要はない。

 もしくは、誘っていると勘違いするところだった。


「まあ、二重重ねが鬱陶しいっていうならわからんでもないが……」

 ふと、湊はとんでもないことを思いついた。


 葉月とこの数ヶ月で築いてきた関係は、そう簡単には破綻しない。

 そう思えるだけの友情が、確かにある。

 それに加えて、葉月のさっきの反応――

 魔が差したとしか思えない。

 だが、湊は言わずにはいられなかった。


「なあ、葉月」

「ん?」


「頼む――パンツ見せてくれ!」


「はぁ!?」

 葉月は、ベッドの上で座り直し、慌てた様子でスカートをぐっと押さえた。


「パ、パンツ見せろって……さっきたっぷり見たんでしょうが!」

「そんなもん、見られるならいくらでも見たいに決まってるだろうが!」

「アホじゃないの!? 見てどうすんのよ!」

「女子のパンツを見たいことに理由があるとでも思ってるのか」

「なんで逆ギレされてんの、あたし」

 じろり、と葉月は湊を睨んで――


「ていうか、友達にパンツ見せろなんて言う?」

「普通の女子には言えないな。カノジョにだって言えないかも」


「……友達なら言えるってわけ?」

「遠慮しないで済むのが友達ってヤツじゃないか?」

 詭弁にもほどがある理論展開だった。


「ていうか、湊はそこまでして見たいわけ?」

「だから、見たいのに理由は――」


「本能っつーか、欲望っつーか……はぁ、ほら」

「…………っ!」


 思いのほかに、あっさりと葉月はスカートをぺろりとめくった。

 それでも、大きくめくり上げたわけではなく、ちらりと見えている程度だ。

 だが、そのちらりだけなのが逆にエロすぎる。


「おおっ……」

「こらこら、目が輝いてる! レジェンディスでチャンピオン獲ったときよりキラキラしてる!」

「そりゃあ……」


 レジェンディスでトップを獲るのは並大抵のことではない。

 だが、可愛い女子のパンツを生で見るのも、そうそうありえることではないのだ。


「つーか、めっちゃ見てる……見られてる……」

「悪い、もう少しスカート上げてくれるか?」

「しかも注文うるせーし……こ、これでいい?」


 困ったように言いつつも、葉月は素直に少しスカートを上げてくれた。

 かすかに盛り上がった股間のそこが、あらわになっている。

 白いパンツの下、その部分になにがあるのか――想像して、湊はまた唾を呑み込んでしまう。


「そ、そんなに見て嬉しいもんなの?」

「そりゃあ……」


「……ねえ、湊」

「なんだよ、今いいところなのに」

「ガン見しすぎだっつーの……そうじゃなくて、ちょっとさあ」

「だから、なんだよ?」


「ちょっと……写真、撮ってみてくんない?」

「おまえはなにを言ってるんだ」


 それでも湊は、白パンツから目を離さずにツッコミを入れる。

 写真? パンチラ写真を撮れとでも?

