第7話大阪は最高や
大阪に着いた
道頓堀は大阪を代表する繁華街、芝居小屋や飲食店が多いところだ。
「テレビでしか見たことないけど、広いなあ・・・。」
「あっ、グリコの看板だ。」
「なんかいい匂いがあちこちに漂っているよ・・・。」
「さすが食い倒れの大阪だね、早いけど食事にするか。」
時間は十一時、コロナ禍の影響で観光客は少ないがお店の賑わいは凄い。
石木と五人の中学生は、お好み焼き屋に入った。
「いらっしゃいませ、ご来店ありがとな~。」
気さくな店員に案内され、席に座った。
「へえ~、鉄板のある店って本当にあるんだ。」
「あれ?西堂君、こういう店初めて?」
「うん、元々親が外食しない派の人だから俺も自然と外食しなくなった。だいぶ前に焼き肉の店に行ったことあるけど、あそこは網焼きだったんだ。」
「そうだったんだ、じゃあ注文しよう。」
石木と五人の中学生は、人数分の豚玉のお好み焼きを注文した。
空いていたこともあり、お好み焼きの具はすぐに届いた。
「これをよく混ぜて・・・、鉄板の上に流す。」
石木の手順をマネして、五人の中学生はお好み焼きの生地を鉄板に流した。
「ジュ―ッって音がする。」
「ああ、早く食べたいなあ・・・。」
「駄目だ、それにお好み焼き屋で食べる時はここが肝心だから。」
石木はしばらくすると生地の上に豚肉を乗せて、二つのへらを生地の下に滑り込ませた。
ここからが正念場だ、少しでも気が緩むと形が崩れてしまう。
以前、三河のお好み焼き屋に家族で行って、自分でひっくり返そうとしたが形が崩れてしまい、妹二人に「下手くそ」と笑われたことがある。
石木は勢いよく二つのへらを持ち上げた、動いた生地はひっくり返りながら宙を舞い、鉄板に着地した。
やはり形は崩れたが、あの時よりは崩れていない。
「ふぅ・・・、まあまあだな。」
石木にならって五人の中学生も生地をひっくり返した。
ほとんどが形を崩してしまうなか、安室だけが器用にお好み焼きを返した。
「すごっ、俺より上手いじゃないか・・・。」
「いいな~、安室君のお好み焼きと取り換えっこしたい~。」
「駄目だ、自分の分があるじゃないか。」
数分ほどで、お好み焼きが完全に焼きあがった。ソース、かつお節・青のりをかけて、美味しく食べる。
「うまっ、このお好み焼き。」
「形は悪いけど、自分で焼いたからとても美味しいわ。」
「うん、こういう料理もいいな。」
「いやあ、なんか新鮮だな。」
「うん。外出しなかったぶん、久しぶり感があっていいね。」
五人の中学生の中学生は、満足げにお好み焼きを食べ進めていった。
お好み焼きを堪能した石木と五人の中学生は、
大阪松竹座は1923年に
ミラノのスカラ座をモデルとしており、正面のアーチ型の窓が印象的だ。
「レトロでいいね、こういう映画館はほとんどなくなってしまったからね。」
「確かに、今じゃ大型ショッピングモールかデパートの中に併設されているのがあるからな。」
「ここで何を見るの?」
「曾根崎心中をやっているから、見に行こう。」
石木と五人の中学生は、チケットを購入して席についた。
「ねえ、私歌舞伎見るの初めてなんだけど、楽しめるかな?」
金山が心配そうに石木に言った。
「あまりそういうことを気にしないほうがいいよ、人間誰でも無知から始まるから、自分で見て感じることが一番大切だよ。」
石木の言葉に金山は頷いた。
そして演目が始まった。
物語は進んでいき、クライマックスへと突入する。
曽根崎の露天神の森の中で互いを連理の松の木に縛り付けた徳兵衛とお初、しかし徳兵衛はお初を殺すことをためらい、震えてしまう。しかしお初に「はやく、はやく」と励まされ、徳兵衛はお初を殺して自分も命を絶つ・・・。
その場面を見て、金山は泣き出した。
演目が終わり大阪松竹座を出た後も、金山は涙をこぼし続けた。
「金山、大丈夫か?」
「ぐすっ・・・、死んじゃった、二人とも・・・。愛し合って、あの世へ行くなんて、なんて感動的なの・・。今まで「心中なんてアホらしい」と思っていたけど、曾根崎心中には心を打たれたわ。」
「そんなに感動したのか?俺なんて途中で寝てしまったぜ。」
島取が言うと、石木と五人の中学生の前に三人の男が現れた。
「あ、お前らは!!」
「くっ、勘づかれたか・・・。」
その三人は、安室たちを連れて帰りに来た茂樹の部下たちだった。
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