第13話香川から徳島へ、盛り上がる旅行

金比羅山からビジネスホテルへ移動した石木大地いしきだいちと五人の中学生は、そこで一泊した後、ホテルをチェックアウトしてJR高松駅へと向かった。

高松駅から徳島駅へは、電車で二時間四十六分かかった。

徳島駅に着くと、改札口の向こうで村瀬むらせ蘭子らんこ美佳みかが待っていた。

「あ、蘭子と美佳じゃないか」

「このーーっ、バカチン!!」

出会って早々、美佳は大地を殴った。

「痛いなあ・・・。」

石木は小さく呟いた。

「あんたねえ!!会社をクビになったんなら、連絡入れなさいよ!!それなのに急に音信不通になって、急にお土産送ってきて、もう混乱させないでよ!!」

美佳は一気にまくし立てると、スマホで母親に連絡した。

「もしもし、母さん。今、大地に会ってきたところ。うんうん、今代わるね」

そう言って美佳は大地にスマホを渡した。

『だーいーちーーーーっ!!あんたは何をしてたんだーーーーーーっ!!』

沢江さわえの怒声が至近距離で大地の耳に響き渡った。

「ごめん、母さん・・・。急に旅行に出かけて悪かった」

『もう、急だったからこっちはパニックよ。でも、お土産は嬉しかったわ。ありがとね。』

沢江は先程の怒鳴り声の後に、優しい声になった。

「うん、本当にごめんな・・・。」

『それで、一週間の間蘭子と美佳が一緒について行くことになったから、よろしくね』

「うん、じゃあね」

大地はスマホを切ると美佳にスマホを返した。

「お前たちも、旅行へ行きたくなったのか?」

「まあね、このご時世になんだとは思うけど・・・、私だって見たこと無いものを見たい時があるのよ。ネット上の映像とは違う、直で現地に出かけて見てみたいの。それで村瀬さんにお願いして、修学旅行へ同行してもらえるようにしてもらったのよ。」

美佳は蘭子の方を見た、蘭子は五人の中学生と楽しそうに会話をしていた。

「ねえねえ、自分達だけの修学旅行って楽しい?」

「はい、とても楽しいです」

安室が得意げに頷いた、後の四人も同様に頷いた。

「そうか、修学旅行って楽しいけど学校の主導でしている旅行だから、行きたいところも限られるしちょっと物足りないのよね。」

美佳は当時のことを思い出している表情をした。

「そういえば美佳さんは、修学旅行でどこに行った?」

「そうね・・・、小六の頃に奈良と京都へ行って、中学三年に東京に行って、高校二年の頃に兵庫と広島へ行ったくらいかな。」

「へえ、凄いですね。」

「そういえば、君たちは修学旅行はどうなの?このご時世だから、中止になっている所が多いってニュースで聞いたけど」

「僕の学校ではネットの映像で行き先の映像を見て、学校に寝泊まりするものでした。」

「何それ?旅行とは言えないじゃん!!」

「そうでしょ?だからこの五人で修学旅行をしようと思いついたんです。」

「凄い行動力ね・・・。」

美佳は中学生とは思えない行動力に脱帽した。

そして石木と五人の中学生と蘭子と美佳は徳島観光へと向かうのだった。










観光へ向かう八人を見とどけた村瀬は、安室茂樹あむろしげきのところへ電話をかけた。

「茂樹様、石木の姉妹二人が合流しました。」

「そうか、それであの二人にはちゃんと言っただろうな?」

「はい、あの五人から通帳を盗めということですね。ちゃんと説明いたしました。」

「そうか、それならいい。もう修学旅行は終わってもらわないと、色々困ることになるからな。」

「はい、おっしゃる通りです。」

村瀬は通話を切った、彼の心には命令に従う心と旅行を中断させるほんの少しの罪悪感でいっぱいだった。

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