婚約者と花畑
前回と同じように皇太子の婚約者には、レーナが選ばれた。それを聞くなり、アンリエッタはすぐさま部屋へと戻ってしまった。ばたん! と大きな音を立てて、部屋に入ったようだ。
皇太子の前なのだから、もう少し大人しくできないのかしら? まぁきっと当分戻ってこないだろうな。アンリエッタ付きのメイドは大変そうだ。
「……では、婚約の話はこれで、よろしいですか? ルヴィウス殿下」
公爵がそう確認すると、凛と皇太子は答えた。
「はい」
すると、ルヴィウス殿下はこちらに向き直った。
「これからよろしくね、レーナ・ロゼット・アストリファス嬢」
真正面からの美少年の微笑みは、それはそれは、麗しいものだった。
その後、仲を深めようと、レーナとルヴィウスは四季折々の花が咲きほこる花畑に訪れることにした。
足を踏み入れると、春風が花の香りを運び、レーナは時戻り後、始めて落ち着くことが出来た。隣にいる婚約者、ルヴィウスは目を輝かせて、花々を水色の瞳に映す。
「とても、綺麗な場所だね」
「……お気に入りの場所ですの」
レーナの顔にも笑顔が浮かんだ。それを可愛いらしく思い、ルヴィウスは優しく笑う。
「そうやって笑っている方が良いよ、レーナ」
「ルヴィウス殿下……? 」
「突然呼んでごめん、でも敬語じゃなくていいよ。僕もレーナって呼ぶし、ルヴィって呼んで欲しい」
そういうなり、ただの子供らしく、駆け出すルヴィウス。
徐々にレーナから離れていく。
「本当に広いね! ここ! 素敵なところだ!」
レーナに聞こえるように、叫ぶように無邪気に大きな声でルヴィウスは言う。
「気に入ったー!? ルヴィー! 」
レーナも負けじと大きな声で彼に答える。
「うん! 」
満面の笑みで、ルヴィウスは頷いた。
花に囲まれ、ルヴィウスの笑顔に触れ、きっと上手くいく、そんな確信に近いものをレーナは感じた。
きっとここから始まる。私と殿下の信頼が。
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