 さすがに意外すぎる台詞だった。


「だって……そんなエロいの、湊だけ見るなんてズルいじゃん!」

「自分のパンツだろ!?」

 女子が女子のパンツを、しかも自分のを見たいなど意外にもほどがありすぎる。


「あのさあ、湊。けっこうよく聞く話だよ。女子だって、女子のパンツ見られるチャンスがあったら見るよ?」

「そ、そうなのか?」


「階段とかで、前を歩いてるJKのスカートの中、見えそうだったら、つい覗き込んじゃうもん」

「そりゃ、葉月が変態なだけじゃねぇの?」


「いやいや、フツーの話だって。つか、まだ人のパンツ、じっくりたっぷり見ながら、なにを偉そうに」

「そ、それは……」


 ツッコミを入れながらも、実はまだ葉月のパンツを凝視している。

 同級生、クラスメイト、しかも校内でも一、二を争う美少女のパンツだ。

 これを見るチャンスを無駄にする男はいないだろう。


「あたしだって、ガチで恥ずかしいんだよ? 頑張って見せてあげてるんだから、写真くらい撮れや」

「は、はい」


 ドスを利かせた声に、思わず返事をしてしまう湊。

 渋々、葉月のパンツから目を花咲いて、スマホを手に取った。

 カメラを起動させ、葉月のそこにレンズを向ける。


「うわっ……盗撮されてるみたい」

「おまえがやれっつったんだろ。盗撮されたことあんのか?」


「あー、あるある。勝手にスマホ向けて撮ってる馬鹿、たまにいる。さすがに、スカートの中、撮られたことはねーけど」

「あったら、マジで俺に言ってくれ」

「え、その盗撮写真を手に入れたいってこと?」

「ちげーよ! いや、そうとも言うが……そんなもん、すぐに取り返さないと、下手したらネットに放流されて永遠に消えねぇぞ」

「うげ、最悪。男ってやつぁ……まあ、今まさにスカートの中、撮られてるけど」


 既に湊はスマホを向けて、葉月の白いパンツをぱしゃぱしゃと撮影中だ。

 ピンクのリボンがついた、可愛らしさと清楚さがある下着が、カメラを通すとさらにエロい。


「つーか、俺がネットに放流したらどうする気だったんだ……」

「は? 湊がそんなことするわけないじゃん」

「……しねーけどさ」


 この写真は、自分だけのものにしたい。

 他人の目に触れさせるなど、湊には考えられないことだった。


「でさ、さっき後ろからのパンツも見たけど、そっちもエロいぞ」

「マジで? んー、後ろからって、クッソ恥ずい……」


 そう言いつつも、葉月はベッドに両手両膝をついて、くいっと腰を上げるようにする。


「うわっ、めくってもいないのに、パンチラしてんぞ……スカート短すぎだよ、おまえ」

「普段はスパッツはいてんだから、いいんだよ」


 恥ずかしそうにしながらも、葉月はさらに腰を上げて、小ぶりで可愛い尻と、それを包む白いパンツを見せてくる。


 湊はスマホを掲げてギリギリ見えないところで撮ったり、ローアングルでパンモロを撮ったりと、変化をつけながら撮影する。


 葉月の尻は真っ白で、つるつるすべすべ、シミの一つもなく、美しすぎる。

 数ヶ月、友達として付き合ってきて、葉月が並外れた美少女なのはよく知っていたが、身体もこんなに最高だったとは。

 湊は、夢中になってスマホの撮影ボタンを押し続け――


「ちょ、ちょっと、湊。一人で楽しんでないで、あたしにも見せて!」

「……あ、ああ」


 夢中になり、もうスカートの中にスマホを突っ込む勢いで撮影してしまっていた。

 まさか、女友達のパンチラパンモロ、ぷりぷりの尻を撮ることになるとは。

 あまりに意外だが、エロすぎる展開に、湊は我を忘れてしまっていた。


「俺が言うのもなんだが、ホントに自分の見たいのか……?」

「いいじゃん、見せて見せて……って、うわっ!」

 葉月は、湊からスマホを受け取り、目を見開いた。


「うわわわわ……エッロ……! あたし、ガチでエロすぎっ……!」

「感動すんなよ……」


「こ、この写真……あたしのスマホにも送っていいよね」

「そりゃいいに決まってんだろ」


 むしろ俺のスマホに入れっぱなしでいいのか、と訊きたいくらいだった。

 葉月はぽちぽちと湊のスマホを操作して、大量の写真を自分のスマホに移動させている。

 当然ながら、葉月のスマホは湊家のWi-Fiに接続済みだ。


「はー……すっごいいやらしかった……あたしってこんなエロかったんだ」

「なんか、俺のほうがさすがに恥ずかしくなってきたんだが」


「あたしだって恥ずかしかったんだよ! いくら湊にでも、こんなの撮らせるの、死ぬかと思った!」

「わ、悪かった……つーか、どうしても見たいなら、女友達に撮ってもらえばよかっただろ。奈月さんとか雪野さんとか……」

「なんでその二人?」

「なんとなくだよ」


 そうは言ったが、奈月と雪野は葉月の友人の中でも特にギャルっぽい二人だ。

 可愛くてエロく、よくあることだがパパ活疑惑なんかもある。

 もっとも、湊は葉月の友人がそんな怪しい活動をしているとは思っていない。


「あー、瀬里奈なら撮りたがるかも」

「はぁ? せ、瀬里奈さん?」


 湊は、ぎょっとしてしまう。

 葉月の友人はギャルっぽい子だけでなく、優等生も数人いる。

 その中でも、瀬里奈瑠伽は黒髪ロングストレートの、いかにもな優等生。

 おまけに成績も学年トップという才媛だ。

 そんな清楚で優秀な彼女に、友人のパンツを撮りたがる趣味があるとは到底思えない。


「おっと、今の話は忘れて。つーか、こういう“遊び”も面白いなあ……」

「今のも遊びだったのか」


 こんな遊びなら、毎日でもしたいくらいだった。

 女友達を性の対象にするのは後ろめたいが、これだけ可愛い葉月に下心を持つなというのが無理な相談だ。


「でもなー、湊がこんなえっちだったなんて。エローエロー」

「小学生みたいな煽り、やめろ」

「ふっはっは」


 葉月は心からおかしそうに笑う。

 さっきまで、あれほどまでにエロいパンチラ姿を晒していたとは思えない無邪気さだ。


 湊は、ふうっと息をつく。

 今日は予想もしなかった展開になったが、楽しかったのは事実だ。

 女友達のエロい姿を見せてもらったのは後ろめたくはあるが、女友達だからこその遊び方でもあるだろう。


「……ちょっと、湊。まだエロいこと考えてない?」

「そ、そんなことは」


「あんま調子に乗らないように。あたしは、あんたのカノジョじゃないんだからね?」

「わ、わかってるって。今後とも仲良くお付き合いのほどを……」


「なんじゃ、そら。けどさー、まあ……」

 葉月は、顔を赤らめて目を逸らし――


「たまになら、こういう遊びもいいかもね」

「…………」


 どうやら、葉月のほうも本当に楽しかったらしい。

 この女友達は可愛いだけでなく変わっているが、湊が思っていた以上に普通ではないようだ。

 パンツを見せてくれたが、どこまでならお願いしてもOKなのだろう――

 湊は、そんな不埒なことを考えてしまう。

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