第10話文化の港町

神戸に到着した石木いしきと五人の中学生は、メリケンパークに来ていた。

「なんか開放的だね。」

「ああ、海風が気持ちいいな。」

「ねえ、神戸ポートタワーに登ろうよ。」

「いいね、行こう!」

いしきと五人の中学生は、神戸ポートタワーの最上階へと向かった。

神戸ポートタワーは真っ赤な色が輝く神戸港のシンボル。

展望室からは神戸港と市街地、六甲山の大パノラマが望めるタワーだ。

エレベーターで最上階へ上がり、展望室からの景色を楽しんだ。

「うわあ!!絶景だな。」

「展望台から海を眺めるの初めて、鳥になった気分ね。」

「いやあ、一生に一度のものを見た気分だよ。」

石木と五人の中学生は、それから神戸ポートタワーの最上階から眺める景色を楽しんだ。

神戸ポートタワーの次は、神戸海洋博物館こうべかいようはくぶつかんへと向かった。

神戸海洋博物館は船の仕組みやクルーズ船の魅力が、航海計器などの実物やジオラマ模型や映像グラフィックなどでわかりやすく展示されている。

その隣にはカワサキワールドがある。

カワサキワールドは川崎重工業かわさきじゅうこうぎょうの企業博物館で、0系新幹線や歴代のバイクの展示の他、乗り物に触れたり運転で来たりと、乗り物好きのためのアミューズメントパークなのだ。

「面白かったね、神戸海洋博物館。」

「ああ、船のことがよくわかったよ。」

「でも俺はカワサキワールドかな、0系新幹線のあのフォルムは本当にかっこよかったよ。」

西堂さいどう君、舐めまわすように見ていたからな・・・。」

西堂は0系新幹線の展示が見れて、とても満足げだ。

それから石木と五人の中学生は、メリケンパークで買い物を楽しんだ。

石木が五人の中学生と一旦離れてお土産を選んでいると、一人の女子高生に声をかけられた。

「あんたが、石木大地いしきだいちさん?」

「ああ、そうだけど・・・?」

その女子高生は警戒の目つきで石木を見つめている。

「私の従妹がお世話になっているようね、迷惑かけてないかしら?」

「あの、どちら様ですか?」

「ああ、ごめんなさい。私は金山恵美理かねやまえみり金山希子かねやまきこの従姉よ。」

「従姉さんでしたか、どうしてここに?」

「あたし元々この辺に住んでいるの、それで東京の方から『希子が神戸に向かっているから、様子を見に来てくれない?』ってお願いされたの。それでここに来たということよ。」

「なるほど、じゃあ希子さんに会わせてあげる。」

「助かるわ、じゃあ案内してもらおう。」

石木はお土産の会計を済ませると、恵美理と一緒に希子の所へと向かった。

石木は恵美理に旅行での希子のことを教えた。

「なんかあの子、突然修学旅行なんて始めて本当に驚いたわ。そりゃ今のご時世がつまらないのはわかるけど、もし万が一のことがあったらどうすんのよって。だけど元気そうで本当に良かったわ。」

そして石木と恵美理は、五人の中学生のところにきた。

「遅いよ、石木さ・・・、エミ姉さん!!」

金山は恵美理を見て腰を抜かした。

「な、なんでエミ姉さんが・・・?」

「あんたの様子を見に来たのよ、突然修学旅行でいなくなって・・・、叔父さんと叔母さんがとても心配していたわ。」

「・・・私、まだ帰らないから。行けるとこまで行くつもり。」

金山は恵美理を見つめながら言った。

「あんたならそう言うだろうと思ったわ、旅行を続けること叔父さんと叔母さんは私から言っておくわ。」

「ありがとう、エミ姉さん。」

「でもね、向こうはかなり怒っているわよ。何にも言わずに出ていって、学校もピアノもサボっているから。」

「でも私の毎日はいつもそれよ、ピアノも専属講師をつけて徹底的にやらせるから。もう指が疲れてしょうがないわ。」

金山は不満をこぼす口調で言った。

「まあ旅行はキリのいい所で切り上げたほうがいいわ、お金の問題もあるしね。」

それを聞いた石木は、ふと自分の通帳の残高が気になってしまった。

「それじゃあ私はここで失礼するわ、楽しい旅行を続けてね。」

そう言い残して、恵美理は去っていった。

「まさかエミ姉さんが来るなんて思わなかったわ。」

「おそらく俺の親父が俺たちの位置情報を流しているだろう、親父はああみえて顔が広いから。」

「抜け目ないな・・・。」

石木は茂樹のしたたかさに呆然とした。

そんなことがありつつも、石木と五人の中学生は神戸観光を楽しんだ。








石木と金山たちと別れた恵美理は、茂樹に電話を入れた。

「茂樹さん、この度はありがとうございます。従妹がご迷惑をおかけしました。」

「気にすることはない、あいつらの旅行はいずれ終わる。それまでは私が陰ながら監視しよう。」

「でも中学生で東京から神戸まで来るなんて大したものよ、もしかしたら四国へ行くつもりかもしれない。」

「そうだろうな・・・、両親によろしく言ってくれ。」

「では失礼します。」

恵美理は電話を切ると、真っ直ぐ帰宅した。

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