第4話長嶋から和歌山へ 追跡の始まり

ホテルナガシマをチェックアウトした石木いしきと五人の中学生は、JR関西本線の電車で桑名駅へ向かい、そこで近鉄名古屋線に乗り換え津へ向かい、そこから鶴橋駅へと向かう途中にいた。

「鶴橋についたら、JR大阪環状線に乗り換え天王寺へ向かい、そこで紀州路快速に乗り換えて和歌山に到着だ。」

島取がみんなに説明した。

「乗り換え多くて、本気マジダルいんだけど・・・。」

金山はあくびをした。

「そういえば、和歌山の有名なものって何?」

武藤が石木に質問した。

「俺に聞くか!?ええっと・・・、みかんかな?」

石木はとりあえずの答えを出した。

「石木さん、そこは観光地を答えないと。まず那智の滝でしょ、それにアドベンチャーワールド、熊野本宮大社、南紀白浜温泉。まあメジャーなのはこの四つだな。」

安室がスラスラと言った。

「凄いな、安室君・・・。」

石木は感心すると、金山はクスクス笑い出した。

「凄くないわよ、だって昨日ホテルでスマホ検索してるとこ見たんだもん。」

「な・・・、それは言わなくてもいいだろ。」

安室は恥ずかしそうに顔を紅潮させた。

「でも凄いよ、君はみんなのために動いていて。これからいいリーダーになれるよ。」

石木に褒められ、安室はまんざらでもなく照れた。

他愛ない雑談を続ける石木と五人の中学生を乗せた電車は、天王寺駅へと走って行った。










一方、それから少し経った頃の、愛知県三河にある石木の実家。

「宅配便です。」

「はーい、今行きます。美佳みか、ハンコ持ってきて。」

「えーっ、もう・・・。」

沢江さわえに指示され、ふてくされた表情で美佳がハンコを持ってきた。

沢江がハンコを押して荷物を受け取ると、送り主の表示を凝視した。

「お母さん、どうしたの?」

「これ、大地からだって。」

「お兄ちゃんから?珍しいなあ。」

中身が気になる沢江は荷物を開けた、そこには石木が長嶋スパーランドで買ったお土産があった。

「エントランス・オブ・ザ・ドリーム・・・、変わったお菓子ね・・。」

「こっちはラングドシャだ・・・、ん?ナガシマ・・・。」

「あ、白鯨のマスコットもある!?」

「てことは大地は長嶋スパーランドへ行ったということ!?」

沢江がいきなり怒りながら言った。

「今日、会社のある日でしょ?何を考えているのよ・・・。」

「もしかして出張じゃない?」

「いや、会社の柄からしてそれは無い。無断欠勤が怪しいわ。」

沢江は大地の勤める会社に電話した。

「もしもし、石木の母です。息子は今日、会社にいますか?・・・・えっ?クビになった・・・、本当なの?・・・・何ですっで!!それは大変申し訳ございません!!はい、すみませんでした。」

沢江は受話器を置くと雷のように叫んだ。

「こんのバカ息子がぁーーー!!」

「わあ!お母さん、どうしたの?」

美佳は驚いて尻もちをついた。

「大地ったら、会社の上司と殴りあって会社クビになったっていうのよ!!信じられないわ!!」

「うわあ、それは有り得ないよ・・・。」

「美佳、蘭子らんこと一緒に大地を追いかけなさい。そしてここへ連れ戻しにくるのよ。」

「えーっ、どこにいるかわかるの?」

「おそらくまだホテルナガシマにいるわ、早いうちに連れ戻さないと。」

「やれやれ・・・。」

美佳は二階に上がって蘭子に事情を説明すると、蘭子と一緒に準備を始めたのだった。

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