第14話登れ剣山

高松駅から剣山へ向かう事にした石木いしきと五人の中学生と美佳みか蘭子らんこ

移動手段は車しかないということで、レンタカーを二台借りて向かうことになった。

運転するのは石木と美佳で、石木の車に安室あむろ武藤むとう西堂さいどう、美佳の車に金山かねやま島取しまとり・蘭子が乗り込んでいる。

「剣山ってどんなとこなんだ?」

石木が助手席に座っている安室に質問した。

「剣山は日本百名山に名を連ねていて、標高は1995mあり西日本では二番目に高い山なんだ。」

「でも山登りするんでしょ?なんか疲れそうだな・・・。」

武藤が小さい声で言った。

「大丈夫だ、剣山には初心者でも登れるコースがある。なんなら観光用のフォークリフトがあるから、それで山頂を目指してもいい。」

「やっぱり僕はみんなと一緒に行きたいな、だから山登りを頑張るよ」

「そうか、がんばれよ武藤」

安室は優しく言った。

『やっぱり安室くんは頼りになるな、俺にもこんな感じの先輩がいたら良かったのに。』

石木は運転しながら心の中で呟いた。











剣山に到着した石木と五人の中学生と美佳と蘭子。

それぞれ頂上を目指すのだが、石木・安室・島取・武藤・西堂の三人は初心者コースを歩きながら目指し、美佳・蘭子・金山はフォークリフトで山頂を目指すことになったのだ。

「私たちは楽ちんで絶景を眺めるルートで行くから」

「そうそう、のんびりと行きたいよね~」

「だから私たちは、本気で観光客になってきます!!」

こうして三人はフォークリフト乗り場へ向かった、車の中で武藤が言っていたことを見習えよと石木は思った。

こうして石木と四人の中学生は山頂を目指して歩き出した。

「よいしょ、よいしょ・・・」

石木は長年の運動不足が身に現れてきている、五分登っただけで息が上がってきた。

「石木さん、大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫・・・。」

「とりあえず、大剣神社まで行ってそこで休憩しよう。」

安室の言う事に従い、石木はコースを登り続けることにした。

そして歩き続けてから四十分後に大剣神社に到着した。

「ここが大剣神社か・・・。」

「天地一切の悪縁を断ち切って、現世最高の良縁を結ぶと言われているんだ。そして見どころは、裏手にある御塔石だ」

安室はそう言うと神社の裏手に向かった、石木がその後を追うとそこには巨大で綺麗な雰囲気の岩があった。

「これが御投石か・・・、本当にでかいなあ。」

安室は御投石を撮影している、石木は御投石の壮大な存在感に見とれていた。

「さて、みんなのところに戻ろう。」

安室は三人のところへ向かった、石木はその後に続いた。

三人と合流した石木と安室は、十分休憩した後再び歩き出した。

「ここから山頂って後どれくらいかかるんだ?」

「さあね、でも歩きながら眺める景色は最高だ。」

「確かに絶景だね、こんな景色は初めてだ。」

「これは山頂に到着するのが楽しみだな、そうと決まったら先を急ぐぞ!!」

こうして石木と四人の中学生は、山頂を目指して走りだした。











剣山の山頂に到着した、石木と四人の中学生たち。

だが美佳と蘭子と金山は、すでに山頂に到着していた。

「あら、遅かったじゃない」

「当たり前だろ、俺たちは歩いてきたんだからな。」

「あー、フォークリフトからの景色は綺麗だったなあ。山の風も心地よかったしね。」

「うん、本当にいい景色を見たんだからね」

三人は得意げに言った、景色のことで張り合ってもしょうがないだろと石木は思った。

「やっと山頂に到着した・・・、本当に疲れた。」

「俺も・・・、もうここから動けないよ。」

西堂と島取は地面に座り込んだ。

「うわあ・・・、綺麗な景色だなあ。」

武藤は景色に見とれている、やはり武藤は心が純粋なのだ。

「ふう・・・、やっぱり頂上に着くと達成感があるよな・・・。景色もそうだけど、自信が得られるという意味でもいいよな。」

石木は剣山の景色を眺めながら言った。

「ねえねえ、写真とらない?」

そう言って美佳は自分のスマホをカメラモードにした。

「いいね、早く撮影しようよ。」

「ほら、あんたも早く来て!まずはあんたと五人で撮影するからね。」

「わかった、じゃあ俺はこの辺かな・・・。」

「あ、石木さんは真ん中の方がいいですよ」

「え?武藤、それでいいのか?」

「うん、なんかそっちの方が修学旅行の写真っぽいもん。」

「確かにそうだな。引率の先生みたいで」

島取が笑いながら言った。

そして石木と五人の中学生は、山頂の景色を背景に写真撮影を始めた。










それから剣山を下山して車に乗って、とある道の駅で休んでいた時のこと。

トイレから出た石木は、どこかに電話している美佳を見つけた。

美佳は石木の存在に気がつくと、慌てて通話を切った。

「美佳、どこに電話してたんだ?」

「お母さんに決まってるじゃない、現状報告よ。」

そう言うと美佳は車に戻っていった。

「石木さん、これは怪しいですね。」

安室が石木に言った。

「え!?どこが怪しいんだい、安室君?」

「そもそもうちの援助でここに来れたんですから、あいつらから何か取り引きを持ちかけられた可能性があります。それとあのこそこそとした態度は、両親との電話にしては不自然です。」

「考えすぎじゃないか?」

「そうだといいんですが・・・。」

安室は美佳の背中をただ見つめていた。


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