第6話和歌山から大阪へ  動き出した追跡者

和歌山の次は大阪へ行くことにした石木いしきと五人の中学生は、和歌山市内線のJR和歌山駅で電車に乗り、和歌山駅についた。

大阪へ行くにはここで阪和線に乗り換える必要がある。

「大阪といえば何?」

金山かねやまがみんなに質問した。

「たこ焼き!」

「お好み焼き!」

「通天閣!」

答えを聞いた金山はため息をついた。

「わかってないわね、ユニバーサルスタジオジャパンよ。」

「ああ、確かに有名だね。」

「でもさ、長嶋スパーランドといいアドベンチャーワールドといい、テーマパークは飽きてきたなあ・・・。」

今度は武藤むとうがため息をついた。

「だったら、食い倒れツアーしない?とにかく美味いものを食べるんだよ。」

島取が提案した。

「なにそれ、ただの食べ歩きじゃない。」

他のみんなが言い合っている間、西堂さいどうだけはカメラを持って別のホームに停車した電車を撮影している。

「なあ、彼はいつもああなのか?」

石木は気になって安室あむろに質問した。

「そうだ、今回の修学旅行についていったのも、全国の列車を撮影するためなんだ。」

そして電車が到着したので、石木と五人の中学生は乗り込んでいった。











時は数時間前、名古屋駅で中学生たちを捕えようとした二人、中尾なかお村瀬むらせは奈良駅にいた。

「本当にここに来るんですか?」

「ああ、歴史好きな坊ちゃんならここに来るはずだ。」

中尾と村瀬は安室茂樹あむろしげきの命令で奈良にいる。

五日前、安室総司あむろそうじが突然「修学旅行に行ってくる」と書置きを残して、いなくなってしまった。

しかも安室は同じクラスの同級生四人も巻き込んで、新型コロナウイルスに敏感な世間を無視して本格的に旅行に行ってしまった。

茂樹は学校にも行かず勝手にいなくなった総司に怒り、部下たちに命じて捜索させている。

「しかし、坊ちゃんも思いっきったことをしましたね。」

「いや、あれはただの世間知らずだ。みんなコロナウイルスに感染しないように、楽しい旅行やイベントを我慢しているというのに、気ままなものだ・・・。」

中尾が吐き捨てるように言った。

「そうですよね、もしマスコミにでも知られたら、安室家にとって大きな恥になりますからね。」

「そのためにも、坊ちゃんには帰ってきてもらう。」

「本当にここに来ますかね?」

「どうなるかはわからない、ただどこにいるかは解る。」

実は静岡で茂樹の部下が、安室のスーツケースにGPSを取り付けていたのだ。

そして中尾の無線に連絡が入る。

「中尾だ、・・・そうか、すぐに向かう。」

「中尾さん、坊ちゃんの居場所が・・・!!」

「大阪だ、すぐに向かうぞ。」

中尾と村瀬は走り出した。




時は二日前、ホテルナガシマ。

石木を追いかけている美佳みか蘭子らんこは、高速道路で三河から長嶋へと到着した。

ホテルナガシマのロビーに入り、フロントの人に質問する。

「すみません、ここに石木大地いしきだいちは宿泊していますか?」

美佳の剣幕にフロントの人は驚いた。

「ええ!?あなたたちは・・・?」

「私たちは石木大地の妹です、兄を追いかけてきました。」

「ちょっと待ってて。」

フロントの人は名簿を調べると、美佳と蘭子に言った。

「すみません、もうチェックアウトしています。」

「そうですか・・・、それでどんな様子でしたか?」

「様子というか変わっているところといえば、五人の中学生と一緒にチェックインしたわ。」

「五人の中学生と?」

美佳と蘭子は訳が解らず、首を傾げた。

美佳と蘭子はフロントの人にお礼を言うと、美佳のスマホで沢江に連絡した。

「お母さん。今、ホテルナガシマにいる。」

「それで、バカ息子は見つかった?」

「遅かったみたい・・・、もう出ていったわ。」

「そう・・・。じゃあ、一旦戻って来なさい。」

「そうするわ。」

美佳が通話を切るのと同時に、石木からラインが来た。

美佳と蘭子が凝視すると、和歌山にいるという連絡があった。







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