第3話長嶋スパーランド
長嶋スパーランドは国内最大の遊園地、アトラクションは60もあり、そのうちの12はコースター系。
絶叫マシンの聖地として全国から客が訪れる、「三重のディズニーランド」と言ってもいい人気スポットだ。
「テレビとかでしか見てないけど、広いなあ・・・。」
「石木さん、チケット買いましょうよ。」
「ああ、そうだな。」
石木の所持金は十万円、入場料五千二百円は容易に払えるが、石木は中学生たちの入場料が心配になり
「あの、君たちの分も買おうか?」
「いいよ、自分達の分は自分達の金で買うことにしてるから。」
「・・・ちなみに具体的にいくらあるの?」
「五人全員で、五百万円。」
石木は唖然とした、一人百万円持っているということだ。
「あ・・・あの、その金はどうして手に入れたの?」
「普通に親が小遣いで出してくれたよ。」
「百万も小遣いで渡すなんて・・・、相当な金持ちだぞ。」
石木は自分が中学生よりも頼りなく思えて、落ち込んだ。
「石木さん、大丈夫?」
「おい金山、金持ちアピールするな。他の人に悪いだろ。」
安室が金山に耳打ちした。
「ああ、ごめんなさい・・・。」
「いいよ、少しビックリしただけだ。」
「さあ、気を取り直して長嶋スパーランドへ行こう。」
こうして石木と五人の中学生は、長嶋スパーランドの中へと入っていった。
まず長嶋スパーランドの12のコースター全てを制覇することにした、まずは「白鯨」に挑戦する。
「石木さんはジェットコースターとかって慣れてる?」
「いや、正直に言ってこれが初めてだ。」
石木はシートベルトをしめたとたん、緊張しだした。
コースターが動き出した、リフトをじりじりと登って行く。
そして急降下は突然訪れた。
「アアアアアアーーーっ!!」
石木はそれから叫びっぱなしだった、最高速度100キロ以上のコースターは曲線を滑走し再び斜面を登る、木製の柱をくぐり抜けて360度のきりもみ回転、最後は曲線コースを限界の傾きで進み、木製の柱の間をくぐり抜け360度のコークスクリュー。
そして石木は失神した状態で生還した。
「石木さん、大丈夫?」
「・・・ああ、なんとか。」
「白鯨、面白かったね。もう衝撃がハンパじゃなかったよ。」
「回転が激しくてもうたまらなかったよ。」
「さすが絶叫マシンの宝庫、もうクラクラしてきたよ。」
島取がまんざらでもない顔で言った。
「よし、次はスチールドラゴンに乗ろう!!」
「あ・・・、ごめん。俺はもう無理・・・。」
石木は顔面蒼白で五人の中学生に言った。
「石木さん・・・、絶叫マシンはダメみたいだね。」
「じゃあ、俺たちだけで楽しむとしよう。」
「ごめんな、一緒にいれなくれ・・・。」
それから五人の中学生は絶叫マシンを楽しみ、石木はただそれを眺めるだけだった。
それから全てのコースターを制覇した五人の中学生は、石木と一緒にお昼ご飯を食べた。
「そういえば石木さん、ずっと私たちがコースターに乗っているの見てただけでしょ。退屈じゃなかった?」
「いや、初めてきた場所だから景色を見ているだけでも新鮮な気持ちだよ。」
「そうか、それは良かった。」
「ねえ、お土産買わない?」
「そうだ、みんなに贈るお土産を買わないと。」
「石木さんも、お土産買う?」
「そうだな・・・、実家の母さんに贈るとしよう。」
石木の実家は三河にあって、母と妹が二人で暮らしている。
石木と五人の中学生は、お土産をそれぞれ買って長嶋スパーランドを出た。
そして石木と五人の中学生は、ホテルナガシマで宿泊し、長嶋スパーランドで買ったお土産を配送してもらった。
お風呂に入った後、石木と五人の中学生は次の行先について話し合った。
「次はどこにする?」
「うーん、大阪もいいけど和歌山もいいな。」
「なあ、京都はどうだ?それか奈良か?」
石木が言うと、五人の中学生はシラけた顔で石木を見た。
「あれ?どうした・・・。」
「なんか普通・・・。」
「うん、ありきたりで面白くない。」
「京都と奈良なんて、小六の修学旅行で行ったからもういい。」
「そうか、じゃあ大阪かな。」
「いや、和歌山がいい。」
安室が言った。
「どうして?大阪といえばユニバーサルスタジオジャパンとか通天閣とか、観光地が多いじゃない。」
「それだよ、観光地が多い所に行くとふんで先回りしている可能性がある。」
「そうか・・・、じゃあしょうがないよね。」
金山がシュンとしつつも納得した。
「なあ、先回りしてるっていうのは、あの二人の男のことか?」
「ああ、親父が送り込んだ使用人さ。俺たちを東京に連れ戻すためのな。」
「ええ!?じゃあ俺は・・・。」
しかし旅を始めた以上、もう後戻りはできない。
石木は覚悟を決めて旅を続けることにした。
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