第12話香川はうどんだけではない。

神戸港からフェリーで一時間半、石木いしきと五人の中学生は香川県に到着した。

高松港から、まずは栗林公園へ向かった。

栗林公園は桜や梅などの花の名所が点在し、三大名園にも劣らないと言われている。

特に有名なスポットは、紫雲山を背景にした広大な回遊式日本庭園で、日本的な南庭と明治洋風の北庭に分かれている。

6つの池と13の築山があり、四方正面の茶室掬月亭や南湖にかかる橋からの眺めは絶景だ。

今、石木と五人の中学生は掬月停にいる。

「何だか穏やかな風景だね。」

石木が言った。

「何だか中世にタイムスリップしたみたいだ、庭と南湖が趣きを感じさせる。」

安室あむろは歴史的風景の余韻にハマっている。

石木と五人の中学生が風景を見ていると、お茶と御菓子が一人ずつに渡された。

「お!ラッキー!!」

島取しまとりが寝ころびながら御菓子を一口で食べた。

「ちょっと島取、行儀が悪いわよ。せっかくの空気が台無しじゃないよ。」

金山かねやまが言った。

「香川にこんなところがあったとは驚いたなあ・・・。」

お茶と御菓子を堪能した石木と五人の中学生は、掬月停を出て園内を散策した。

五月のこの時期、ツツジやフジの花が園内で鮮やかに咲いていた。

鯉が泳ぐ南湖の橋の上を歩いていると、金山が言った。

「ねえ、お土産買おうよ。」

「あ、そうだね。何を買おうかな?」

「讃岐うどんは外せないね。」

「オリーブオイルも買って行こう。」

「ご当地のお菓子もあるよ。」

五人の中学生は、お土産の話題で盛り上がっている。

「全く、こんなにいい景色が目の前にあるのに・・・。花より団子とはこのことだな。」

そして石木は南湖の高貴な風景をスマホで撮影すると、それを美佳のスマホに写真を送った。

そして石木と五人の中学生は、お土産売り場で何を買うか迷っていた。









それから石木と五人の中学生は、とあるビジネスホテルにチェクインして宿泊することにした。

そしてビジネスホテルから一番近いうどん屋に行こうとした時、村瀬むらせと再会した。

「旅行は楽しんでいるか?」

「何しに来たんだ・・・?」

安室は村瀬を睨んでいる。

「そんな顔は止してくだされ、今回は石木様に重要な話があって参りました。」

「俺に・・・?」

首を傾げる石木に、村瀬は説明した。

「実は二日前、あなたの家族にアポイントを取ってこの一件を教えました。そうしたら、家族全員が「大地に会いたい!!」とそれは凄い剣幕で言ってきたのです。そこで次の行き先を教えていただけないでしょうか?」

「石木さんの両親が来るのか・・・、まあいいよ。迷惑かけるのも悪いし」

安室が言った、村瀬は「あなた様の言えたセリフじゃないでしょ!?」と内心思った。

「だったら徳島だと伝えてくれ。」

「本当に徳島ですか?」

「そうだ、俺たちは四国を巡って旅を続ける予定だ。な、石木さん?」

「そうだよ、だから香川だと伝えてくれ。」

「かしこまりました、それで待ち合わせの場所は?」

「JR徳島駅でどうだ?」

「承知しました、それではそのようにお伝えします。」

立ち去ろうとする村瀬を石木は呼び止めた。

「あの、俺の一家はどんな様子でしたか?」

「・・・勝手にいなくなったあなたに、とてもご立腹でした。」

石木は冷や汗が流れたのを感じた。







ビジネスホテルをチェックアウトした石木と五人の中学生は、金刀比羅宮ことひらぐうへと向かった。

金刀比羅宮は金毘羅大権現を祀り、海上交通の守り神としての信仰されている。

古くからさぬきのこんぴらさんとして親しまれている海の神様、参道の石段は本宮まで785段、奥社まで1368段もある。

由緒正しい御社や御宮が点在し、宝物館や書院には一線級クラスの美術品や文化財が陳列している。

参道両脇にも、金丸座や高灯籠などの見所があるのだ。

「うわあ・・・凄い階段・・・。」

参道の入り口に立っている石木と五人の中学生は、上を見上げてあぜんとしている。

「よし、まずは本宮を目指そう。」

いしきと五人の中学生は、石段を登り始めた。

上っても続く石段、石木と五人の中学生は最初はやる気に満ちていたが、徐々に疲れが見え始めた。

「ハアハア、本宮まで後何段・・・?」

「そんなの数えたこと無いからわからないよ・・・。」

「これはキツイな・・・、体に堪えるぜ」

石木は運動が得意だが、仕事に追われる日々で体の鈍りを感じていた。

途中で飲み物を買って一休み、うどん屋さんでうどんをすすりながら休みをとり、登り続けてついに本宮にきた。

「ハァ、ハァ・・・、遂に到着した!!」

石木と五人の中学生は、汗を流しながら本宮をみた。

本宮の神聖な雰囲気を見ていると、体に力が注ぎ込まれている感じがして、石段を上った疲れが吹っ飛んだ。




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