第11話家族捜索会議・新たな船出
三日前、ホテルナガシマへ
「お帰り、ご苦労だったわね。」
「ええ・・・。もう、お兄ちゃんはどこまで行くというのよ。」
美佳は不満をこぼしながら家の中へ上がった。
「お母さん、お兄ちゃんは今、和歌山にいるみたい。」
蘭子はラインでのやりとりを
「和歌山ですって!!あのバカ、そんなに遠くまで行って、金は大丈夫なのかねえ・・・。」
沢江は心配が膨れ上がり、大地のスマホに電話をかけたが、大地は電話に出ない。
「もう!!無視しないでよ!!」
沢江はイライラのあまり受話器を叩きつけた、美佳と蘭子はビクッと身を震わせた。
その翌日、石木家に宅配便が届いた。
差出人は石木大地、和歌山から配送されている。
宅配便を受け取ったのは石木大地の父・
「大地が和歌山にいるのか!?」
宅配便を見た立平の一言だった。
それを聞いた沢江は、立平に詳しい事情を説明した。
「大地の奴、出かけるなら一言連絡すればいいのに・・・。」
立平も大地のことが心配のようだ。
立平はダンボールをリビングに置いて、開封した。
「あれ?そのダンボール、お兄ちゃんから?」
「ああ、そうだ。」
ダンボールの中からは、和歌山名物釜揚げしらすに、和歌山らーめん、かけろうという洋菓子、そして湯浅醬油が出てきた。
「また食べ物ばっかだよ・・・。」
「いいじゃないか、メジャーなものばかりで美味そうだ。」
「それよりも、今後のことについて話し合いましょう。美佳、蘭子を呼んできなさい。」
「蘭子なら、友達と遊びにいったよ。」
沢江は小さく舌打ちすると、立平と美佳をリビングに座らせた。
「お父さんには言っていなかったけど、昨日美佳と蘭子がホテルナガシマに行って、大地を連れて帰ろうとしたんだけど、もうすでにチェックアウトしていたわ。」
「あいつ、長嶋にも行っていたのか・・・。」
「そう、それであたしも大地を捕まえに行きたいんだけど、協力してくれるかしら?」
立平は腕を組みながら考え込んだ。
「会社をクビになったことも一人旅に行くことも伝えなかった大地はいけないが、大地が旅を続けているとなると追跡が大変だな・・・。」
「確かに和歌山からもっと遠くに行っているかも・・・。」
すると美佳のスマホが鳴った、美佳がスマホを起動させると大地から写真が送られてきた。
その写真には大地と五人の中学生が、通天閣を背景に記念撮影したものだ。
「これって、通天閣よね。」
「今度は大阪!!もう、あの子ったら!!」
「楽しそうだな、大地。」
「感心するとこじゃないわよ!!」
美佳は写真に写る五人の中学生を見つめていた。
「どうしたんだ、美佳?」
「この中学生たち・・・。」
「それがどうした?」
「ホテルナガシマのフロントの人に大地のこと訊いたんだけど、チェクインする時に一緒だったって言っていたわ。」
「どういうことだ?」
沢江と立平は声をそろえて言うと、腕を組んで考え込んだ。
そして今現在、神戸港にいる石木と五人の中学生は、神戸から香川へ向かおうとしていた。
午後一時三十分に神戸港発のフェリーに乗って、三時間後に香川に到着する。
「香川といえばうどんだよな。」
「そうそう、本場の讃岐うどんを食べたいな。」
「フェリーに乗るのって初めてだな・・・。」
「何だかワクワクするね。」
「まさに、冒険って感じだよな。」
五人の中学生と同じように、石木もフェリーに乗るのは初めてだ。
「しかし船に乗ることになるとは思わなかったな、でもこれからどうなるのか、自然とワクワクする・・・。」
石木は動き出したフェリーが出す波を見ながら、旅への高揚感に浸かっていた。
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