第5話和歌山城とアドベンチャーワールド

和歌山に到着した石木いしきと五人の中学生は、バスで和歌山城へと向かい、和歌山城を観光していた。

「この城は1585年に豊臣秀吉とよとみひでよしが弟の秀長ひでながに築城させたもので、築城を担当したのが藤堂高虎とうどうたかとらなんだ。」

「そうなんだ、詳しいね。」

安室あむろ君は勉強ができるけど、特に得意なのが社会なんだ。だから歴史などは、とにかく掘り下げて調べるんだ。」

金山かねやまは石木に耳打ちした。

「確か天守閣に登れるんだよね?」

「ああ、登ってみよう。」

石木と五人の中学生は、和歌山城の天守閣へと向かった。

到着し景色を眺めた、和歌山市を一望できる素晴らしい景色だ。

「いい眺めだなあ・・・。」

「城の最上階へ上がるなんて、滅多にできないからな。」

石木はしばらく景色を眺めていた。

そして降りようとした時、安室の姿が無いことに気がついた。

「あれ、安室君は?」

「ああ、岡口門にいるって僕に言って、そこに向かったよ。」

武藤が言った。

和歌山城の西の丸には、岡口門おかぐちもんという国の重要文化財に指定された門があり、この他にも見逃せないスポットが多い。

岡口門に向かうと、安室が岡口門をずっと眺めていた。

「安室君、急にいなくなってビックリしたよ。」

「ああ、ごめんね。俺、文化財とかは見逃せないんだ。」

安室はカバンからデジタルカメラを取り出すと、岡口門を撮影した。

「これでいい、さあ行こう。」

安室は岡口門をくぐって突き進んでいった、石木と武藤達はその後を追っていった。









和歌山城から出た石木と五人の中学生は、そこから近いカプセルホテルに宿泊した。

「カプセルホテルって本当にあったんだ・・・。」

金山はカプセルホテルを利用するのは初めてのようだ。

「俺は数年前に初めて泊った、それにしても本当に落ち着くよな。」

「それ解るよ、狭いけど自分だけの空間って自然と落ち着くよね。」

「ドラえもんが押し入れで暮らすのと同じ理由か・・・。」

「ねえ、それより明日はアドベンチャーワールドへ行くんだよね?あたし、パンダ見るの凄く楽しみ!」

金山はウキウキした気分だ。

「パンダなんて上野動物園にもいるだろ。そんなにワクワクするとは、思えないけど?」

「わかってないわね、アドベンチャーワールドには上野動物園に負けないくらいパンダが有名なの。話題になったシャンシャンは上野動物園だけど、アドベンチャーワールドはそれに負けないほど可愛いパンダが多いんだから。」

「もしかして、金山ってパンダが好きなの?」

「そうじゃないけど、私は有名なものには目が無いの。いわゆるミーハーって人よ。」

石木はそれで納得して頷いた。

「そういえば、長嶋スパーランドのお土産なんだけど、石木さんは誰に送ったの?」

「おふくろと妹二人かな、今頃届いたお土産見てビックリしているぞ。」

「そういえば、修学旅行のこと石木さんは家族に報告した?」

石木はあっと気づいた、それどころか解雇されたことも知らない。

流石に隠し続けるのもまずいので、スマホのラインに知らせを書き込んで、妹の美佳みかのスマホに送った。







カプセルホテルを出た石木と五人の中学生は、バスに乗ってアドベンチャーワールドへ向かった。

到着すると五人の中学生は、喜んで入り口へと向かった。

「やっぱり子どもなんだなあ・・・。」

石木は盛り上がる五人の中学生を見てクスッと笑った。

アドベンチャーワールドで、真っ先に見たのはやはりパンダだった。

「桜浜」・「桃浜」・「彩浜」の三頭が住んでいて、その姿は愛くるしかった。

また動物たちとのライブが有名で、人と動物の連携が生み出すパフォーマンスに石木と五人の中学生は、感銘を受けた。

「イルカショー、凄かったね。」

「僕は馬のショーが良かったなあ・・・。」

「そういえばサファリワールドもあるんだよね?私、行ってみたい!!」

「いいね、そうしよう!!」

石木と五人の中学生は、「ケニア号」に乗り込んでサファリワールドをゆっくりと回った。

その後はアミメキリンの赤ちゃんを見たり、カピバラウォーキングを見たりと、動物と触れ合う充実した体験をすることができた。

「そういえばこういう場所ってテレビで見て、行きたいって思っても「仕事がある」とか「金がかかる」とかで避けていたなあ・・・。でもこうして実際に行けて良かった・・・。」

石木はもしこの五人の中学生と出会っていなければ、こんな豪華な旅行はできなかったとしみじみ感じた。

そう言う意味で石木は、五人の中学生に心から感謝した。

「石木さん、どうしたの?」

武藤が物思いにふけている石木に質問した。

「ああ、君たちに出会えて良かったって思っていたんだ。」

そう言うと武藤は、優しい笑顔で「ありがとう」と返した。






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