第19話 案2

「二番目の案の説明をします。

 ずばり義務教育の廃止です。困惑されているかと思いますが、何も学校を無くすということではありません。

 任意で入学、退学ができる上に再入学も可能。何歳からでも何歳まででもです。

 つまりイジメや健康上で通学が困難になったとしてもです。

 そして早熟な才能には十六歳から大学進学を認めることを同時にすることで教育の活性化を促します。

 もちろん性差や年齢国籍出身地による差別をなくすために、試験の際にそういった情報を記入することはしません。

 そして不合格であれば答案の正誤を個人に限り公表することによって公平を期します。

 これまで小学校入学前に知的障害の有無による選別が行われていますが、これも撤廃します。

 特別支援学級や施設は他とは隔絶させず、共通共同の空間で生活をします。

 もともとは軍人を選抜するための仕組みだったわけですから。

 例えばですね、歌が壊滅的に音痴、絵が描けない、スキップすらできないとかの人は障害とは認定されていませんよね。

 なんとなく集団生活ができて指示命令を理解行動さえできればいいという基準。個人の才能とか特質は上官からしたら理解できない管理困難な問題がある人間。

 それは先生という立場も同じで、自分らが容易に管理できる人間だけを集める、そして枠からはみ出そうな人間には校則という不合理もので縛ることでどうにかやってきた。

 当然、これからそういった無能な教育者は排除されていくでしょう。

 必要な教師は、人間の才能を早くに見つけ出して世の中に出すことができるタイプになりますね。

 育てるのは社会が担うので、教師個人が教育をする必要はありません。

 むしろ自分の評価を上げようと功を焦ってパワハラになる可能性がありますから。

 ですから教師個人にはあらゆるグローバルな経験と知識、宗教道徳歴史を学び、コミュニケーション能力が優れている人がなっていくでしょう。

 知っていましたか、最近の子供は少子化で同級生の友達が昔に比べ極端に少ないということを。

 違う学年の子らと遊ぶのが普通なんですよ。

 年長者がリーダーの役になりますが、けっして先輩後輩のような力関係はなく、

 むしろ兄弟のようなものになっています。

 ですから同じ教室で同じことを勉強しているクラスメイトの年齢や国籍が異なっても受け入れられると思います。

 むしろそれが普通の状態であれば個性を標的としたイジメもなくなるでしょうし、自分の新しい可能性に気が付くチャンスが広がるかと思います。

 自分の才能なんて自分じゃわかりませんから。

 周囲の誰かが気づいて評価したり、好きでやっていたことが何故か一番になっていたりで自覚するわけです。

 皆さんはもういい大人として何十年も生きてこられて感じていると思いますが。

 人間、子供の頃からの性格才能は変わりません。

 幼稚園の時の自分と二十代自分、今の自分どうですか、同窓会で久しぶりにある友人も同じですよね。

 大人になれば誰もが立派になれると教えられ信じてきましたが、それは大人たちの方便でしかなかったと。

 大人のほうが優れているから子供はだまって聞いていればいいという嘘が教育の本質でした。

 もちろん経験で埋もれた才能が開花したり、判断材料が多く有利ではありますが。

 幼い子供であっても優秀な人間は優秀な大人になるのですから、それを無能な大人が邪魔をすることは絶対やってはいけないのです。

 個人によって異なる生き方才能やペースを従来型にハメて生産物のような規格合格品はいらないのです。 

 むしろ不良品こそが価値あるものを生み出すのが大人の役割となるのです。

 最近の温暖化問題で子供に正義のような教育をしていますが、私にいわせると不合理なことばかりです。

 アメリカ主導で中東とのパワーバランスの材料でしかない話を、道徳的な解釈に置き換えている風潮。

 これからの子供たちには事の真実を大人の都合の押し付けではなく、自分たちがいろんな立場で考えられる人間になってもらいたいのです。

 だいたいの説明はこれで終わりですが、何か質問はありますか。

 無ければこの案は了承とさせていただきますが」


 誰も言葉を発することができなかった。


 「それでは次の案へと移ります」




 

 

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