第17話 京都
京都のホテルの一室に集まっているのは都知事をはじめとする関東一円の知事と外国軍に実行支配されている北海道、沖縄九州の知事たち総勢15名。
ただし日本国の知事という立場を実質的に失っている元知事になる。解任や辞職の手続きは保留になってはいるが。
遅れてきた青年が着席したのを待ちかねたように最初に言葉を発したのは都知事だった女性。
「みなさん集まっていただきご苦労様です。まあもっとも集合をかけたのは私ではありませんが。私もですがアメリカ軍に送り届けられてきたかと思います。
だとしても地方自治体の首長ごときをアメリカ軍が面倒をみるとは思えませんが、どなたが画策したのかお分かりになる方はいらっしゃいますか」
一番最後に部屋に入って来た青年が手を挙げた。
「みなさんがどこまで深く事情を知っているかはわかりませんが、この度の外国軍の侵攻はあらかじめ綿密な計画によって自衛隊の上層部と各国軍が示し合わせたことになります」
どよめきが上がるが、それを制して話続ける。
「見方によっては軍事クーデターのようなものですが、けっして自衛隊が中心に計画をしたわけでなく、最初にアメリカ軍から持ち込まれたものでした。
その時点で連合侵攻計画は決定しており、自衛隊は暗黙の了解といいますか受け入れる選択肢しかなかったわけですが。
この話を私が知ったのは自衛隊の北部方面とロシアの両方から同時でした。アメリカ軍と話がついている状態で知事がどうこうできませんから黙って成り行きを見ていました。
幸いといいますか、計画通りに被害は全く出ずに無血開城のような戦でした。
情報によると他も同じような状況だったといいます。
日本は国土の半分を失い、首都東京は近代的な市民生活が困難な土地となりました。現状はアメリカ軍が支配しているようです。
都知事は当然ご存じなことでしょうが。
直接に侵攻外国軍と接点がある私が中心となってこの度の会合を開くこととしました。
目的は新しい日本を私たちが中心となってまとめていくためです。
当然後ろ盾にはアメリカ合衆国がおります。
だからといって、先の大戦のようなGHQ支配とは異なります。日本国憲法はそのままですし、選挙制度も同じです。
ですが大幅に選挙区が減り実質な代議士が半減したまま秋の選挙を迎えるわけです。
政党の勢力も変わることでしょう。与党野党をゼロからつくることになります。
その絶好のチャンスを逃す手はありません。
皆さんは昨年来からのコロナ政策や五輪に振り回されてきて、現政権に不満を持っている方がほとんどだと思います。とくに都知事は」
いきなり話を向けられて薄笑いを浮かべる面々。
都知事は北海道知事の青年に目を向けながら。
「話はだいたいわかりました。でしたら実際にどういったことをするのか考えがあるということなんでしょうね。
この場で案を考えていくというのは無責任なことでしょう」
「確かにそうです。実は個人的にいろいろ案は用意してきました。合衆国ともすり合わせも済んでいる有力な内容になります。
今から資料を回しますので目を通してください」
数ページ足らずの用紙がホチキスで綴じられただけの資料が各自に配られた。
同士で話す、何度も読み返すなど多様な反応が十分ほど続いた。
頃合いも見て声をかける。
「いかがでしょうか。細かい行程は決定した項目から説明します。書いてある内容は基本的に理念になりますが、けっして概念や理想ではなく実行すべきことです。
向かう先は風通しの良い民主主義ということです。
世界中のどこの国も実現できていないことを、この特殊な国家ならばこそ可能なものばかりです。
それでは一つづつ説明していきます」
その若いリーダーはまっすぐと自信に満ちはっきりした声で話し始めた。
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