第8話旅人の意志

大阪にいる石木と五人の中学生、しかし彼らの前には三人の男が五人の中学生を東京に連れて帰るために、立ちはだかった。

「さあ、東京に帰るのです。」

「やだ、俺たちは修学旅行を続けるんだ!」

「何を言っているのですか、世間が今コロナで多くの人が遠出を控えているというのに、こんなくだらない旅行をしていい訳がないじゃないですか。」

男の一人が冷静に言った。

「でもみんながそうだからって、俺たちもダメってことはないだろ!?」

島取が三人に向かって吠えた。

「お前達は子どもだ、やっていいことと悪いことがあることを忘れてないか?」

「ちょっと待ってください!!」

ここで黙っていた石木が話に割り込んできた。

「あ、お前は名古屋の時の・・・。」

「そうだ、お前達は安室の親の下っ端だな。」

「・・・俺たちのこと、知っているようだな。だったら邪魔しないでくれ。」

「いや、それはできない。俺は五人と一緒に旅を続けるんだ。」

石木は大声ではっきりと言った、しかし石木自身も何故言ったのかはわからない。

「おい、お前ふざけているのか?」

「ふざけてない、俺は五人と一緒に旅がしたいんだ。確かに子のご時世、俺たちがしていることは、許されないことかもしれない。だがな、コロナだろうがなんだろうが、人が楽しんでいることを邪魔していいはずないだろ!!」

「石木さん・・・。」

五人の中学生は、石木の訴えに心を打たれた。

「部外者が何をふざけている、俺たちは子どもを親元に連れて帰りにきただけだ。」

「ふん、お前達を使わなければ息子を迎えられないというのか?本当に心配しているのなら、ここへ来るべきだろ!!」

「そうじゃない、茂樹様は仕事が忙しいのだ。だから迎えに来たくても、来られない。」

「仕事漬けか・・・、わからなくもないがずっとそのままだったから、息子が寂しくなって、友達と一緒にこんな遠出を始めたんだろ?しかも今はコロナのせいで、世の中の娯楽が制限されている。それでもこの五人は、楽しく生きようと旅を始めた。それじゃあ聞くが、今はコロナだから野球もサッカーも自粛したほうがいいと言えるのか?」

「それは、この話とは関係ないだろ!?」

「ある。お前らがコロナだから旅行をするなと言うなら、お前らがコロナだからスポーツや公営ギャンブルをするなと言っているのと同じだ。」

ここまで言われると、三人は言葉に詰まってしまった。

『おい、村瀬。』

突然、村瀬むらせの無線から声がした。

「はい、茂樹様。今、総司様たちを見つけました。」

「わかっている、私は総司たちと同行している男と話がしたい。」

「え・・・?」

茂樹の言葉に、村瀬と石木はきょとんとした。

「どうした、言う通りにしないか。」

「わかりました。」

村瀬は不服そうな表情で、無線を石木に渡した。

『私は安室茂樹、貴様の名は?』

「俺は石木大地だ。」

『なぜ、総司たちをそこまで庇う?』

「俺はつい最近、会社をクビになった。そして一人旅を始めるつもりだったが、この五人と出会った。この五人は俺よりも金持ちだが、誰かが用意したプランではなく、自分達の心に従って旅をしている。中学生ながらできることに俺は感動した。俺はこの旅を続けて、五人と一緒に人として大きく成長したい。だからこのまま、終わる時が来るまで続けさせてほしい。」

『・・・わかった、ただしお前らがどこにいるかはわかっている。お前が少しでも総司たちから目を離したり、総司たちにもしもの事態があったら、お前を徹底的に責める。旅を続けたければ、このペナルティを受けろ。』

「わかった、俺が監督不行き届きをしたら好きに料理するがいい。」

『やるんだな、では続けるがいい。村瀬に変わってくれ。』

石木は村瀬に無線を渡した、そして村瀬と少し話をした茂樹は通話を切った。

「茂樹様の心を打たせるとは大したものだ、このまま旅を続けるがいい。」

そして村瀬たち三人は立ち去っていった、五人の中学生は感動の涙を流しながら石木に飛びついた。







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