第3話 副業スタート!しかし、まったく稼げない・・・・

銀行で40万円を振り込んで、証拠の写真を講師に送りました。


「これで後には引けないな」


そう思いながら家に帰宅しました。


家に帰ってからさっそくAmazonに登録をしてみました。


登録作業は意外に難しくて戸惑いました。


なんでも聞いていいと講師に言われていたので尋ねてみたところ


「それは自分が登録していたときと違うからわからない」


とだけ言われました。


なんだかんだで、登録作業には数日かかりました。


次は商品を仕入れてみようと思ったのですが、会場でやった方法で探してもなかなかみつかりません。


そのことについて講師に相談をしてみると、「最初は自分から送信している商品リストを参考に仕入れてほしい」と言われました。


高額塾の特典として、講師がリサーチして見つけた商品をメールで流すというものがありました。


しかし、それでもなかなか仕入れることができませんでした。


メールの配信時間もまばらで仕事中でもスマートフォンを気にするようになり、落ち着かない日々でした。


スマートフォンはカバンにしまっていたのですが、仕事に全然集中できていません。


よく考えればすぐに分かることなのですが、誰かが稼げるといって公にしたものはみんなが狙ってしまいます。


なので、結果的には競争となってしまうのです。


ここの場合は、グループ内のメールだったので、余計に競争が激しいものでした。


運よく手に入れることができたとしても


「なぜその商品を仕入れたのか」


「どのくらいの価格で売ることを想定していたのか」


「赤字になった場合のラインはいくらなのか」


などといったことをまったく意識していなかったので、自分の成長につながることはありませんでした。


それでも仕入れられたときは嬉しかったのです。


しかし、なんだか講師の掌で踊らされているような感じがして気持ちが悪かったです。


新しいこと始めたことで、私の毎日は忙しくなりました。


会社での仕事中は講師からのメールを気にして、帰宅後はパソコンでリサーチをして、仕入れられたものを郵便で受け取って、検品をして商品登録して納品をするという日々が続きました。


そうやって作業を続けて得られた最初の1ヶ月の利益は5,000円でした。


正直言ってかなり絶望しましたが


「まだ1ヶ月目。最初からうまくいくことはない」


と気持ちを切り替えました。


しかし、2ヶ月目の利益も12,000円程度でした。


毎日毎日必死にやっていました。


リサーチをしなかった日はありませんでした。


週末をつぶして商品登録から納品まで取り組んでいました。


趣味の読書の時間、交友関係、睡眠時間のすべてを犠牲にしていました。


ここまでやってもダメなのかと思い、途方に暮れました。


3ヶ月目も同じような結果でした。


利益が出る兆しも見えずにいました。


塾の期間も今月で終了。

このあたりが潮時かなと思っていたときです。


講師から


「塾の期間を延長しませんか?今申し込んでもらえると1年で300,000円です」


というメールがきました。


300,000円、最初に支払った金額と合わせると700,000円です。


とても悩みました。


悩んで悩みぬいて、最終的には申し込みをしてしまいました。


「ここで諦めてしまったら無駄になってしまう。利益は出ているのだからまだ可能性はある」


そんな思いからでした。


今振り返ると、職場以外にも自分の居場所が欲しかったのかなと思います。


職場ではいつも上司から叱責を受けていて辛い毎日でした。


叱責よりも嫌味が多かったです。


私は字が上手くないのですが、そのことをよくいじられており、


手紙の宛名書きの仕事を振られるときには「君の芸術的な字を書いてほしい」などと言われたこともありました。


上司が自分よりも偉い人と話すときには


「こいつは何もわかっていないダメなやつなんですよ」


という風に言われていました。


こうやって字にしてみると大した内容ではないのですが、当時の自分を思い出すとやはり辛かったなと思い出します。


どこかに逃げ出したい。逃げ出したいけど、仕事がなくなる。


そんな思いから、藁にも縋る思いで転売を続けていたのだと思います。


「転売を頑張れば今を変えられるかもしれない」


その思いだけが自分を支えてくれていました。


転売を諦めてしまえば、職場での辛い日々に甘んじるしかありません。


そうなることが嫌だったのです。


だから、300,000円という高額な金額でも最終的には申し込んでしまったのだと思います。


あのときの自分を責める気にはなれません。


お金を失うよりも未来の選択肢を失うほうが怖かったのです。


今の自分でもあの頃の自分に合った解決策を提示することはできません。


なので、申し込むしかなかったといえばそうなのですが、やるせない思いが今でも心の片隅に残っています。

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